2016年7月13日 (水)

司法修習生の貸与申請状況の経年比較情報が開示されました

私が毎年、情報開示申請していた司法修習の貸与申請状況が、法曹養成制度改革連絡協議会第4回協議会資料として公開されました。
http://www.moj.go.jp/content/001198289.pdf

引き移すと

      採用修習生数 申請者数  申請率
新第65期 2,001人    1,688人   84.36%
第66期   2,035人    1,645人   80.84%
第67期   1,972人    1,449人   73.48%
第68期   1,762人    1,181人   67.03%
第69期   1,788人    1,205人   67.39%

私が取得したデータと若干異なるのは、この資料の対象時期がいずれも各修習期の修習開始日現在で統一されていること、採用者数に再採用者を含んでいることによるものです。傾向は変わらず、新65期から申請率は下がり続け69期でほぼ横ばいとなっています。

2016年2月19日 (金)

第69期司法修習生の貸与申請率は67・4%

最高裁より情報開示を受けました。

○ 司法修習生採用者数 1,787
○ 貸与申請者数(申請後撤回した者を除く)1,205
(申請額別)
18万円・・・・・・・・・・・・・・・ 51人
23万円・・・・・・・・・・・・・・・894人
25万5000円(扶養加算)・ 28人
25万5000円(住居加算)・207人
28万円・・・・・・・・・・・・・・・ 25人
注:平成27年11月27日現在

貸与申請率(貸与申請者数/司法修習生採用者数×100)は67.4%(小数点以下第2位四捨五入)。68期(67.1%)より0.3ポイント増です。

貸与申請者数と申請率の推移は以下の通りです。
新65期(1742人,87.1%)

66期(1654人,80.8%)

67期(1449人,73.6%)

68期(1181人,67.1%)

69期(1205,67.4%)

68期まで毎期6~7ポイント申請率が下がってきましたが、69期で下げ止まり、わずかながら増加に転じました。

それでも新65期より20ポイント近く少なく、修習生の3人に1人は貸与を申請していない(新65期は10人に1人)という状況が示すものは何でしょうか。
「裕福な家庭で全て援助してもらえるか,貯金が沢山ある人以外は,貸与金なしで修習するのは不可能」という現役修習生のツイートから考えると、経済的に困らない状況にある修習生の割合が以前に比べて増えている、という気がしてなりません。

※過去のデータの詳細はこちら
新65期 http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-41e1.html
66期 http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/h2411-f437.html
67期 http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/h2511-34a0.html
68期 http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-7e6c.html

※参考
「予備試験合格者はロー修了生に比べ司法修習の辞退率が明らかに高い傾向」(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52147295.html

2016年2月12日 (金)

2016年度の主要国立大法学部の出願状況

旧帝大と一橋大、神戸大の今年の法学部志願状況(前期)です。
元のデータは河合塾です。
http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/shutsugan/

志願者数は2016←2015←2014←2013←2012の順で表記。東大は文科一類。阪大は法学科。
赤字が昨年比減、青字が昨年比増。

      募集人員 志願者数      
東京    401  1206←1309←1226←1169←1592
一橋    155  507←549←464←518←537
北海道   140   322←246←340←267←318
東北    140   307←326←331←371←356
名古屋   105   253←238←248←281←300
大阪    145   286←264←261←335←358
京都     320   821←746←857←780←807
神戸   120   340←312←311←334←414
九州     159   338←378←293←390←400

東大、一橋以外の地方では回復したところが多いようです。
その要因としては「廃止が相次ぐ教育学部の総合科学課程志望者の受け皿となっている」という指摘があります。
「河合塾 第3回全統マーク模試にみる2016年度入試の動向」
http://www.keinet.ne.jp/dnj/16/bunseki/03/16bunseki_01.html

他に就職環境の改善、公務員人気が考えられそうです。

総じてみると、地方の主要国立大では法学部志願者の回復傾向がみられると思います。
東大と一橋は下がりましたが、この両大は出願がセンター足きり予想や前年の出願者数に左右されるので何とも言えません。ただ下げ止まり傾向が固まったとはいえないようです。

2016年2月10日 (水)

【朗報】\(^o^)/最高裁が2か月探索しても見つからなかった文書があっさり見つかる

一昨日の記事(昨日の追記あり)で提起した最高裁による情報開示の遅延の件ですが、本日、担当部署に問い合わせたところ、なんと「文書が見つかった」そうです!

本件開示請求について時系列で経緯をまとめます。
2015年
●11月27日 第69期司法修習生採用発令日(採用者数が確定)

●12月1日 私が「第69期司法修習生採用者数が分かる文書」の開示を最高裁に請求


2016年
●1月4日 最高裁が戸倉三郎事務総長名で「文書の探索及び精査に時間を要しているため」開示不開示の通知期限を1カ月延長すると私に文書通知

●1月18日 第2回法曹養成制度改革連絡協議会に「第69期司法修習生採用者数」が記載された文書が資料として提出される

●2月4日 最高裁が戸倉三郎事務総長名で「文書の探索及び精査に時間を要しているため」開示不開示の通知期限を1カ月延長すると私に再度文書通知

●2月8日 さすがに延長期間が長すぎると思い最高裁の情報公開担当部署に電話で問い合わせたところ「文書の探索及び精査中」の一点張り。「文書開示でなく情報提供で構わないので早くしてほしい」との私の要望を伝達

●2月9日 前記「第69期司法修習生採用者数」が記載された文書が文科省と法務省のホームページに公開される

●2月10日(本日) 対象文書が遅くとも1月18日時点で存在していることを私が最高裁の情報公開担当部署に電話で伝達。担当部署は「2月4日までは探索中だったが、その後、きょう(10日)までの間に文書が見つかったので、今月中に開示不開示の決定を通知する」と電話にて回答←イマココ

いやあ、私が請求した文書を探すのに2か月以上もかけてくれたのですね。請求時点で情報が既に確定的に存在し、遅くとも1月18日までには文書化され公の協議会に提出されていた文書の探索にこれほど長い期間を費やしていただけるとは。その多大な労力に敬意と感謝を表すと同時に、文書探索のあまりの無能さに同情を禁じ得ません。

いや、無能なんて言っては失礼かも。実は優れた文書探索能力をお持ちで、文書はとっくの昔に探索を終えて存在を確認していたけど、私への「嫌がらせ」のために「探索中」と偽って故意に開示を引き延ばしていただけかもしれません。でも、そうだとすると戸倉三郎事務総長名で「文書の探索」中とした私への2通の期限延長通知は内容虚偽の公文書である疑いが出てきてしまいますから、それは違うんでしょう、きっと。

それにしても、つい一昨日までは「文書を探索中」だったのに、わずか2日間でうまいぐあいにあっさり文書が確認できたのはラッキーでした。こんなこともあるんですね。もし確認できたのは私の今日の問い合わせがきっかけで、問い合わせなければいつまでも「探索中」のままだったとすれば、自分も少しは探索のお役に立てたのかな(^^)ただ、データが既に公表された以上、今さら開示されてもまったく無意味になってしまったけどね。この情報開示請求の「無意味化」が引き伸ばしの狙いだったのかなあ、なんてゲスな想像をしてしまいます。

過去3年の例に従って情報提供で済ませていれば、こんなにバタバタすることなく、1月の初めにはこの件でのすべての事務処理が穏便に終わっていたはずなのにねえ。なんで例年のやり方に従わず今回に限って情報提供による開示方法を事実上拒否したのか。そのために私も最高裁の事務方も、何倍もの余計な労力を強いられました。事務処理方法の適切な選択も、事務処理能力を計る重要な要素ですね。

2016年2月 8日 (月)

情報公開、最高裁が消極姿勢に転換/いまだ司法修習生採用者数回答せず(追記あり2/9)

以下は司法審査機関としての最高裁ではなく、司法行政機関としての最高裁の話です。

私が最高裁に毎年、情報開示を請求し、情報提供を受けていた新期の司法修習生採用者数と貸与申請者数の情報が今期はいまだに提供されていません。

過去3年(66、67、68期分)は開示請求から期限である1か月後には情報提供されていました。

ところが今期は昨年12月上旬に請求したのに対し、1か月後の先月上旬に「文書の探索及び精査に時間を要しているため」との理由で期限が延長されました。
さらに1カ月後の先日、同様の理由で再び約1か月間の期限延長の通知が最高裁から届きました。

最高裁に情報公開法は適用されませんが、最高裁が独自に情報開示規定を定めています。
http://www.courts.go.jp/about/siryo/shihougyouseibunshokaiji_youkou/index.html

この中では開示の実施方法として

 開示の申出があった司法行政文書の開示より別の司法行政文書の提示又は情報の提供をする方が開示申出人の目的に沿うと認められる場合は,これらの文書又は情報をもって開示の対象とすることができる。

という規定があります。
義務規定ではありませんが、過去はこの規定をもとに請求から1か月以内に情報提供されていました。
ところが今期は請求から2カ月経ってもさらに先延ばしの返答。

司法修習生採用者数なんて遅くとも11月下旬には確実に定まった情報が存在し、紙ペラ1枚、口頭なら5秒以内で提供できる簡単な情報です。内容的にも隠さなければならないようなものでもなんでもない。
そんなものすら先延ばしを繰り返すという、例年とは明らかに異なる対応ですから、最高裁が情報開示・提供の運用に消極的・後ろ向きな姿勢に転換したのは明らかでしょう。理由は分かりません。各種の審議会でお偉い先生方に先に示すまで一般人にはデータを公表しないということかな、とか、データを司法制度改革の検証に使われるのが嫌なのかな、などと思いましたが想像の域を出ません。

上記の情報提供制度のような積極的な公開規定は情報公開法には明文が見当たりませんし、最近では開示結果への不服を審査する第三者機関を設置するなど、情報開示に積極的な姿勢が最高裁にみられていただけに本当に残念です。

※過去に最高裁から情報提供された内容はこちら
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/h2411-f437.html
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/h2511-34a0.html
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-7e6c.html

※2/9追記
法曹養成制度改革連絡協議会 第2回(平成28年1月18日開催)の配布資料「資料1-9 司法修習生採用数・考試(二回試験)不合格者数」の中に第69期司法修習生採用者数のデータがありました。1,787人とのことです。
私が最高裁に請求した文書は「第69期司法修習生採用者数が分かる文書」です。1月18日時点で既に作成されていた当該文書は、ズバリ私が請求していた文書そのものです。なのに2月4日付で最高裁からもらった通知は「文書の探索及び精査に時間を要している」。
これって一体どういうこと????

2016年2月 5日 (金)

2016年度の主要私大法学部志願状況/早稲田は過去5年で最大の減少、中央は回復

早・慶・中央の法学部・法律学科の確定志願状況です。
※出願者数は「2016年←2015年←2014年←2013年←2012年」の順で表記。
赤字は昨年比減、青字は昨年比増

早稲田(法学部)
http://www.waseda.jp/inst/admission/syutugan_sokuhou_2016/
一般        募集350 4306←4630←4847←4967←5232
センター利用 募集100 1886←2393←2109←2248←1949

慶應(法学部法律学科)
http://www.admissions.keio.ac.jp/exam/shigansha.html
                   募集230  1999←2020←2009←2215←2308

中央(法学部法律学科)
http://www2.chuo-u.ac.jp/nyushi/nippou.html
統一(4教科) 募集20    299←243←237←256←352
統一(3教科) 募集35     874←818←820←826←969   
一般(4教科) 募集60    1066←965←1208←1536←1551
一般(3教科) 募集270  2842←2658←3006←3657←3747
センター併用  募集40   1344←1254←1468←1897←1962
※昨年の募集人員は45
センター単独(5教科) 募集90  2277←2315←2444←2932←2759
センター単独(3教科) 募集20   (今年度新設)

・早稲田の一般は昨年比324人減、7%減と過去5年で減少数、減少幅とも最大
・慶應は微減にとどまったとはいえ過去5年で初の2千人割れ。
・一方、中央はメインの一般入試を含めおおむね前年度より回復しました。法学部の都心回帰決定の影響かとも思いましたが、都心に戻るのは2022年だから新入生は4年間、多摩キャンパスです。ただ、回帰によるイメージアップ効果はあったかもしれません。
あと増加要因としては地方受験会場に「金沢」が加わったことくらいか。3大学の中で中央だけが志願者数を回復した要因は良く分かりません。

主要国立大法学部の志願状況は確定待ちですが、こちらは回復したところが多いようです。

2016年1月24日 (日)

全受験生をベースに法科大学院修了者と予備試験合格者の平成27年司法試験成績を比較してみた

前回のグラフは論文採点対象者という上中位層だけをベースにした比較で、受験生全体の傾向を見るには不向きでした。
そこで短答試験不通過者と論文最低ライン未満者を含む全受験生(平成27年は8,016人)をベースにした折れ線グラフを作り直しました。
緑色の折れ線は、全受験生のうち予備試験合格者の母数が、法科大学院修了者の実数と同じだと仮定した場合の修正値です。

Oresen

このグラフのうち論文採点対象の部分だけを抜粋して拡大したのが以下のグラフ

Zentaioresen_2


以前のグラフより緑色の線青色の線より右上方向に位置しています。

さらに成績下位から順に、「短答不通過」(短答落ち)、「論文最低ライン未満」(足きり)、「合格点未満」「順位4桁」の合格者、「順位3桁」の合格者、「順位2桁以内」の合格者の6段階に分類。各分類に属する受験生について法科大学院修了者(青色、実数)予備試験合格者(緑色、修正値)の占有率を比較しました。

ロー修了者と予備合格者のレベルが「同等」(司法試験法第5条)であれば、こういうグラフになるはず。

Kinkoupatern

しかし、実際はこうです。

Zentaisenyuritsu

成績が上がるほど、予備組の占有率が高くなっています。レベルの不均衡が顕著と言わざるを得ません。

繰り返しますが、このような比較をする趣旨は、予備試験合格者数が不当に抑制され、ロー修了者と予備合格者の学力等の同等性(司法試験法第5条)が実現されていない実態を指摘する点にあります。上位合格に特に価値を認めて推奨する趣旨ではありません。

※1 公開されたデータによると、短答を通過しながら論文足きり以外の理由で総合評価の対象にならなかった人が1人いることになります。その1人がロー組か予備組かデータからは分かりませんが、例の事件の受験生と推測され、ロー組として計算しました。
※2 比較元の表が10点刻みのため、合格順位の桁数によるきっちりとした分類はできていません。グラフでは「順位2桁以内」は1~92位、「順位3桁」は93~927位、「順位4桁」は942~1850位となっています。

2016年1月14日 (木)

平成27年も法科大学院ルートより予備試験ルートの方が司法試験に上位合格する傾向

平成27年司法試験総合点別人員調の予備試験合格者に関するデータが公表されましたので、平成26年と同様のグラフを作成しました。
今回は、法科大学院修了者のみの総合点別人員調も公表されているので、ロー修了者と予備合格者を完全に分けて比較しました。
グラフは縦軸が人数、横軸が総合点。折れ線は青色がロー修了者赤色が予備合格者緑色は予備合格者の母数がロー修了者と同数と仮定した場合の修正値です。

H27sougoutokuten_2

青色と緑色を比較すると、緑色の山の方が高得点側(右側)に寄っていますので、法科大学院ルートより予備試験ルートの方が司法試験に上位合格する傾向は変わっていないと思います。

なお、このような比較をする趣旨は、予備試験合格者数が不当に抑制され、ロー修了者と予備合格者の学力等の同等性(司法試験法第5条)が実現されていない実態を指摘する点にあります。上位合格に特に価値を認めて推奨する趣旨ではありません。

※ブログは依然、原則休止中ですが、情報開示と簡単なデータ分析は時折アップします。

2015年8月 2日 (日)

「中締め」に当たって4・法曹養成とマスコミ

 安全保障関連法案の合憲性や新国立競技場の巨額建設費問題など、政治・行政の合理性に疑義が生じた時にリベラル系のマスコミは問題に鋭く切り込みました。マスコミの重要な使命が権力のチェックであることからして当然です。

 ところが、法曹養成問題では、法曹志願者の激減、借金を背負う修習生や若手弁護士の経済的困窮といった将来の司法の基盤を揺るがしかねない深刻な問題が発生しているにもかかわらず、マスコミが法曹人口増員政策の合理性に疑念を持たないのはなぜか。

 理由はいろいろ考えられます。法科大学院が新聞広告のスポンサーになっている一面もあろうかと思います。
 しかし、私が思う最大の理由は、マスコミが司法制度改革の旗を振ってきた手前、簡単にその旗を降ろせないという体面もしくは面子の問題です。

 安保法案も新国立競技場建設もマスコミが旗を振って「推進せよ」と言ったわけではありません。だからマスコミが法案の廃案や計画の見直しを求めても過去の論調との不整合は特に生じません。
 ところが、司法制度改革でマスコミは改革を推し進める論陣を張ってきました。特に法科大学院制度と弁護士の増員は改革の柱として強く主張してきたと思います。
 それを今さら「間違っていました」と認めるのはマスコミの沽券にかかわる、という体面の取り繕いが、改革の根本的な失敗を追及できない態度をもたらしているように思います。

 このようにマスコミが振り始めた旗を降ろせない、という状況は過去にもあったように思います。

 太平洋戦争です。
 当時の新聞は戦争の早期終結に無力であったばかりか、国民の戦意高揚に一役買い、結果としてたくさんの若者を死地に送り込むことに手を貸しました。

 現在の法曹養成制度は、有為な人材が法曹を目指してくれないという点で、わが国の司法の基盤を揺るがしかねない恐れを生じさせていると思います。それでもマスコミは過去の自らの論調との整合性にこだわり続け、改革を根本的に見直そうとはしません。そればかりか、若者にそっぽを向かれて撤退が相次いだロー縮小の現状を「少数精鋭」と言い繕ったりもします。かつて大本営が「撤退」を「転進」と言い換えて国民を欺いたのと一体どこが違うのか。戦前の報道への反省が微塵も感じられません。

 私はマスコミの最大の使命は「二度と戦争を起こさせないこと」だと信じてやみません。しかし、法曹養成に関する報道をみると、将来、マスコミは戦争の抑止に何も役に立たないばかりか、むしろ煽り立てるのではないかという危惧すら芽生え、それが確信に変わりつつあります。

最後に4点にわたり長々と駄文を連ねて失礼しました。

では、いったん本ブログを閉じさせていただきます。

「中締め」に当たって3・予備試験は優秀曹の選抜試験ではない

 これまで私は司法試験や司法修習の成績において、ロー卒組より予備試験合格組の方が優位に立っていることをデータで示す作業に力を入れてきました。
 しかし、その意図は予備試験合格者がロー卒組に比べて一般的に優秀だとか質が高いとか、そういうことを言いたかったためではありません。旧司組か新司組か、予備組かロー組か、短期合格組かベテラン合格組か、難関大出身かそうではないか、社会人経験があるかないかを問わず、仕事ができる奴はできるし、できない奴はできない。そういうもんだと思っています。

 私がデータ提示で最も言いたいのは、予備試験が不当に狭き門になっている、という点です。すなわち、予備組の成績が相対的に高いということは、ロー卒者と予備合格者の学力の均衡がとれていないことを意味します。学力の均衡がとれていなければ、法科大学院に通えない人は司法試験受験資格を得るまでのハードルが特に高く設定され、受験機会の公平・平等が失われていることになります。そこで予備組の成績がロー卒組を上回っていることを示すことで予備試験合格者数の増加を訴えたかったわけです。ロー教育の質を問う意図も否定はしませんが、それが主眼ではありません。

 予備試験制度の意義は、経済的時間的地理的な事情から法科大学院に通えない人にも司法試験受験機会を与えて、司法試験の入口レベルでの公平・平等を保とうとする点にあり、それ以上の意味はないと思っています。現実には法科大学院に通えるのに予備試験を利用している人がいるかもしれませんが、所得によって受験を制限することは技術的にほぼ無理なのでやむを得ないことだと思います。なお、事業資金や住宅購入資金の調達とは違い、教育費で借金をするのが通常であるとはいえないでしょうから、奨学金を借りないと法科大学院に通えない人は「経済的事情」があると私は思います。そうだとすると、予備試験の制度趣旨に真っ向から反する予備試験受験生は実はかなり少ないのではないかと思います。

 繰り返しますが、予備試験に、司法試験の入口レベルでの公平・平等を保つこと以上の意味はないと思っています。ですから「実質的な司法試験」などと評して優秀な法曹を選抜する機能を予備試験に見い出すことには賛同できません。ちなみに司法試験短答試験の試験科目が3科目になっても現行司法試験の性質に変わりはないというのが政府見解です。今は予備試験合格者数が絞られている結果として、レベルの高い人ぞろいになっているにすぎません。
 予備試験にこうした選抜機能を認め、予備試験合格者数を増やすべきでないという意見もあるようです。しかし、予備試験合格者数を絞ることで予備試験合格者=優秀層とカテゴライズすることが合理的か、というと、そうは思いません。なぜなら「優秀層」をカテゴライズしたいのであれば、司法試験合格順位の「何百番以上」などというように本試験成績の上位層を括る方が端的ですし、ロー組の優秀層も取り込めるので有意義だからです。もっとも、そのようなカテゴライズにどれほどの意味があるのかは私には分かりません。
 特に旧司法試験合格者や既に予備試験に合格した人から、予備試験合格者数を増やさなくてもよいという意見が出るのは、個人的にはかなり違和感があります。私が自分自身に問いかけている「自分さえうまくいったらそれでいいのか」という思いが頭をよぎってしまうからです。

「中締め」に当たって2・社会人受験生の方へ

 予備試験ルートを狭められている上に、十分な勉強時間を確保できる現役学生とガチンコ勝負しなければならない社会人受験生。そんな茨の道に果敢に挑む高い志に心から敬意を表します。

 学生と比べて勉強時間等のハンディはあっても能力に差はないと思います。それでも社会人が予備試験で苦戦している原因の大半は方法論にあると私は思います。

 受験生の最終目標は最終合格ですが、実は山の頂上のように不動ではありません。問われていることや配点などは毎年変化していて勉強の仕方も変化に合わせる必要があります。
 現役学生の方々は大学や予備校に受験仲間がいて最新の試験の傾向を把握しやすい環境にあります。
 一方、社会人受験生は数が少ないし、受験生同士の出会いの場も少ないので同様の環境を得るのはなかなか難しいです。

 それでもなんとか情報交換やゼミなどができる受験仲間を作ることをお勧めします(完全な独習では受からないと言いたいのではなく、仲間と勉強する方が独習より受かりやすいだろうということです)。

 私自身も長らく独習でしたが限界を感じ、一緒に勉強してくれる方を紹介してくれるよう予備校のスタッフにお願いしました。そうしたところ若くて優秀な受験生と知り合うことができ、最終合格までの1年余り、週に1回程度のペースで論文ゼミや口述ゼミを組んでもらいました。このゼミの経験がなければ私は最終合格できなかったと思います。

 特に「ベテラン」と呼ばれる方には、プライドを捨てて、若い受験生や合格者に勉強方法や最新の試験傾向について素直に教えを請うことも考えてほしいと思います。
 私は10年連続で落ちた時、わらにもすがる思いで某予備校の合格祝賀会に場違いにも押しかけ、若い合格者をつかまえて教えを請うたことがあります。自分の息子といってもおかしくない年齢の若者に頭を下げ、迷惑そうにしている相手から何とかアドバイスをもらいました。内心、忸怩たる思いもたしかにありました。しかし、合格者なら当たり前にやっていることを自分がやっていなかったことに気づかされました。そこから最終合格まで数年かかりましたが、あの時のアドバイスがなければ最終合格できなかったでしょう。今でもあの青年には恩人として、とても感謝しています。

 ひらすら勉強を積み重ねれば自然と合格に近づくという時代ではありません。目標は毎年絶えず変化しているので、変化に応じた勉強の方向性を考えないと、最終的に目標をとらえることは難しいということを念頭に置いてほしいと思います。

「中締め」に当たって1・私が現行法曹養成制度に反対している理由

 私が現行法曹養成制度に反対している理由。

 ひと言で言えば「不公平な制度が許せない」という点に尽きます。司法の将来を憂う、という高尚な(?)理由もなきにしもあらずですが、大半はごく私的な心情です。

 やはり、自分が旧司法試験制度という誰もが受験できる公平な制度の恩恵を受けたことが大きく影響しています。公平な旧司で最後にぎりぎり滑り込んだ自分が、法科大学院修了を強制される不公平な制度に対し声を上げずに「黙認」することは「自分さえうまくいったらそれでいいのか」という後ろめさを感じずにはいられませんでした。

 予備試験合格者と法科大学院修了者の司法試験合格率に大きな格差があることからみて、予備試験不合格者の中には司法試験を受験すれば合格するはずの実力者が相当数いるのは間違いないと思われます。その中には法科大学院に通えない人も当然に含まれているでしょう。そのような人たちは法曹になる権利を不当に奪われているといえます。

 しかし、自分がかつてそうだったように、受験生は制度に不満の声を上げる余裕がありません。猫の目のようにコロコロと変わる変わる制度に翻弄されながら学力を身につけることに専念するしかないのです。そこで、ここは受験勉強を卒業した自分が、予備試験受験生に代わって制度の改善に向けて声を上げなくては、という思いに駆られて本ブログを立ち上げました。

 こうした心情は人それぞれでしょうが、給費制について言えば、恩恵を受けた先輩法曹が、後輩のために復活を求める声をもっとたくさん上げてくれたらいいのになあ、と期待はしています。

ここでいったん「中締め」にします

昨夜はschulzeさん呼びかけのオフ会に参加してきました。
和田吉弘先生をお招きして非常に楽しい時間をすごさせていただきました。先生とお会いするのは今回が二度目。現行法曹養成制度批判の鋭い舌鋒と、受験生の立場を第一に考える姿勢に変わりはなく、先生のご意見が反映されていない現状を口惜しく思いました。

ほかに参加していただいた弁護士の方々、若手法曹、修習生、司法試験結果待ちの受験生、予備試験受験生の皆さんも多様なバックグラウンドをお持ちの方々ばかりで大変刺激を受けました。昨夜のオフ会メンバーだけをみれば法曹養成の多様性は十分に実現できているといえるでしょう。

楽しく充実した昨夜のオフ会を経て、気持ちに一区切りつきました。

ちょっと前から考えていたことなんですが、いったんブログを休止します。理由は
・法曹養成の当面の政府方針が決まり、さらなる検討体制が設置されないことから制度の大きな転換が当面見込まれないこと
・これから私事が忙しくなってブログの継続、情報収集が難しくなること
です。

予備試験合格者数と給費制に関しては状況が好転する兆しが見えず、ここでブログを通じた言論活動を閉じるのは後ろ髪を引かれる思いですが、私と思いを同じくする情報発信はいったんschulzeさんにお任せしようと思います

ただ、司法修習生の貸与申請状況主要大法学部志願状況の経年変化はウオッチし続けるつもりで、集めたデータを単発的に公表します。mixiでの予備試験受験生支援はこれまで通り継続します。

最後に言い残しておきたかったことを綴ります。
4点について一気に書いたところ、あまりに長文になったので、エントリーを分けることにしました。
以下、別稿にてエントリーを続けます。

2015年8月 1日 (土)

今も心に響く和田委員意見書

法曹養成制度検討会議第15回(平成25年6月19日開催)提出資料
和田委員意見書「今後に向けての意見」

http://www.moj.go.jp/content/000111847.pdf

 今回のパブリックコメント手続については、形ばかりのものであったとの批判は当然ありうると思う。ただ、この場を借りて、「中間的取りまとめ」の内容に批判的なパブリックコメントを提出された方々に申し上げたいのは、本検討会議が上記の「意見の概要」のような形でのまとめにせざるを得なかったこと自体が一定の意味を持つ、ということである。心ある政治家や、次の検討体制における心あるメンバーは、今回のパブリックコメントの意味を正しく理解するであろうし、また、おそらく、事務局の方々ないし法務省幹部の方々も、「中間的取りまとめ」の内容に対してこれほど多数の批判的な意見が寄せられたことに改めて衝撃を受けているように私には思われる。私は、本検討会議では残念ながら力及ばず、最終的な取りまとめの内容にはほとんど寄与することができないことになりそうであるが、他方で、法曹志願者の激減等という厳しい現実を前にして、抜本的な改革のための歯車は確実に動き始めたようにも感じている。
 今回のパブリックコメント手続には無気力感を感じている方も多いと思う。それも無理からぬこととは思うが、
現実を変えていくためには、できればその無気力感を引きずることなく今後も意見表明の意思を持ち続けてほしい、と切に願う。
 最後に、改めてコメントさせていただければ、良い法曹養成をするためには、良い人材を集めて良い教育をする必要があるが、現在はその2点ともうまくいっていない状態にある。法科大学院の不人気は広がりを見せ、法学部への進学希望者さえも減っているようである。とくに、
法曹志願者の激減という現実は、法科大学院制度を破綻させるのに十分なものであるが、それによって司法を破綻させてはならないのであり、我が国の司法をこそ守るために、法科大学院制度を含めて法曹養成制度を本当に抜本的に見直さなければならないのである。私自身も、これからも謙虚に考えながら、種々の形で引き続き意見を表明していきたいと考えている次第である。

法曹養成制度検討会議で現行制度の見直し向けて孤軍奮闘された和田吉弘先生が、最終盤の会議に提出された意見書です。
内容は会議の他の委員に向けたものというよりは、パブリック・コメントで給費制復活などの意見を寄せたわれわれ市民に向けたメッセージのようでもあります。

それから2年。「次の検討体制における心あるメンバー」は現れませんでした。「歯車」は前に動いている分野もある一方で、後退した分野もあるような。最後の段落に記された当時の現状の指摘と警鐘が現在でも通じるのは、法曹養成の危機的状況が2年前から改善されていないためでしょう。

だからこそ「現実を変えていくためには、できればその無気力感を引きずることなく今後も意見表明の意思を持ち続けてほしい、と切に願う。」という呼びかけが今も心に響きます。

私はこれからも、この呼びかけに応えることができるかな・・・

2015年7月27日 (月)

“予備試験組の質に問題あると見るべきでない”と法曹養成制度改革顧問会議顧問

法曹養成制度改革顧問会議第6回会議 議事録より
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai6/gijiroku.pdf

○吉戒顧問 予備試験が、予備という名前にふさわしい状況にはなっていないなという問題意識は持っております。法曹養成は、プロセスによる養成であり、法科大学院はその中核を占めるということがうたってあるわけで、それを踏まえて制度設計がされたわけですけれども、現実には、予備試験組が徐々に増加しているという状況です。
ただ、予備試験が今まで3回実施されて、それを経由して司法試験に合格した方が2回いまして、司法修習を修了して弁護士登録している人が1回いるわけですね。
そういう状況で見ますと、例えば、66期で予備試験組の39人が修習を終了したと、そのうち、5人が裁判官に任官して、2人は検事で、あとは弁護士だということですね。
採用する側では予備試験組についても、別に差別をしないで、能力、資質をきちんと判断して採用しているわけなので、予備試験組は、資質、能力に何か問題があるというような見方をするのは避けるべきだと思います。

後段は至極まっとうな意見ですね。政府のご意見番である顧問が、予備試験合格者の質に問題があるという見方はしないよう釘を刺しているのに、言うこと聞かないでどうしてこういう取りまとめになったのか。

結局「顧問」って名ばかりのお飾りだったのかな。

顧問の方々の貴重なご意見も、政府・官僚が都合のよいところだけ聞き入れ、都合の悪いところは無視する形で、いいように利用されてしまったみたいですね。

2015年7月26日 (日)

政府による予備試験合格者の「法曹としての質」問題視は“捏造”か“デマ”の類

予備試験合格者の「法曹としての質」問題について新たな開示資料に基づいて検証します。

新資料は以下の4点です。

司法修習生考試結果集計表(第66期)

66koushi1

司法修習生考試結果集計表(第67期)

67koushi1

集合修習成績集計表(第66期)

66shugo1_2

集合修習成績集計表(第67期)

67shugo1_2

いずれも法曹養成制度改革顧問会議に提出されましたが「非公開資料」と扱われ、公開されていません。しかし、予備試験合格者の本試験合格「後」の「質」に関わる重要な客観的データです。

集合修習の集計表をみると、成績「優」をとった修習生の割合は66期、67期とも全科目で予備試験資格者が高く、「良上」も66期の民事弁護を除いて予備試験資格者の方が上回っています。

考試結果集計表は残念ながら人数と割合の部分が黒塗りで非開示とされました。
ただ、このうち「66期」については黒塗り部分のデータを見た国会議員のコメントがあります。
「待ったなし法曹養成・法曹人口の抜本改革~②司法修習過程で明らかに、予備試験合
格者の優秀さ~」(あらいぐまのつぶやき)

http://ameblo.jp/katsuyuki-kawai/entry-11776079783.html

それによると

考試では民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護の各科目で予備試験出身者の方が法科大学院出身者よりも成績「優」を得た者の割合が高く、

とのことです。

また、顧問会議議事録によれば事務方が

「一部の科目を除きまして、基本、優の割合が予備試験組の人たちの割合の方が高いという状況がお分かりいただけるかと思います。」

と説明しています。

これらの客観的データは、先日の政府決定「法曹養成制度改革の更なる推進について」が、予備試験合格者の「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」を問題視したのとは真逆の評価を指向するものです。

たしかに予備試験合格者はいまだ少数派でサンプル数が少ないことから、これらのデータから何かを断定するのは早計かもしれません。しかし、政府が根拠として挙げた、誰が何を根拠に言ったのかも分からない意見レベルの資料よりははるかに実態を反映しているものでしょう。

ところが、これらのデータが提出された際の議事録をみると、データの内容を検討した形跡がありません。

かつて、行政がダム建設や空港建設といった巨大公共事業を進めるに当たって、需要予測などのデータを都合のよいところだけつまみ喰いして、事業推進の根拠にしたのではないかと問題になりました。今回併せて決定された「法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ)」に対しても「統計結果の引用の仕方により、実際には、存在しない需要について、存在するかのごとき「見せ方」がされている」 (武本夕香子弁護士のブログ)との指摘があります。

しかし、政府決定の予備試験合格者の部分は、都合よくつまみ喰いする統計結果がそもそもないこところから「質」の問題や「弊害のおそれ」を持ち出した上、都合の悪い統計結果は「非公開資料」として検証困難にしている点で、もっと悪質のように思います。

なお唯一、予備組の「質」を問題にする拠り所になる得る客観的事実は、予備試験科目数と法科大学院履修科目数の違いです。しかし、この違いから「質」や「弊害のおそれ」を見いだすことが極めて不合理であることは前回のエントリーで指摘した通りです。
そう考えると、政府決定が予備試験合格者の「法曹の質」と「弊害が生じるおそれ」に言及したのは、捏造かデマに近いと私は思います。

まあ、たとえ政府がどんなに詭弁を弄しても、市場は実務的観点から予備試験合格者について合理的な評価を下すと思います。それゆえ捏造やデマに世間が踊らされる心配はまずありません。
また、有識者会議の過程を経た政策決定が、初めから結論ありきの不合理なものであるケースは、今に始まったことではありません。

それでも国の重要施策の決定がこんなにデタラメなのかとあらためて思うと、この国の行く末が心底恐ろしくなります。

※参考
予備試験合格者の「法曹としての質」を考える上で参考になる他の客観的データとして任官割合があります。
「新任判事補101人中、予備試験合格者は12人」(拙稿)
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-5338.html

「【速報】司法修習の起案成績は予備試験組がロー修了組を上回ることが明らかに」(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52127075.html
「デタラメ意見書を「評価」しちゃった日弁連会長声明の残念っぷりを嘆く」(福岡の家電弁護士のブログ)
http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-12054797146.html

2015年7月24日 (金)

根拠なく予備試験合格組の「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」を問題にした可能性が濃厚

先日決定されたの政府方針「法曹養成制度改革の更なる推進についてhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/07/15/1359973_02.pdf

ここで予備試験合格組の司法試験合格者の「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」が問題にされたことに関し内閣官房に情報公開請求を試みました。

公開を求めたのは以下の文書

第22回法曹養成制度改革顧問会議(平成27年6月11日開催)において内閣官房法曹養成制度改革推進室が提示した資料「法曹養成制度改革推進会議決定(案)」の「第4 司法試験 1 予備試験」の項で「法科大学院を経由することなく予備試験合格の資格で司法試験に合格した者について、試験科目の枠にとらわれない多様な学修を実施する法科大学院教育を経ていないことによる弊害が生じるおそれがある」とした根拠となる客観的データ、事実等が分かる文書及び同項で「法科大学院を経由することなく予備試験合格の資格で司法試験に合格した者の法曹としての質の維持に努める」として特に予備試験合格者の法曹としての質を問題にした根拠となる客観的データ、事実等が分かる文書

なお「法曹養成制度改革推進会議決定(案)」は、最終決定の「法曹養成制度改革の更なる推進について」の原案で、予備試験の項は「案」と「最終決定」で一字一句変わりません。

請求に対し開示されたのは以下の3文書

(1)予備試験制度に関する意見の整理等
(2)法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について(提言)抜粋
(3)予備試験の実施方針について

(1)はhttp://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai9/siryou8_5.pdf
(2)はhttp://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/11/19/1353567_3_1.pdfの参考資料の61ページ
(3)はhttp://www.moj.go.jp/content/000006534.pdfで、いずれも公開済みの文書でした。

開示文書をみました。

(1)で請求内容に該当すると思われる部分は1ページの表左側の「予備試験制度の現状に対する批判」の記載だと思います。私は既に目を通したことがありましたが、再度、読み込んでみました。
 しかし、ここで予備試験の「問題点」として指摘されていることを要約すると

ア・予備試験受験生の属性が制度趣旨に沿っていない
イ・負担の軽い予備試験を「バイパス」利用する者がいて法科大学院の理念が実現できていない
ウ・予備試験の勉強のために法科大学院の学修が疎かにされている。ロー教育に悪影響が出ている
エ・法科大学院教育の軽視の傾向が広がりつつある

予備試験組がエリートであり法科大学院組が二番手との風潮に拍車がかかる
カ・予備試験の科目数等が限られ、法科大学院修了者と同程度の学力を判定する試験になっていない

ん? ほとんど司法試験合格「」の問題点の指摘ですね。
合格「」の「弊害が生じるおそれ」「法曹としての質」とは関係ないよね?
しかも、どの指摘も表右側の「再批判」で逐一反論されているし。
「再批判」は無視して「批判」のほうだけ斟酌したのかな。
だとしたら、ずいぶん恣意的ですね。
唯一、合格「」の指摘は意見オですが、これはむしろ世間が予備試験組の「法曹としての質」を高く評価する可能性を示したものですね。
さらに2ページ目には「予備試験合格資格で司法試験に合格した者について、不足があるとの指摘は見られない現状において・・・」という記述があるよ。これは予備試験組の「法曹としての質」「弊害のおそれ」を問題にする根拠となる事実はない、という意味だよね。

そもそも私は「根拠となる客観的データ、事実等」を求めたんです。なのに示されたのは、誰が何を根拠に言ったのかも分からない、主観的な意見ばかりで、政府方針という重要事項を決める根拠としては極めて薄弱です。結局、政府が客観的根拠なく予備試験組を不当にdisったってことのようです。

他の開示文書(2)(3)は、予備試験の試験科目が法科大学院の授業科目より限定的であるということを言いたいようです。

学修した科目数の違いは「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」とどう関わるのでしょう。学修した科目が少ないと「法曹としての質」に問題があり「弊害が生じるおそれ」が出てくるなら、たった5~6の試験科目しか勉強しなかった旧司法試験組なんて目も当てられないほど質が低い「ヤブ法曹」ばかりで大問題になっているはずですね。新たな法曹養成なんかより、旧司法試験組法曹の再教育の方が緊急の重要課題でしょう。
そもそも「法科大学院の教育の効果は5年で薄れてしまう」(注)らしいです。だったら法科大学院での履修自体が「法曹としての質」とは関係ないことになるでしょう。

結局、予備試験合格組の「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」を問題する合理的根拠がないまま、問題があることを前提とする政府方針が決まったんですね。どんな闇の力が働いているんでしょうか。

(注)
「法曹養成制度検討会議第6回,事務局提出資料,受験回数制限(平成24年12月25日開催)」(タダスケの日記)
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20121230/1356828107

2015年7月21日 (火)

法曹養成に関する岩手日報論説の感想

法曹養成の転換 目標半減の理由を示せ(7/21岩手日報論説)
http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2015/m07/r0721.htm

国に対するかなり辛辣な主張だと思います。共感する部分が多く、これぞ地方紙の真骨頂と感心しました。

特徴的なのは司法制度改革のそもそものスタートラインに厳しい疑いの目を向けていることです。たとえば

しかし、法曹の数は司法制度改革の土台部分。部分的な手直しの意味合いにとどめることなく、「国民に身近な司法」を掲げた一連の改革の全体像を見直す契機とする必要があるのではないか。

という部分は、これを機に改革の理念の根本を見直すべきという主張に読めます。

また、

司法制度改革推進計画では「現在の法曹人口が、わが国社会の法的需要に十分に対応できていない」とする認識も示されたものだ。結果的に認識を誤り、目標が過大だったと言われても仕方ない。

という部分も、そもそも改革のスタート時の法曹需要予測が間違っていた、と結論付けているように読めます。もう「開拓すれば需要はわんさかある」なんて虚言にはだまされないぞ、といった態度が伺えます。

ほかにも、定員を減らして合格率の帳尻を合わせようとするインチキぶりや、「高い合格率目標を喧伝(けんでん)して志願者の期待をあおった」国の責任を指摘したりと、厳しい批判を展開しています。

結局、この論説が最後に問いかける「なぜ『3千人程度』を『1500人以上』にするのか。」という疑問に国がきちんと答えるべく、2000年前後の予測が正しかったのかどうかを誤魔化しや偽りなく総括しなければ、法科大学院を中核とする法曹養成制度の推進をいくら叫んでも、関係者以外、誰も耳を貸さないだろうと思います。

2015年7月17日 (金)

現行法曹養成制度について地方メディアに考えてほしいこと

課題山積の現行法曹養成制度の改善に向けた当面の政府方針が先日、決定されました。
「法曹養成制度改革の更なる推進について」
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai23/siryou4.pdf

法科大学院の募集停止が進み、特に地方在住者が法曹を目指す環境はますます悪化しています。

しかし、上記の政府方針で地方の法曹養成に関して言及されているのは

・累積合格率7割以上を絶対的指標とはせず法科大学院の「地域配置」に留意すること
・課題のある法科大学院への改善命令、閉校命令等の措置に際し、地域の状況やICT(情報通信技術)の活用状況を考慮すること
・奨学金返還支援などの奨学金制度の充実
・地方在住者等に対するICT活用研究と普及促進

という点くらいです。

既に募集停止を決めた地方大学院の募集再開に向けた措置はありませんし、もちろん新設もあり得ません。地域の状況に応じて今ある大学院が閉校命令などを受けずに済む場合が有り得るというだけです。地方において法科大学院の配置や規模が現状より縮小する可能性は大いにあっても拡大することはまずありません。

地方在住者の受験環境を今より良くする可能性のある措置は、奨学制度とICTです。

しかし、奨学制度で特に地方に関して挙げられているのは「地元に就職する学生の奨学金返還支援のための基金の造成及び優先枠(地方創生枠)を設けて無利子奨学金の貸与を行うなど」という程度です。「給付型支援」の充実という記載もありますが、これは特に地方学生を対象にした記述には読めません。そうであれば、地方在住者が法科大学院に通うために転居と下宿を余儀なくされ、それに伴う費用の借金を強いられる現状はほとんど変わりません。

ICTの活用はこれから実証研究を始める段階で、本格的な普及の目途はもっと先の平成30年度からになります。また、ICTが活用されるとしても、政府方針の通り「法曹を志す者の誰もが法科大学院で学ぶことができる」ことを実現するには、自宅もしくは自宅から通える施設でインターネット受講できるシステムにする必要があります。しかし、そのような方法をライブで実施するのは困難でしょう。また、法科大学院推進者が忌み嫌った受験予備校のネット講義と何ら変わらず、もはや「質・量ともに豊かな法曹を養成するプロセス教育」とは言えません。

結局、このたびの新たな政府方針に従っても、地方の受験環境が良くなることはないと思われます。むしろ、住む場所を問わず誰でも挑戦できる予備試験について「合格者数を増やすな」と釘を刺している点は、地方の受験環境をより悪化させているといえます。

そもそも、一部の人しか通うことができない法科大学院の修了を強制する、という制度自体に無理があったのです。「司法制度改革の理念」は、少なくとも地理的には誰もがローに通える大都市圏のみでぎりぎり首の皮一枚つながっているだけ。地方では完全に崩壊し、理念通りの教育が復活する見込みもないと言ってよいと思います。

法曹養成制度において、これだけ地方がないがいしろにされた挙げ句、もし地方メディアがこの期に及んで「『改革の理念』『改革の原点』を貫け」という類の論調を掲げるとしたら、お人好しも甚だしいと私は思います。読者・視聴者たる地元の法曹志願者の「職業選択の自由」を考えていない、と思われても仕方がないでしょう

地方メディアは、先の政府方針の内容が制度の改善にとって不十分というにとどまらず、そもそもの改革の「理念」「原点」は正しかったのか、という点に立ち返って現行制度の問題点を追及してほしいと思います。

私は地方の法曹養成環境を都市圏と対等に近づけるには、以下の2つの方法しかないと思っています。

・現行制度を前提にするならば、予備試験の合格枠を拡大し受験会場を地方に増やすこと

・現行制度を前提にしないならば、司法試験の受験資格制度を廃止すること

以上が長らく地方在住司法試験受験生だった私の考えです。

※当ブログにおける過去の地方の法曹養成に関する記事
「地方の実情を踏まえた法曹養成とは」
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-6a21.html
「ローに通えない地方法曹志願者の夢をつなぐには」
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-ff2e.html

2015年7月11日 (土)

マスコミの変化を予感させる西日本新聞社説

法曹養成政府案 改革の原点は守れるのか(7/10西日本新聞社説)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/181134

いまだ「理念」にとらわれている点は脇に置くとして、政府方針に対し中央大手紙とは異なる視点や、手厳しさが見受けられます。

たとえば政府方針が司法試験合格者「1500人程度」とした点について。

6月17日付の朝日新聞の社説

 法律家の保護でなく、市民が使える法律サービスが十分かどうかの観点から、今後の法曹人口を柔軟に考えていくべきだ

として「1500人程度」を超える増員を暗に求めています。

一方、西日本新聞社説では

 政府案は、法科大学院主体の養成制度とともに法曹人口の拡大路線も維持した。年1500人の合格者は現状に近いペースで弁護士の増加が続くことを意味する。
 司法制度改革で
弁護士は倍増したものの、仕事は増えず、若手弁護士の就職難や実務能力が磨けないといった問題を生んでいる。法曹志望者が減る大きな要因だ。

として増員路線が、めぐりめぐって法曹志願者の減少の原因になっているとの問題意識を伺わせています。たとえ「1500人」でも法曹人口が増え続けていくことを認識した上で、増員が志願者減少の原因になっているとする視点は、一般紙の論説ではこれまで見たことがありません。従来のマスコミの論調は、増員ペースを問題にすることはあっても、増員自体は正しい、という位置づけに揺るぎはなかったように思います。

また、西日本新聞社説は、地方の法科大学院から先に淘汰されていくことへの危機意識と政府方針への不信感が強烈にあらわれているのも特徴的です。

現行法曹養成制度に対するマスコミの見方が、地方メディアから変わっていくことを予感させます。

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