2019年4月26日 (金)

実は「容疑者」は人権に配慮した呼称だった!

池袋で起きた痛ましい交通死亡事故の加害車両の運転者について、マスコミが「容疑者」と報道しないことを批判する声があると聞きます。その批判の背景には、「容疑者」と呼ぶことにより、運転者を「犯罪者ないし犯罪者と強く疑われる者」であると位置付けるべきだという考えがあると思われます。しかし「容疑者」という呼び方に、そもそも、そのような意味があったのでしょうか?

「容疑者」と「被疑者」の違い

「容疑者」という言葉は、呼称としてはマスコミの造語です。「容疑者」をあえて定義すると「逮捕後、公訴提起前の身体拘束中の被疑者」ということになります。
逮捕の有無に関わらず在宅で捜査を受けている「被疑者」を含みません。
今回の加害車両の運転者は逮捕されていないので「容疑者」の定義に当てはまりません。したがって、報道で「容疑者」とは呼べないことになります。

2 「容疑者」という言葉の沿革

もともと「容疑者」という言葉は一般的な報道用語ではありませんでした。この言葉が報道に頻繁に登場するようになったのは約30年前です。
「容疑者」呼称が登場する前、逮捕された被疑者は報道で実名の呼び捨てにされていました。
たとえば
「○○署は1日、甲野乙郎(三五)を殺人容疑で逮捕した。調べによると、甲野は○○した疑い。」
という感じです。
今ではとても信じられませんが、それが当たり前で、一般読者も逮捕された者の呼び捨て表現に特に違和感を持っていませんでした。
しかし、約30年前、犯罪報道による人権侵害を問題にし、被疑者の実名報道を改めるべきとの機運が高まりました。きっかけは浅野健一著「犯罪報道の犯罪」が発した問題提起が広まったことが考えられます。
そうした機運の中でマスコミは、逮捕段階で被疑者を犯罪者と同視するかのような表現を避けるため、従来の呼び捨てをやめて「容疑者」という呼称を付けるよう改めました。呼称を「被疑者」でなく「容疑者」とした理由は、厳密には「被疑者」と概念が同一でないこと、「被疑者」だと「被害者」と語感が似て間違えやすいことが考えられます。
このように「容疑者」呼称が始まった趣旨は、逮捕された被疑者の人権に配慮して従来の呼び捨てによる犯人視報道をやめ、無罪推定原則に基づき「逮捕されてもまだ犯人と決まったわけではなく、容疑(嫌疑)をかけられている段階にすぎない」ということを強調するためだったのです。

3 現在の「容疑者」の意味

こうして、無罪推定原則に基づく人権擁護を趣旨として始まった「容疑者」呼称は、当時、「逮捕=犯人」とみる世間の安易な風潮を変えるのに一役買いました。
しかし、逮捕後の被疑者を、呼称の点で特別扱いすることに変わりはありませんでした。また、「逮捕=犯人」という一般の捉え方が飛躍的に改まることもありませんでした。
そのためか、「容疑者」呼称は現在、当初の趣旨に反し、犯人ないし犯人と強く疑われる者であるとの「レッテル張り」の意味を持つようになっています。結局、「レッテル」が「呼び捨て」から「容疑者」に変わっただけでした。
無罪推定原則を徹底するならば、逮捕された被疑者も、犯罪報道以外の一般の記事に登場する人物と同じく、肩書・敬称付きで報じるか、根本的には犯罪報道の原則匿名化が検討されるべきでしょう。

 

※追記
容疑者の定義は原則として「逮捕後、公訴提起前の身体拘束中の被疑者」ですが例外があります。たとえば①既に被疑者として実名報道されている人物に逮捕状が出た場合②警察が被疑者の逮捕状を取って公開捜査をしている場合③現行犯的な被疑者が死亡した場合などです。このように例外が結構あり、その基準も明確ではありません。報道の「容疑者」呼称はかなり場当たり的に運用されているのが実情です。

 

 

2017年5月14日 (日)

69期司法修習生二回試験 不合格者54人中41人が民弁で不可

69期司法修習生の二回試験=司法修習生考試(上段)と集合修習(下段)の成績について最高裁から情報開示を受けました。

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二回試験不合格者54人中、41人が民事弁護で不可となっています。

既に「40名以上が民事弁護の科目で落第点をとってしまった」という情報(ウィン綜合法律事務所 弁護士坂野真一の公式ブログ)がありましたが、それが裏付けられました。

※参考
「【速報】69期司法修習生二回試験 不合格者54人(昨年+21人) 不合格率は新64期以降で最悪か」(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52174611.html
「【二回試験結果雑感】69期はレベルが低かったことになってしまうのか?」(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52174641.html

2017年3月 7日 (火)

70期司法修習生の貸与申請率は64.77%で過去最低(再採用者込みベース)

schulzeさんのブログで既報ですが、
70期司法修習生の貸与申請状況について最高裁から情報開示を受けました。

司法修習生採用者数(再採用者を含まない)1,530人(この資料より)のうち

○ 貸与申請者数(申請後撤回した者を除く)993人
(申請額別)
18万円・・・・・・・・・・・・・・・ 33人
23万円・・・・・・・・・・・・・・・847人
25万5000円(扶養加算)・ 27人
25万5000円(住居加算)・ 78人
28万円・・・・・・・・・・・・・・・ 8人
注:平成28年11月28日現在

貸与申請率は再採用者を含まないベースで64.9%で過去最低となりました。
推移と、過去最低となった理由の分析はschulzeさんが的確にまとめてくださっています。
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52178704.html

昨年、最高裁が司法修習生の再採用者を含む人数を母数に公式にデータを発表しましたので、
以下に同じ形式で推移を示します。傾向は再採用者を含まないベースのデータと変わりません。山中理司先生の開示資料によると、再採用者を含む採用者数は1,533人です。

              採用修習生数 申請者数  申請率
新第65期  2,001人    1,688人   84.36%
第66期    2,035人    1,645人   80.84%
第67期    1,972人    1,449人   73.48%
第68期    1,762人    1,181人   67.03%
第69期    1,788人    1,205人   67.39%
第70期    1,533人     993人   64.77%

2017年2月12日 (日)

2017年度の主要国立大法学部の出願状況/軒並み増加

旧帝大と一橋大、神戸大の今年の法学部志願状況(前期)です。
元のデータは河合塾です。
http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/shutsugan/

志願者数は左から2017←2016←2015←2014←2013←2012の順で表記。東大は文科一類。阪大は法学科。
赤字が昨年比減、青字が昨年比増。

      募集人員 志願者数      
東京    401  1310←1206←1309←1226←1169←1592
一橋    155  602←507←549←464←518←537
北海道  140   319←322←246←340←267←318
東北    138   367←307←326←331←371←356
名古屋  105   284←253←238←248←281←300
大阪    153   440←286←264←261←335←358
京都     300   775←821←746←857←780←807
神戸   120   344←340←312←311←334←414
九州     154    393←338←378←293←390←400

文系の就職状況の改善を反映してか、軒並み昨年より増えました。
減ったところも昨年の増加の反動と思われます。

2017年度の主要私大法学部志願状況/早慶は回復、中央は一般で前年割れ

早・慶・中央の法学部・法律学科の確定志願状況です。
※出願者数は左から「2017年←2016年←2015年←2014年←2013年←2012年」の順で表記。
赤字は昨年比減、青字は昨年比増

早稲田(法学部)
http://www.admission.waseda.jp/shigan_list.pdf
一般        募集350 4350←4306←4630←4847←4967←5232
センター利用 募集100 1789←1886←2393←2109←2248←1949

慶應(法学部法律学科)
http://www.admissions.keio.ac.jp/exam/shigansha.html
                   募集230  2142←1999←2020←2009←2215←2308

中央(法学部法律学科)
http://www2.chuo-u.ac.jp/nyushi/nippou.html
統一(4教科) 募集22    326←299←243←237←256←352
統一(3教科) 募集39     943←874←818←820←826←969   
一般(4教科) 募集65    924←1066←965←1208←1536←1551
一般(3教科) 募集291   2738←2842←2658←3006←3657←3747
センター併用  募集43    1271←1344←1254←1468←1897←1962
センター単独(5教科) 募集96  2143←2277←2315←2444←2932←2759
センター単独(3教科) 募集20   1976←2256(昨年度新設)

早慶は下げ止まりか、やや回復。中央は統一で昨年比増ですが、メインの一般で前年割れ。全体として前年の増減の反動があらわれているように見えます。

2016年7月13日 (水)

司法修習生の貸与申請状況の経年比較情報が開示されました

私が毎年、情報開示申請していた司法修習の貸与申請状況が、法曹養成制度改革連絡協議会第4回協議会資料として公開されました。
http://www.moj.go.jp/content/001198289.pdf

引き移すと

      採用修習生数 申請者数  申請率
新第65期 2,001人    1,688人   84.36%
第66期   2,035人    1,645人   80.84%
第67期   1,972人    1,449人   73.48%
第68期   1,762人    1,181人   67.03%
第69期   1,788人    1,205人   67.39%

私が取得したデータと若干異なるのは、この資料の対象時期がいずれも各修習期の修習開始日現在で統一されていること、採用者数に再採用者を含んでいることによるものです。傾向は変わらず、新65期から申請率は下がり続け69期でほぼ横ばいとなっています。

2016年2月19日 (金)

第69期司法修習生の貸与申請率は67・4%

最高裁より情報開示を受けました。

○ 司法修習生採用者数 1,787
○ 貸与申請者数(申請後撤回した者を除く)1,205
(申請額別)
18万円・・・・・・・・・・・・・・・ 51人
23万円・・・・・・・・・・・・・・・894人
25万5000円(扶養加算)・ 28人
25万5000円(住居加算)・207人
28万円・・・・・・・・・・・・・・・ 25人
注:平成27年11月27日現在

貸与申請率(貸与申請者数/司法修習生採用者数×100)は67.4%(小数点以下第2位四捨五入)。68期(67.1%)より0.3ポイント増です。

貸与申請者数と申請率の推移は以下の通りです。
新65期(1742人,87.1%)

66期(1654人,80.8%)

67期(1449人,73.6%)

68期(1181人,67.1%)

69期(1205,67.4%)

68期まで毎期6~7ポイント申請率が下がってきましたが、69期で下げ止まり、わずかながら増加に転じました。

それでも新65期より20ポイント近く少なく、修習生の3人に1人は貸与を申請していない(新65期は10人に1人)という状況が示すものは何でしょうか。
「裕福な家庭で全て援助してもらえるか,貯金が沢山ある人以外は,貸与金なしで修習するのは不可能」という現役修習生のツイートから考えると、経済的に困らない状況にある修習生の割合が以前に比べて増えている、という気がしてなりません。

※過去のデータの詳細はこちら
新65期 http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-41e1.html
66期 http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/h2411-f437.html
67期 http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/h2511-34a0.html
68期 http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-7e6c.html

※参考
「予備試験合格者はロー修了生に比べ司法修習の辞退率が明らかに高い傾向」(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52147295.html

2016年2月12日 (金)

2016年度の主要国立大法学部の出願状況

旧帝大と一橋大、神戸大の今年の法学部志願状況(前期)です。
元のデータは河合塾です。
http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/shutsugan/

志願者数は2016←2015←2014←2013←2012の順で表記。東大は文科一類。阪大は法学科。
赤字が昨年比減、青字が昨年比増。

      募集人員 志願者数      
東京    401  1206←1309←1226←1169←1592
一橋    155  507←549←464←518←537
北海道   140   322←246←340←267←318
東北    140   307←326←331←371←356
名古屋   105   253←238←248←281←300
大阪    145   286←264←261←335←358
京都     320   821←746←857←780←807
神戸   120   340←312←311←334←414
九州     159   338←378←293←390←400

東大、一橋以外の地方では回復したところが多いようです。
その要因としては「廃止が相次ぐ教育学部の総合科学課程志望者の受け皿となっている」という指摘があります。
「河合塾 第3回全統マーク模試にみる2016年度入試の動向」
http://www.keinet.ne.jp/dnj/16/bunseki/03/16bunseki_01.html

他に就職環境の改善、公務員人気が考えられそうです。

総じてみると、地方の主要国立大では法学部志願者の回復傾向がみられると思います。
東大と一橋は下がりましたが、この両大は出願がセンター足きり予想や前年の出願者数に左右されるので何とも言えません。ただ下げ止まり傾向が固まったとはいえないようです。

2016年2月10日 (水)

【朗報】\(^o^)/最高裁が2か月探索しても見つからなかった文書があっさり見つかる

一昨日の記事(昨日の追記あり)で提起した最高裁による情報開示の遅延の件ですが、本日、担当部署に問い合わせたところ、なんと「文書が見つかった」そうです!

本件開示請求について時系列で経緯をまとめます。
2015年
●11月27日 第69期司法修習生採用発令日(採用者数が確定)

●12月1日 私が「第69期司法修習生採用者数が分かる文書」の開示を最高裁に請求


2016年
●1月4日 最高裁が戸倉三郎事務総長名で「文書の探索及び精査に時間を要しているため」開示不開示の通知期限を1カ月延長すると私に文書通知

●1月18日 第2回法曹養成制度改革連絡協議会に「第69期司法修習生採用者数」が記載された文書が資料として提出される

●2月4日 最高裁が戸倉三郎事務総長名で「文書の探索及び精査に時間を要しているため」開示不開示の通知期限を1カ月延長すると私に再度文書通知

●2月8日 さすがに延長期間が長すぎると思い最高裁の情報公開担当部署に電話で問い合わせたところ「文書の探索及び精査中」の一点張り。「文書開示でなく情報提供で構わないので早くしてほしい」との私の要望を伝達

●2月9日 前記「第69期司法修習生採用者数」が記載された文書が文科省と法務省のホームページに公開される

●2月10日(本日) 対象文書が遅くとも1月18日時点で存在していることを私が最高裁の情報公開担当部署に電話で伝達。担当部署は「2月4日までは探索中だったが、その後、きょう(10日)までの間に文書が見つかったので、今月中に開示不開示の決定を通知する」と電話にて回答←イマココ

いやあ、私が請求した文書を探すのに2か月以上もかけてくれたのですね。請求時点で情報が既に確定的に存在し、遅くとも1月18日までには文書化され公の協議会に提出されていた文書の探索にこれほど長い期間を費やしていただけるとは。その多大な労力に敬意と感謝を表すと同時に、文書探索のあまりの無能さに同情を禁じ得ません。

いや、無能なんて言っては失礼かも。実は優れた文書探索能力をお持ちで、文書はとっくの昔に探索を終えて存在を確認していたけど、私への「嫌がらせ」のために「探索中」と偽って故意に開示を引き延ばしていただけかもしれません。でも、そうだとすると戸倉三郎事務総長名で「文書の探索」中とした私への2通の期限延長通知は内容虚偽の公文書である疑いが出てきてしまいますから、それは違うんでしょう、きっと。

それにしても、つい一昨日までは「文書を探索中」だったのに、わずか2日間でうまいぐあいにあっさり文書が確認できたのはラッキーでした。こんなこともあるんですね。もし確認できたのは私の今日の問い合わせがきっかけで、問い合わせなければいつまでも「探索中」のままだったとすれば、自分も少しは探索のお役に立てたのかな(^^)ただ、データが既に公表された以上、今さら開示されてもまったく無意味になってしまったけどね。この情報開示請求の「無意味化」が引き伸ばしの狙いだったのかなあ、なんてゲスな想像をしてしまいます。

過去3年の例に従って情報提供で済ませていれば、こんなにバタバタすることなく、1月の初めにはこの件でのすべての事務処理が穏便に終わっていたはずなのにねえ。なんで例年のやり方に従わず今回に限って情報提供による開示方法を事実上拒否したのか。そのために私も最高裁の事務方も、何倍もの余計な労力を強いられました。事務処理方法の適切な選択も、事務処理能力を計る重要な要素ですね。

2016年2月 8日 (月)

情報公開、最高裁が消極姿勢に転換/いまだ司法修習生採用者数回答せず(追記あり2/9)

以下は司法審査機関としての最高裁ではなく、司法行政機関としての最高裁の話です。

私が最高裁に毎年、情報開示を請求し、情報提供を受けていた新期の司法修習生採用者数と貸与申請者数の情報が今期はいまだに提供されていません。

過去3年(66、67、68期分)は開示請求から期限である1か月後には情報提供されていました。

ところが今期は昨年12月上旬に請求したのに対し、1か月後の先月上旬に「文書の探索及び精査に時間を要しているため」との理由で期限が延長されました。
さらに1カ月後の先日、同様の理由で再び約1か月間の期限延長の通知が最高裁から届きました。

最高裁に情報公開法は適用されませんが、最高裁が独自に情報開示規定を定めています。
http://www.courts.go.jp/about/siryo/shihougyouseibunshokaiji_youkou/index.html

この中では開示の実施方法として

 開示の申出があった司法行政文書の開示より別の司法行政文書の提示又は情報の提供をする方が開示申出人の目的に沿うと認められる場合は,これらの文書又は情報をもって開示の対象とすることができる。

という規定があります。
義務規定ではありませんが、過去はこの規定をもとに請求から1か月以内に情報提供されていました。
ところが今期は請求から2カ月経ってもさらに先延ばしの返答。

司法修習生採用者数なんて遅くとも11月下旬には確実に定まった情報が存在し、紙ペラ1枚、口頭なら5秒以内で提供できる簡単な情報です。内容的にも隠さなければならないようなものでもなんでもない。
そんなものすら先延ばしを繰り返すという、例年とは明らかに異なる対応ですから、最高裁が情報開示・提供の運用に消極的・後ろ向きな姿勢に転換したのは明らかでしょう。理由は分かりません。各種の審議会でお偉い先生方に先に示すまで一般人にはデータを公表しないということかな、とか、データを司法制度改革の検証に使われるのが嫌なのかな、などと思いましたが想像の域を出ません。

上記の情報提供制度のような積極的な公開規定は情報公開法には明文が見当たりませんし、最近では開示結果への不服を審査する第三者機関を設置するなど、情報開示に積極的な姿勢が最高裁にみられていただけに本当に残念です。

※過去に最高裁から情報提供された内容はこちら
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/h2411-f437.html
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/h2511-34a0.html
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-7e6c.html

※2/9追記
法曹養成制度改革連絡協議会 第2回(平成28年1月18日開催)の配布資料「資料1-9 司法修習生採用数・考試(二回試験)不合格者数」の中に第69期司法修習生採用者数のデータがありました。1,787人とのことです。
私が最高裁に請求した文書は「第69期司法修習生採用者数が分かる文書」です。1月18日時点で既に作成されていた当該文書は、ズバリ私が請求していた文書そのものです。なのに2月4日付で最高裁からもらった通知は「文書の探索及び精査に時間を要している」。
これって一体どういうこと????

2016年2月 5日 (金)

2016年度の主要私大法学部志願状況/早稲田は過去5年で最大の減少、中央は回復

早・慶・中央の法学部・法律学科の確定志願状況です。
※出願者数は「2016年←2015年←2014年←2013年←2012年」の順で表記。
赤字は昨年比減、青字は昨年比増

早稲田(法学部)
http://www.waseda.jp/inst/admission/syutugan_sokuhou_2016/
一般        募集350 4306←4630←4847←4967←5232
センター利用 募集100 1886←2393←2109←2248←1949

慶應(法学部法律学科)
http://www.admissions.keio.ac.jp/exam/shigansha.html
                   募集230  1999←2020←2009←2215←2308

中央(法学部法律学科)
http://www2.chuo-u.ac.jp/nyushi/nippou.html
統一(4教科) 募集20    299←243←237←256←352
統一(3教科) 募集35     874←818←820←826←969   
一般(4教科) 募集60    1066←965←1208←1536←1551
一般(3教科) 募集270  2842←2658←3006←3657←3747
センター併用  募集40   1344←1254←1468←1897←1962
※昨年の募集人員は45
センター単独(5教科) 募集90  2277←2315←2444←2932←2759
センター単独(3教科) 募集20   (今年度新設)

・早稲田の一般は昨年比324人減、7%減と過去5年で減少数、減少幅とも最大
・慶應は微減にとどまったとはいえ過去5年で初の2千人割れ。
・一方、中央はメインの一般入試を含めおおむね前年度より回復しました。法学部の都心回帰決定の影響かとも思いましたが、都心に戻るのは2022年だから新入生は4年間、多摩キャンパスです。ただ、回帰によるイメージアップ効果はあったかもしれません。
あと増加要因としては地方受験会場に「金沢」が加わったことくらいか。3大学の中で中央だけが志願者数を回復した要因は良く分かりません。

主要国立大法学部の志願状況は確定待ちですが、こちらは回復したところが多いようです。

2016年1月24日 (日)

全受験生をベースに法科大学院修了者と予備試験合格者の平成27年司法試験成績を比較してみた

前回のグラフは論文採点対象者という上中位層だけをベースにした比較で、受験生全体の傾向を見るには不向きでした。
そこで短答試験不通過者と論文最低ライン未満者を含む全受験生(平成27年は8,016人)をベースにした折れ線グラフを作り直しました。
緑色の折れ線は、全受験生のうち予備試験合格者の母数が、法科大学院修了者の実数と同じだと仮定した場合の修正値です。

Oresen

このグラフのうち論文採点対象の部分だけを抜粋して拡大したのが以下のグラフ

Zentaioresen_2


以前のグラフより緑色の線青色の線より右上方向に位置しています。

さらに成績下位から順に、「短答不通過」(短答落ち)、「論文最低ライン未満」(足きり)、「合格点未満」「順位4桁」の合格者、「順位3桁」の合格者、「順位2桁以内」の合格者の6段階に分類。各分類に属する受験生について法科大学院修了者(青色、実数)予備試験合格者(緑色、修正値)の占有率を比較しました。

ロー修了者と予備合格者のレベルが「同等」(司法試験法第5条)であれば、こういうグラフになるはず。

Kinkoupatern

しかし、実際はこうです。

Zentaisenyuritsu

成績が上がるほど、予備組の占有率が高くなっています。レベルの不均衡が顕著と言わざるを得ません。

繰り返しますが、このような比較をする趣旨は、予備試験合格者数が不当に抑制され、ロー修了者と予備合格者の学力等の同等性(司法試験法第5条)が実現されていない実態を指摘する点にあります。上位合格に特に価値を認めて推奨する趣旨ではありません。

※1 公開されたデータによると、短答を通過しながら論文足きり以外の理由で総合評価の対象にならなかった人が1人いることになります。その1人がロー組か予備組かデータからは分かりませんが、例の事件の受験生と推測され、ロー組として計算しました。
※2 比較元の表が10点刻みのため、合格順位の桁数によるきっちりとした分類はできていません。グラフでは「順位2桁以内」は1~92位、「順位3桁」は93~927位、「順位4桁」は942~1850位となっています。

2016年1月14日 (木)

平成27年も法科大学院ルートより予備試験ルートの方が司法試験に上位合格する傾向

平成27年司法試験総合点別人員調の予備試験合格者に関するデータが公表されましたので、平成26年と同様のグラフを作成しました。
今回は、法科大学院修了者のみの総合点別人員調も公表されているので、ロー修了者と予備合格者を完全に分けて比較しました。
グラフは縦軸が人数、横軸が総合点。折れ線は青色がロー修了者赤色が予備合格者緑色は予備合格者の母数がロー修了者と同数と仮定した場合の修正値です。

H27sougoutokuten_2

青色と緑色を比較すると、緑色の山の方が高得点側(右側)に寄っていますので、法科大学院ルートより予備試験ルートの方が司法試験に上位合格する傾向は変わっていないと思います。

なお、このような比較をする趣旨は、予備試験合格者数が不当に抑制され、ロー修了者と予備合格者の学力等の同等性(司法試験法第5条)が実現されていない実態を指摘する点にあります。上位合格に特に価値を認めて推奨する趣旨ではありません。

※ブログは依然、原則休止中ですが、情報開示と簡単なデータ分析は時折アップします。

2015年8月 2日 (日)

「中締め」に当たって4・法曹養成とマスコミ

 安全保障関連法案の合憲性や新国立競技場の巨額建設費問題など、政治・行政の合理性に疑義が生じた時にリベラル系のマスコミは問題に鋭く切り込みました。マスコミの重要な使命が権力のチェックであることからして当然です。

 ところが、法曹養成問題では、法曹志願者の激減、借金を背負う修習生や若手弁護士の経済的困窮といった将来の司法の基盤を揺るがしかねない深刻な問題が発生しているにもかかわらず、マスコミが法曹人口増員政策の合理性に疑念を持たないのはなぜか。

 理由はいろいろ考えられます。法科大学院が新聞広告のスポンサーになっている一面もあろうかと思います。
 しかし、私が思う最大の理由は、マスコミが司法制度改革の旗を振ってきた手前、簡単にその旗を降ろせないという体面もしくは面子の問題です。

 安保法案も新国立競技場建設もマスコミが旗を振って「推進せよ」と言ったわけではありません。だからマスコミが法案の廃案や計画の見直しを求めても過去の論調との不整合は特に生じません。
 ところが、司法制度改革でマスコミは改革を推し進める論陣を張ってきました。特に法科大学院制度と弁護士の増員は改革の柱として強く主張してきたと思います。
 それを今さら「間違っていました」と認めるのはマスコミの沽券にかかわる、という体面の取り繕いが、改革の根本的な失敗を追及できない態度をもたらしているように思います。

 このようにマスコミが振り始めた旗を降ろせない、という状況は過去にもあったように思います。

 太平洋戦争です。
 当時の新聞は戦争の早期終結に無力であったばかりか、国民の戦意高揚に一役買い、結果としてたくさんの若者を死地に送り込むことに手を貸しました。

 現在の法曹養成制度は、有為な人材が法曹を目指してくれないという点で、わが国の司法の基盤を揺るがしかねない恐れを生じさせていると思います。それでもマスコミは過去の自らの論調との整合性にこだわり続け、改革を根本的に見直そうとはしません。そればかりか、若者にそっぽを向かれて撤退が相次いだロー縮小の現状を「少数精鋭」と言い繕ったりもします。かつて大本営が「撤退」を「転進」と言い換えて国民を欺いたのと一体どこが違うのか。戦前の報道への反省が微塵も感じられません。

 私はマスコミの最大の使命は「二度と戦争を起こさせないこと」だと信じてやみません。しかし、法曹養成に関する報道をみると、将来、マスコミは戦争の抑止に何も役に立たないばかりか、むしろ煽り立てるのではないかという危惧すら芽生え、それが確信に変わりつつあります。

最後に4点にわたり長々と駄文を連ねて失礼しました。

では、いったん本ブログを閉じさせていただきます。

「中締め」に当たって3・予備試験は優秀曹の選抜試験ではない

 これまで私は司法試験や司法修習の成績において、ロー卒組より予備試験合格組の方が優位に立っていることをデータで示す作業に力を入れてきました。
 しかし、その意図は予備試験合格者がロー卒組に比べて一般的に優秀だとか質が高いとか、そういうことを言いたかったためではありません。旧司組か新司組か、予備組かロー組か、短期合格組かベテラン合格組か、難関大出身かそうではないか、社会人経験があるかないかを問わず、仕事ができる奴はできるし、できない奴はできない。そういうもんだと思っています。

 私がデータ提示で最も言いたいのは、予備試験が不当に狭き門になっている、という点です。すなわち、予備組の成績が相対的に高いということは、ロー卒者と予備合格者の学力の均衡がとれていないことを意味します。学力の均衡がとれていなければ、法科大学院に通えない人は司法試験受験資格を得るまでのハードルが特に高く設定され、受験機会の公平・平等が失われていることになります。そこで予備組の成績がロー卒組を上回っていることを示すことで予備試験合格者数の増加を訴えたかったわけです。ロー教育の質を問う意図も否定はしませんが、それが主眼ではありません。

 予備試験制度の意義は、経済的時間的地理的な事情から法科大学院に通えない人にも司法試験受験機会を与えて、司法試験の入口レベルでの公平・平等を保とうとする点にあり、それ以上の意味はないと思っています。現実には法科大学院に通えるのに予備試験を利用している人がいるかもしれませんが、所得によって受験を制限することは技術的にほぼ無理なのでやむを得ないことだと思います。なお、事業資金や住宅購入資金の調達とは違い、教育費で借金をするのが通常であるとはいえないでしょうから、奨学金を借りないと法科大学院に通えない人は「経済的事情」があると私は思います。そうだとすると、予備試験の制度趣旨に真っ向から反する予備試験受験生は実はかなり少ないのではないかと思います。

 繰り返しますが、予備試験に、司法試験の入口レベルでの公平・平等を保つこと以上の意味はないと思っています。ですから「実質的な司法試験」などと評して優秀な法曹を選抜する機能を予備試験に見い出すことには賛同できません。ちなみに司法試験短答試験の試験科目が3科目になっても現行司法試験の性質に変わりはないというのが政府見解です。今は予備試験合格者数が絞られている結果として、レベルの高い人ぞろいになっているにすぎません。
 予備試験にこうした選抜機能を認め、予備試験合格者数を増やすべきでないという意見もあるようです。しかし、予備試験合格者数を絞ることで予備試験合格者=優秀層とカテゴライズすることが合理的か、というと、そうは思いません。なぜなら「優秀層」をカテゴライズしたいのであれば、司法試験合格順位の「何百番以上」などというように本試験成績の上位層を括る方が端的ですし、ロー組の優秀層も取り込めるので有意義だからです。もっとも、そのようなカテゴライズにどれほどの意味があるのかは私には分かりません。
 特に旧司法試験合格者や既に予備試験に合格した人から、予備試験合格者数を増やさなくてもよいという意見が出るのは、個人的にはかなり違和感があります。私が自分自身に問いかけている「自分さえうまくいったらそれでいいのか」という思いが頭をよぎってしまうからです。

「中締め」に当たって2・社会人受験生の方へ

 予備試験ルートを狭められている上に、十分な勉強時間を確保できる現役学生とガチンコ勝負しなければならない社会人受験生。そんな茨の道に果敢に挑む高い志に心から敬意を表します。

 学生と比べて勉強時間等のハンディはあっても能力に差はないと思います。それでも社会人が予備試験で苦戦している原因の大半は方法論にあると私は思います。

 受験生の最終目標は最終合格ですが、実は山の頂上のように不動ではありません。問われていることや配点などは毎年変化していて勉強の仕方も変化に合わせる必要があります。
 現役学生の方々は大学や予備校に受験仲間がいて最新の試験の傾向を把握しやすい環境にあります。
 一方、社会人受験生は数が少ないし、受験生同士の出会いの場も少ないので同様の環境を得るのはなかなか難しいです。

 それでもなんとか情報交換やゼミなどができる受験仲間を作ることをお勧めします(完全な独習では受からないと言いたいのではなく、仲間と勉強する方が独習より受かりやすいだろうということです)。

 私自身も長らく独習でしたが限界を感じ、一緒に勉強してくれる方を紹介してくれるよう予備校のスタッフにお願いしました。そうしたところ若くて優秀な受験生と知り合うことができ、最終合格までの1年余り、週に1回程度のペースで論文ゼミや口述ゼミを組んでもらいました。このゼミの経験がなければ私は最終合格できなかったと思います。

 特に「ベテラン」と呼ばれる方には、プライドを捨てて、若い受験生や合格者に勉強方法や最新の試験傾向について素直に教えを請うことも考えてほしいと思います。
 私は10年連続で落ちた時、わらにもすがる思いで某予備校の合格祝賀会に場違いにも押しかけ、若い合格者をつかまえて教えを請うたことがあります。自分の息子といってもおかしくない年齢の若者に頭を下げ、迷惑そうにしている相手から何とかアドバイスをもらいました。内心、忸怩たる思いもたしかにありました。しかし、合格者なら当たり前にやっていることを自分がやっていなかったことに気づかされました。そこから最終合格まで数年かかりましたが、あの時のアドバイスがなければ最終合格できなかったでしょう。今でもあの青年には恩人として、とても感謝しています。

 ひらすら勉強を積み重ねれば自然と合格に近づくという時代ではありません。目標は毎年絶えず変化しているので、変化に応じた勉強の方向性を考えないと、最終的に目標をとらえることは難しいということを念頭に置いてほしいと思います。

「中締め」に当たって1・私が現行法曹養成制度に反対している理由

 私が現行法曹養成制度に反対している理由。

 ひと言で言えば「不公平な制度が許せない」という点に尽きます。司法の将来を憂う、という高尚な(?)理由もなきにしもあらずですが、大半はごく私的な心情です。

 やはり、自分が旧司法試験制度という誰もが受験できる公平な制度の恩恵を受けたことが大きく影響しています。公平な旧司で最後にぎりぎり滑り込んだ自分が、法科大学院修了を強制される不公平な制度に対し声を上げずに「黙認」することは「自分さえうまくいったらそれでいいのか」という後ろめさを感じずにはいられませんでした。

 予備試験合格者と法科大学院修了者の司法試験合格率に大きな格差があることからみて、予備試験不合格者の中には司法試験を受験すれば合格するはずの実力者が相当数いるのは間違いないと思われます。その中には法科大学院に通えない人も当然に含まれているでしょう。そのような人たちは法曹になる権利を不当に奪われているといえます。

 しかし、自分がかつてそうだったように、受験生は制度に不満の声を上げる余裕がありません。猫の目のようにコロコロと変わる変わる制度に翻弄されながら学力を身につけることに専念するしかないのです。そこで、ここは受験勉強を卒業した自分が、予備試験受験生に代わって制度の改善に向けて声を上げなくては、という思いに駆られて本ブログを立ち上げました。

 こうした心情は人それぞれでしょうが、給費制について言えば、恩恵を受けた先輩法曹が、後輩のために復活を求める声をもっとたくさん上げてくれたらいいのになあ、と期待はしています。

ここでいったん「中締め」にします

昨夜はschulzeさん呼びかけのオフ会に参加してきました。
和田吉弘先生をお招きして非常に楽しい時間をすごさせていただきました。先生とお会いするのは今回が二度目。現行法曹養成制度批判の鋭い舌鋒と、受験生の立場を第一に考える姿勢に変わりはなく、先生のご意見が反映されていない現状を口惜しく思いました。

ほかに参加していただいた弁護士の方々、若手法曹、修習生、司法試験結果待ちの受験生、予備試験受験生の皆さんも多様なバックグラウンドをお持ちの方々ばかりで大変刺激を受けました。昨夜のオフ会メンバーだけをみれば法曹養成の多様性は十分に実現できているといえるでしょう。

楽しく充実した昨夜のオフ会を経て、気持ちに一区切りつきました。

ちょっと前から考えていたことなんですが、いったんブログを休止します。理由は
・法曹養成の当面の政府方針が決まり、さらなる検討体制が設置されないことから制度の大きな転換が当面見込まれないこと
・これから私事が忙しくなってブログの継続、情報収集が難しくなること
です。

予備試験合格者数と給費制に関しては状況が好転する兆しが見えず、ここでブログを通じた言論活動を閉じるのは後ろ髪を引かれる思いですが、私と思いを同じくする情報発信はいったんschulzeさんにお任せしようと思います

ただ、司法修習生の貸与申請状況主要大法学部志願状況の経年変化はウオッチし続けるつもりで、集めたデータを単発的に公表します。mixiでの予備試験受験生支援はこれまで通り継続します。

最後に言い残しておきたかったことを綴ります。
4点について一気に書いたところ、あまりに長文になったので、エントリーを分けることにしました。
以下、別稿にてエントリーを続けます。

2015年8月 1日 (土)

今も心に響く和田委員意見書

法曹養成制度検討会議第15回(平成25年6月19日開催)提出資料
和田委員意見書「今後に向けての意見」

http://www.moj.go.jp/content/000111847.pdf

 今回のパブリックコメント手続については、形ばかりのものであったとの批判は当然ありうると思う。ただ、この場を借りて、「中間的取りまとめ」の内容に批判的なパブリックコメントを提出された方々に申し上げたいのは、本検討会議が上記の「意見の概要」のような形でのまとめにせざるを得なかったこと自体が一定の意味を持つ、ということである。心ある政治家や、次の検討体制における心あるメンバーは、今回のパブリックコメントの意味を正しく理解するであろうし、また、おそらく、事務局の方々ないし法務省幹部の方々も、「中間的取りまとめ」の内容に対してこれほど多数の批判的な意見が寄せられたことに改めて衝撃を受けているように私には思われる。私は、本検討会議では残念ながら力及ばず、最終的な取りまとめの内容にはほとんど寄与することができないことになりそうであるが、他方で、法曹志願者の激減等という厳しい現実を前にして、抜本的な改革のための歯車は確実に動き始めたようにも感じている。
 今回のパブリックコメント手続には無気力感を感じている方も多いと思う。それも無理からぬこととは思うが、
現実を変えていくためには、できればその無気力感を引きずることなく今後も意見表明の意思を持ち続けてほしい、と切に願う。
 最後に、改めてコメントさせていただければ、良い法曹養成をするためには、良い人材を集めて良い教育をする必要があるが、現在はその2点ともうまくいっていない状態にある。法科大学院の不人気は広がりを見せ、法学部への進学希望者さえも減っているようである。とくに、
法曹志願者の激減という現実は、法科大学院制度を破綻させるのに十分なものであるが、それによって司法を破綻させてはならないのであり、我が国の司法をこそ守るために、法科大学院制度を含めて法曹養成制度を本当に抜本的に見直さなければならないのである。私自身も、これからも謙虚に考えながら、種々の形で引き続き意見を表明していきたいと考えている次第である。

法曹養成制度検討会議で現行制度の見直し向けて孤軍奮闘された和田吉弘先生が、最終盤の会議に提出された意見書です。
内容は会議の他の委員に向けたものというよりは、パブリック・コメントで給費制復活などの意見を寄せたわれわれ市民に向けたメッセージのようでもあります。

それから2年。「次の検討体制における心あるメンバー」は現れませんでした。「歯車」は前に動いている分野もある一方で、後退した分野もあるような。最後の段落に記された当時の現状の指摘と警鐘が現在でも通じるのは、法曹養成の危機的状況が2年前から改善されていないためでしょう。

だからこそ「現実を変えていくためには、できればその無気力感を引きずることなく今後も意見表明の意思を持ち続けてほしい、と切に願う。」という呼びかけが今も心に響きます。

私はこれからも、この呼びかけに応えることができるかな・・・

2015年7月27日 (月)

“予備試験組の質に問題あると見るべきでない”と法曹養成制度改革顧問会議顧問

法曹養成制度改革顧問会議第6回会議 議事録より
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai6/gijiroku.pdf

○吉戒顧問 予備試験が、予備という名前にふさわしい状況にはなっていないなという問題意識は持っております。法曹養成は、プロセスによる養成であり、法科大学院はその中核を占めるということがうたってあるわけで、それを踏まえて制度設計がされたわけですけれども、現実には、予備試験組が徐々に増加しているという状況です。
ただ、予備試験が今まで3回実施されて、それを経由して司法試験に合格した方が2回いまして、司法修習を修了して弁護士登録している人が1回いるわけですね。
そういう状況で見ますと、例えば、66期で予備試験組の39人が修習を終了したと、そのうち、5人が裁判官に任官して、2人は検事で、あとは弁護士だということですね。
採用する側では予備試験組についても、別に差別をしないで、能力、資質をきちんと判断して採用しているわけなので、予備試験組は、資質、能力に何か問題があるというような見方をするのは避けるべきだと思います。

後段は至極まっとうな意見ですね。政府のご意見番である顧問が、予備試験合格者の質に問題があるという見方はしないよう釘を刺しているのに、言うこと聞かないでどうしてこういう取りまとめになったのか。

結局「顧問」って名ばかりのお飾りだったのかな。

顧問の方々の貴重なご意見も、政府・官僚が都合のよいところだけ聞き入れ、都合の悪いところは無視する形で、いいように利用されてしまったみたいですね。

«政府による予備試験合格者の「法曹としての質」問題視は“捏造”か“デマ”の類

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