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2012年9月

2012年9月27日 (木)

平成24年度司法試験予備試験論文試験(刑事訴訟法)試作答案

恥かきついでに刑訴もアップ。
以下の答案は本年度予備試験の1週間ほど後に試作し、mixiのコミュニティにアップしたものです。その後に構成や内容の正しさは検証していません。間違っているところとか、おかしな点には目をつぶっていただき、あくまで基本とそれ以外を峻別する材料としてのみ見てください。

以下、「基本」部分を色付けします。内容は①原理原則(適正手続の保障、令状主義、強制処分法定主義)②典型論点(強制捜査と任意捜査の区別、任意捜査の限界、おとり捜査の適法性、秘密録音録画の適法性)③規範定立に人権と捜査の調和の観点を絡めること、です。
ほかに、捜査分野のお約束として、
問題文からできるだけ多くの事実を拾って適切に評価した上で、あてはめること、が重要です。

第1 Kが、甲に対する覚せい剤購入の申し込みをAに依頼した捜査について適法性を検討する。
 1  本問捜査方法は、甲の覚せい剤所持罪での逮捕を目的に、KがAを介して甲に覚せい剤の売買を働き掛けたもので、いわゆる「おとり捜査」に当たる。かかる欺罔的手段による捜査は、
適正手続の保障(憲法31条)に反する不当な捜査として、そもそも違法ではないか。
 (1)たしかに、おとり捜査は国家が犯罪を作り出す不当な捜査とも思える。
 しかし、覚せい剤事犯のように、その濫用が犯罪の温床になるなど重大な事件にもかかわらず、密行性が高く、証拠の収集保全が困難な犯罪については、捜査側で欺罔的手段を用いて逮捕、捜索の機会を得る手法の必要性も否定できない。
 (2)したがって、覚せい剤事犯である本問において、おとり捜査も一定の場合には適法となる。
 2 では本問捜査は適法なおとり捜査といえるか。
(1)この点
、「強制の処分」(法197条ただし書)に当たるとすれば、令状が必要で(令状主義、憲法33条、35条)で、かつ、法定されていなければならない。そこで強制捜査と任意捜査の区別が問題となる。
 ア 
令状主義及び強制処分法定主義の趣旨は、捜査権の濫用による不当な権利制約を防止する点にあることから、強制捜査とは被処分者の意思に反して重要な権利利益を制約する捜査をいう
 イ 本問の捜査では、甲はAの働き掛けに対し自由意思で応じるものであるから、意思に反して重要な権利利益を制約するとはいえない。したがって任意捜査であり令状は不要で、法定されていなくても可能である。
 (2)ア しかし、
任意捜査といえども被処分者の権利侵害の可能性はあり、権利侵害を可及的に防止すべく「必要な」限度で行われなければならない(法197条1項本文)。
 そこで
人権保障と捜査の必要性との調和(法1条)の観点から、①犯罪の重大性②おとり捜査の必要性③手段の相当性がある場合に任意捜査として適法になると解する。
 イ そして、手段の相当性の判断においては
既に犯意を抱いていた被疑者に犯行の機会を提供したにすぎないか、新たに犯意を誘発したかが基準になると解する。なぜなら前者の場合は、国家が新たに犯罪を作り出したとはいえないが、後者は犯罪を作り出したといえるからである
3 (1)本問をみると、薬物犯罪は犯罪の温床になる重大な犯罪である(①を具備)。
 また、Aの供述及び通常の捜査では甲の検挙が困難であったため、捜査の必要性が認められる(②を具備)。
 さらに、Aの依頼を受けた甲は当日中の覚せい剤調達を約束し、実際に、その日のうちに別の組員宅に赴き、覚せい剤入りのアタッシュケースを取りに行っている。このように、依頼受諾後、直ちに覚せい剤の調達を行っていることから、甲は日常的に覚せい剤取引を行う、いわばプロの薬物密売人といえる。かかる甲に購入を働き掛ける行為は、新たな犯意を誘発するものではなく、機会を提供したにすぎない。したがって手段の相当性も認められる(③を具備)。
 (2)以上から甲に対する覚せい剤購入の申し込みをAに依頼した捜査は、任意捜査の限界を超えず、適法である。
第2 次にKがAをして甲の姿及び会話を、かばんに隠したビデオカメラで密かに録音録画させ、その提供を受けた捜査の適法性を検討する。
 1 本問の録音録画は
無令状で行われているため、強制捜査であれば令状主義に反し違法となる。そこで強制捜査か否かが問題となる。
 (1)ア 姿(容貌)及び会話の秘密性は、プライバシー(憲法13条前段)に当たり、重要な権利利益であるから、録音録画が意思に反して行われれば原則として強制処分に当たる。
 イ しかし、喫茶店のように不特定多数人が絶えず出入りする場所での容貌及び会話は、他人に見られたり聞かれたりする可能性を本人が許容しており、少なくとも会話の相手方に対しては、容貌を観察され、会話内容を把握されることを許容している。とすれば自室の中などとは異なり、容貌や会話に関するプライバシー権は一部放棄されていると考えられる。 
 また、犯罪行為に関する会話はプライバシー権として保護される価値が希薄である。
 そうであれば、甲の容貌及び会話の秘密性は、重要な権利利益とはいえない。
 (2)したがって本問の録音録画は重要な権利利益の制約には当たらず、強制捜査ではない。
2 では、
任意捜査の限界(法197条1項本文)超えて違法とはならないか
 (1)この点、
人権保障と捜査の必要性との調和(法1条)の観点から、捜査の①必要性②緊急性③相当性がある場合に適法となると解する。
 (2)以下、本問につき検討する。
ア Aの供述及び通常の捜査では甲の検挙が困難であったため、録音録画の必要性が認められる(①を具備)。
イ 甲は、プロの密売人であり、依頼を受けてから直ちに覚せい剤を調達し、買受人に譲渡するものと考えられる。とすれば、所持の現行犯で逮捕できる時間は限られ、スピーディーな令状発付と、令状の執行による捜索が要求される。
 このような状況下で、もし録音録画をしなければ、甲と会った後のAを聴取し、調書にしてからでないと令状発付の疎明資料を提出できず、甲の現行犯逮捕の機会を逃してしまうことになりかねない。
 これに対し録音録画でれば記録されたビデオカメラをそのまま疎明資料とすることでスピーディーな令状発付と、令状の執行による捜索が可能となる。したがって、録音録画の緊急性も認められる(②を具備)。
ウ また録音録画方法は、かばんに隠したカメラによるものであり、甲に威圧を与えたり、甲の名誉(法196条参照)を害する方法ではないことから相当性も認められる(③を具備)。
(3)以上によりKによるAを介した録音録画は適法である。
以上

補足説明です。
・実務家ではないので、あてはめは、あくまで受験生としての感覚に従ったものです。問題提起とあてはめ以外は、ほぼ過去問答案のコピペです(こんなことするから「金太郎飴答案」などと言われちゃうんですね。すいません
)。
・応用部分として考えられるのは、一般人を介した捜査である点、録音と録画で同じ基準でよいのかという点、事例2の使い方ですが、とくにそれら記述がなくても基本がしっかりできていればAになり得ると思います。ただ、応用問題は解けなくても「問題意識は持っていた」ということを何らかの方法で示すべきです。
その点、試作答案は良くありません。
・あてはめの充実度の差で評価がAかBに分かれる問題だと思います。
あと、この問題には出てきませんが、伝聞証拠が問題になるときに、伝聞法則の定義、趣旨、例外という一連の流れは、はしょらずに手厚く書くべきです。自分の旧司の経験では、この部分に、かなり大きな配点があるのは間違いないと思います。

2012年9月26日 (水)

平成24年度司法試験予備試験論文試験(民法)試作答案

以下の答案は本年度予備試験の直後に試作し、mixiのコミュニティーにアップしたものです。その後に構成や内容の正しさを全く検証しておらず、出題の趣旨を外した間違いだらけのシロモノだと思います。あくまで基本とそれ以外を峻別する材料としてのみ見てください。

「基本」部分を色づけします。ここに含まれる基本の類型は①基本典型論点②当事者間の利益調整③条文操作です。

第1 設問1(1)
 BはAのCに対する債務の物上保証人であり、Cに対し本問の主張をすることができるかは、物上保証人に催告・検索の抗弁権(452条、453条)が認められるかにかかわる。
 1 民法は同抗弁権を保証人について認めている。
その趣旨は、保証人が主債務者と同様の債務を負担し、全財産が責任財産になるという重い責任を負うことから、債権者に対し先に主債務者に執行すべき旨の抗弁権を認め、もって保証人の利益を保護する点にある。
 2 しかし、物上保証人は、債務を負わず担保権について責任を負うのみである。また、責任財産となるのは担保目的物のみであり、保証人ほど責任は重くない。したがって保証人ほど利益保護の必要性が認められないので
、452条、453条の類推適用はなく、催告・検索の抗弁権は認められないと解する。
 3 
かく解しても、物上保証人は第三者弁済(474条2項)により主債務を消滅させて強制執行を免れることもできるので、特に酷とはいえない。
 4 以上によりBは、本問の主張をすることはできない。
第2 設問1(2)
 1 前段
 BがAにあらかじめ求償権を行使できるかは、委託を受けた保証人に事前求償権を認めた460条が、物上保証人に類推適用されるかにかかわる。
 (1)
委託を受けた保証人は、主債務の弁済について委任を受けた者であるから、460条は、委託事務処理費用の前払い請求権(649条)としての性質を有する。
 (2)これに対し物上保証人は担保設定義務を負うのみで、主債務の弁済について委任を受けた者ではない。そこで、目的物の所有権を失った場合には求償権を有するものの(372条、351条)、事前求償権までは認められないと解する
。よって460条は物上保証人に類推適用されない。
 かく解しても
物上保証人の責任は、担保目的物の価額に限定されるので、事後求償で救済される可能性は保証人より高いと考えられる。
 (3)以上からBは、あらかじめAに求償権を行使できない。
2 後段
 では乙建物が売却された場合はどうか。
 (1)この場合、Cは
抵当権「の実行によって」目的物の「所有権を失ったとき」に当たる(351条)。したがって、Aに求償権を行使できる。
 (2)この点は、
委託を受けた保証人が保証債務を履行した場合と同様である(459条1項)。理由は以下の通りである。
 たしかに物上保証人は主債務弁済の委託を受けた者ではないので、その求償権の性質は、委託事務処理費用償還請求権(649条、650条)の性質を有する保証人の求償権とは異なる。しかし、抵当権の実行も主債務の弁済に充当され、保証人の弁済と同様に代位できるとされている(500条)。とすれば、抵当権の実行の効果も、委託を受けた保証人の弁済と同じであり、保証人と同様に扱うべきだからである。
第3 設問2
 1 EのBに対する権利主張
(1)EはAの子であり、
Aの地位を相続するが(896条前段)が、AB間の贈与は書面で行われ、引き渡しもなされているので撤回(550条)はできない。
(2)ただ、相続開始1年以内にAが贈与した財産につき
遺留分を有する(1028条2号、1029条1項、1030条前段)。そこで甲土地についてBに対し遺留分減殺請求権(1031条)を主張することできる
 2 甲土地の所有権についての法律関係
 (1)被相続人たるAの財産は甲土地のみである一方、債務はない。したがって遺留分の総体は甲土地の2分の1となる。
 そしてEは唯一の相続人であるから、遺留分の総体すべてがAの権利となる。この点、遺留分減殺請求の性質は形成権と解され、Eは請求権の行使により甲土地の所有権について2分の1の持ち分を有する。
 (2)もっとも甲土地は不可分であることから、
Bが返還に応じない場合、原則として所有権は、EとBの共有(249条)となる。
 (3)ただし、Bが
価額弁償を選択した場合は、返還義務を免れる(1041条1項)。この場合、返還義務を免れることの反射的効果から、目的物全体の贈与の効果をそのまま認め、甲土地はBが単独で所有権を有することになる。
 (3)
共有となる場合、Eは持ち分に基づいて甲土地の明渡しをBに請求することはできない。なぜなら各共有者は全部について持ち分に応じた使用が認められるからである(249条)。
 (4)もっとも
Eは、持ち分に応じた使用利益をBに請求することができる(703条、704条)。
以上

以下、補足説明です
設問1(1)と(2)前段は、予備校答練のような論点主義的な問題のようにみえます。典型論点ですから、きちんと、しっかり論じる必要があります。
また、民法特有の基本として、権利を否定される当事者Bへの配慮が必要だと思います(指摘が当を得ているかどうかはともかく、配慮している姿勢を見せることがポイント。ただし権利を否定される側が同情の余地のない悪人であれば、あえて書く必要ありません)。

設問1(2)後段の、理由付きで比較する部分は、基本ではなく応用部分かなあという気がします。抵当権実行後の物上保証人に求償権が認められるなんて当たり前すぎて、その理由を深く考えたことのある人は少ないと思います。こうした応用部分や未知の論点は、基本から自分なりに考えれば、そこそこ点数が入ると思っています。

設問2は、遺留分減殺請求権を深く勉強している人は、ほとんどいないでしょうから、どれだけ多く条文を探し出して、その操作ができたかどうかに尽きると思います。
それと、明け渡し請求を否定されるEへの配慮が必要だと思います。

2012年9月24日 (月)

司法試験(予備試験)答案で重要な「基本」とは何か

mixiで運営しているコミュニティー「現役社会人の司法試験予備試験」で、メンバーの方から「司法試験答案で基本(基礎)が重要であることは分かっているけど、何が基本かが分かりにくい」と質問を受けたことがあります。

司法試験(予備試験)における基本の重要性は、いまさら言うまでもありません。旧司の経験では「基本」部分にかなり大きな配点があり、ここをしっかり、きちんと書くだけで相対的に上位答案に浮上します。裏を返せば、実際には意外と多くの人が「基本」を十分に書けていない、ということになります。

でも、ふだん真剣に勉強している人であれば、「基本」が分かっていない、ということはふつうありません。
それなのに点数が上がらない原因は、
①「基本」と「基本以外」の峻別ができない。
(だから基本の記述を落とす。あるいは基本の記述が薄くなる一方で、基本以外の部分をだらだらと長く書いてしまう)
②「基本」を盤石に理解していないので、正確にきちんと表現できない
(だから高い配点にもかかわらず低い点数しかもらえない)
という点にあると思います。

このうち②は繰り返し正確な表現を覚えて、ペンを持つ手が勝手に動くくらいに自分の体に覚え込ませるしかありません。

問題は、冒頭の質問と重なる①の点です。
ここは一概には言えず、演習を数多くこなして感覚として身に付けるしかないと思います。
でも、それでは質問の答えになっていませんから、あえて「基本」とは何かを挙げてみると、
①科目全体、各単元、適用場面などを支配する原理原則(例えば権力分立、弁論主義、令状主義など)
②基本的典型的な論点・概念・定義、重要判例の定番フレーズ(例えば「第三者」の意義、故意責任の本質、司法権の意義、「法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整」など)
③条文と、その操作
などを挙げることができます。

それと、以上のような「一般論としての基本」に加えて
「科目特有の基本」というものもあります。
例えば憲法なら対立する利益(人権)、権限(統治)の調整
民法なら当事者間の利益調整、結論の妥当性
刑訴なら人権保障と真実発見との調整
などです。

後日のエントリーで具体的な答案をみながら「基本」とは何か、を見ていきたいと思います。

2012年9月21日 (金)

司法試験成績順位2000番のレベル(ただし旧試験)

今年の司法試験合格者数に関連して「坂野弁護士ブログ」のエントリーで次のよう記述がありました。
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2012/09/10.html

「だが、私は実感として思うのだ。私は、受験開始3年目で2000番台には、入っていたはずだ。そこから合格するまで、丙案(若手優遇策)の犠牲者になったこともあり、7年かかった。合格してから振り返ると、2000番台の実力なんて、到底弁護士になるための基礎の基礎すら出来ていないレベルだった。」

私も、司法試験初挑戦だった平成XX年度論文試験の成績表を確認してみました。

Photo

総合C評価で、順位は1,501~2,000番でした。

憲、民、刑の「上三法」が全部G。

当時は 法務省が詳しい合否判定基準を公開しておらず、Gが1科目でもあれば不合格、という噂もありました。
でも、成績区分によると、3,501番以下は全部、G評価です。この年の論文受験者数からみると、Fまでで上位58%くらいですから、そんな高い足きり設定はちょっと考えられません。

ちなみに,順位2,000番は、この年の総受験者数に対し上位7%強。
もし、この年が年間2000人合格だったら、自分は

フルタイムで働きながら勉強1年半で、一発合格を果たしていたかもしれません。

でも、当時この成績で、法曹になろうなんて、あまりにおこがましいですね。

2012年9月17日 (月)

予備試験と法科大学院、どっちが「抜け道」か

私がいつも司法制度改革の問題点について勉強させていただいている「元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記」で紹介されているブログ「弁護士げんこでん」)では、法科大学院関係者が予備試験組を暗に「非正規軍」呼ばわりしたというエピソードが載っています。

たしかに予備試験は「バイパス」「抜け道」などと指摘され、あたかも正規のルートではないかのごとく言われることがあります。

でも、かつて唯一のルートだった旧司法試験を受け続けていた自分とすれば、むしろ「ローの方が抜け道で、バイパスじゃないの?」という思いもあります。

ヤフーの辞書によると、「バイパス」とは「交通量の多い市街地の道路の混雑を避け、車を迂回(うかい)させるために設ける道路」、「抜け道」とは「本道をはずれた近道。間道。『―を使って先まわりする』」だそうです。

いずれも、「渋滞などの障害を避けて目的地まで早く到達するルート」という意味で使われていると思います。また「通行料金を払った者や、その近道を知っている者だけが利用できる特権」というような意味も含まれている気がします。

「早いルート」という点からみると、たしかに今回、大学生が26人合格しました。でも、全体(平成23年度予備試験出願者8,971人、受験者6,477人)からすればごく一部です。また、予備試験合格率が(少なくとも昨年までは)相当低く抑えられ、狭き門になっています。とすると予備ルートで合格という目的地に到達するまでの道のりは、一般的には新司よりも長く、障害のあるルートに思えます。

「特権」という点からみると、特別な費用を払って修了すれば、従前より高い合格率の司法試験を受験できるのは法科大学院の方です。一方、予備試験は誰にも門戸が開かれた制度ですから、特権的性質はありません。

そうすると「バイパス」「抜け道」という予備試験に対する指摘は、法曹としての高い質を養成するための特別なプロセスを経ていない、という点に向けられたものだと思います。ただ、そのような有意義なプロセスは本来、障害物でも何でもないでしょうから、予備試験に対する「バイパス」「抜け道」という評価は、一般的な用例とはちょっと違うような気がします。

あえて言うなら何でしょう。「飛び級」制度かなあ、などと考えましたが、ふさわしい言葉が見つかりませんでした。
素直に、受験機会の公平・平等を維持するために法科大学院とは別に設けられたルート、と考えればいいのではないか・・・。

と、いろいろ考えていたら予備試験は、自動車運転免許を取得するために、教習所に通わず運転免許試験場で直接受験するのに似ているなあと思いました。「一発試験」というのだそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E7%99%BA%E8%A9%A6%E9%A8%93
「最大のメリットは自動車教習所に通うことなく、運転免許が取得可能であること。つまり、教習所の教習料金および教習に関わる時間を節約できることである。しかしながら、運転免許試験場における技能試験(一発試験)は、指定自動車教習所の技能検定(審査・検定)に比較して合格点は同一であるものの採点基準が非常に厳格であるため、合格率はかなり低く難関である。」

「教習所」を「法科大学院」に、「運転免許」を「司法試験受験資格」に、などと読み替えると、うーん、そっくりですねえ。

余談ですが、私は自動二輪、仮免許、普通免許をすべて「一発試験」方式で取得しました。
当時、教習所経由で16~20万円ほどかかった普通免許取得費用は、3万円程度で済んだと記憶しています。ほとんどが受験料です。ただし何回も落ちましたから、取得までの期間は初回受験から1年近くかかりました。
この方法を選んだのは、単に当時、教習所に通うお金と時間がなかったからで、「抜け道」という認識はありませんでした。

2012年9月16日 (日)

東大、法政相手に勝利の「瞬間」目前

今日の東大は法政相手に6回まで4-2でリード。

勝利の「瞬間」目前でしたが、その後、逆転されてしまいました。

20120916

試合終了時、東大ファンから「バッティングがんばれ」と

檄が飛んでいましたが、

法政から計11安打5得点ですから、打撃はそんなに悪くないと思います。

それにしても惜しい試合でした。

次に期待したいです

2012年9月15日 (土)

学生の予備試験受験を禁止する?

司法試験結果発表直後の記事「平成24年度の新司法試験の結果」
で、今年の予備試験合格者数の増減を占う要素として

(1)予備試験組の高い合格率→プラスに働く要素
(2)若年層、大学生の多さ→マイナスに働く要素

と分析しました。

9月14日付の朝日新聞によると、(1)について法務省幹部が「今後は予備試験の合格者が増える方向に調整されるはずだ」とみており、現実に増やされる方向になるのは間違いなさそうです。

一方(2)についても、同紙によれば高井美穂文部科学副大臣が、予備試験の本来の趣旨に合致しているかどうかの検証の必要性を指摘しており、危惧した通り合格者抑制の口実に使われる方向になりそうです。

この「検証」について副大臣は具体的にどんなことを言っているのか見てみました。http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1325532.htm

高木副大臣「予備試験がそもそも経済的事情とかその他の事情によって、法科大学院に行けないという方々のために、ある種、開かれた制度であるというふうに、作ったものでありますが、この本来の趣旨にあった方が受けているのか、本来の趣旨を踏まえたうえで運用がされているのかどうか、しっかり検証しなくてはならないというふうに、あらためて感じているところであります。つまり今回、法科大学院在学中の学生さんも受けているということもあったり、大学学部に在籍中の方が受けているということもありますので、そもそも経済的事情によって行けない方であったり、何かほかの事情で、という方のためのものに本当になっているのかどうか、ちょっと属性の分析といいますか、受けた方々の背景分析をしっかりした上で、議論を重ねたいと思っています」

「受けた方々」というのが予備組の司法試験受験生をいうのか、合格者をいうのか分かりませんが、予備試験合格者は文科省から経済的事情について事情聴取されるかもしれません。あるいは、司法試験出願書類に自分や親の年収を記載する欄が設けられたりして。

さらに高木副大臣は記者に「法科大学院生、大学生の予備試験受験を禁止する方向もありうるのか?」と問われて、こう答えています。
「それも含めて、今度の検討会議でしっかり議論していかなくてはならない、と思っています。」

学生の受験禁止が、法科大学院推進派で占められている法曹養成制度検討会議で議論される、というのは、ちょっと嫌な予感がします。若年、学生合格者が多かったことは、予備試験合格者抑制の口実にされるだろうとは思っていましたが、学生の受験禁止の議論にまで踏み込むことになるとは思いもしませんでした。法科大学院制度を守るために、とことん参入規制を強化する、という方向になるのでしょうか。

それと、予備試験に関して法務省が開示する情報には、やや偏りを感じます。
合格者の職業別、年齢別の情報はバイパス(抜け道)利用の検証のために開示したのでしょう。
ならば法科大学院修了合格者についても、大学院修学前の職業別等の情報を開示するのが筋でしょう。もちろん「社会人等としての経験を積んだ者などを幅広く受け入れ、多様なバックグラウンドを有する法曹を輩出して」いるかどうかを検証するためです。既修、未修の区別だけでは検証できません。
でも、法科大学院制度がその理念を実現しているかどうかを検証できるデータはなかなか出てきません。

2012年9月13日 (木)

今年の司法試験で社会人の予備試験合格者は善戦した

今年の新司法試験で予備試験合格組の有職者(社会人)は、受験者25人に対し合格者10人(合格率40%)。一方、大学生は同28人中、同26人(同93%)。大学生との対比では、有職者の苦戦が目立つ結果となりました(予備試験参考情報)。

予備試験の科目が旧司法試験より大幅に増えた上、新司では新たに選択科目の勉強を余儀なくされたことが、勉強時間の捻出に苦労する社会人にとって大きな負担になったと推察されます。

ただ、現役社会人が勉強環境で劣勢なのは明らかですから、旧司でも社会人の対受験者合格率は、全体合格率よりかなり低かったと思います。また、大学生の合格者が増えたのも旧司末期からの傾向です(平成21年度は合格者数92人中、大学生25人平成22年度は合格者59人中、大学生23人)。

このように従来の社会人の苦戦に加え、大学生のテスト強さが顕著な傾向になる中で、今回の社会人の予備試験合格者はかなり善戦したと思います。
去年11月の予備試験合格発表から本試験まで半年しかないのに、少ない勉強時間で新たに選択科目を仕上げ、予備試験とはかなり傾向が異なる新司の論文試験に対応するのは至難のわざです(予備合格者の短答通過率が高かったのは、予備試験と傾向が近似していたからだと思います)。それでも社会人の対受験者合格率は40%で、
法科大学院別で7位の中央ロー(41・31%)に匹敵する成績です。のみならず上位ローと呼ばれている早稲田ロー、名大ロー、千葉大ローを上回っています

今年、残念ながら結果が出なかった有職者の方は、新司への対応が間に合わなかっただけで、かなりの実力者と推測します。また、わずか半年の準備期間で、受け控えをしなかったチャレンジ精神も素晴らしいと思います。

来年度は入念に新司対策を施した上での捲土重来を期待、いや確信しています。

2012年9月12日 (水)

2年前の夏に感じた日弁連の欺瞞的姿勢

以前の記事「給費制のこと(1)」、 「給費制のこと(2)」で、給費制維持の理由として主張される「裕福な人しか法律家になれない」という性質は、そもそも法科大学院制度につきまとっていたはずだ、と指摘しました。

給費制に絡む同様の主張をあまり見かけないと思っていましたが、私の探索力不足でした。
2年前にずばり指摘しているブログがありました。

弁護士のため息「ロースクール制こそが「お金持ちしか法律家になれない」原因じゃないの?」
http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-47a6.html

私が日弁連に対し「給費制維持は法科大学院制度の廃止とセットで訴えなければ市民の理解を得られない」という意見を送ったのと、ちょうど同じころの記事です。

この記事にコメントを寄せた「ゆたか」さんという方の話に感銘を受けました。
あの「最後の旧司法試験」を受けた者にしか分からない、憤りや無念の気持ちが伝わってきます。

あの年「今年ダメなら法曹への道をあきらめる」という覚悟で臨んだ人は多かったと思います。私もその1人でした。「ゆたか」さんほど深刻な問題を抱えていたわけではありませんが、家族がいる身で会社を辞めてローに行くことはとてもできないと考えていました。

5月の択一試験の時は、試験終了が告げられた午後5時、「もう二度とこの場には来られない」と思ったら涙がとまりませんでした。

灼熱の猛暑の中で行われた論文試験では、受験生から例年にない気迫が感じられました。最後の刑訴の試験が終わり、試験官に「退出して結構です」と言われても、しばらくは茫然として、席から立ち上がれませんでした。10分ほどして、ようやく立ち上がって教室を見回すと、まだ着席したまま、感慨にふけっているような人が何人かいました。

生涯忘れられないあの年の夏、給費制維持運動をめぐる日弁連の欺瞞的姿勢に憤っていた旧司受験生が、私のほかにもいたことは、とても感慨深いです。

※追記(2012年10月13日)
給費制に絡む同様の主張を、ほぼ同時期なさっている方が他にもいらっしゃいました。私の探索不足でした。

弁護士 猪野亨のブログ
「札幌弁護士会会報2010年9月号」

http://inotoru.dtiblog.com/blog-entry-189.html

2012年9月11日 (火)

平成24年度の新司法試験の結果

「新司法試験の合格率25% 「年3000人目標」届かず」(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1102C_R10C12A9000000/

「法務省は11日、法科大学院修了者が対象となる2012年の新司法試験で2102人が合格したと発表した。昨年より39人増えたものの、政府が02年に閣議決定した「10年ごろに年間合格者数3千人程度」との目標を今年も大幅に下回った」(記事より引用)

合格者数は昨年よりわずかですが、増えました。減る可能性が高いだろう、という私の予想は外れました。総務省の政策評価など、外部からの減員圧力にもかかわらず合格者数を維持したことは、法科大学院を中核とする法曹養成制度を絶対に維持していくという確固たる意思のあらわれだと思います。

一方、予備試験合格者の合格率は受験者ベースで68・2%となり、法科大学院トップの一橋の57・0%を上回りました。こちらは予想どおりでした。ただ、注目していた予備試験合格者の成績順位に関する資料は、残念ながら発表されませんでした。

予備試験組の合格率が、全体合格率の25%より圧倒的に高くなった結果、今年の予備試験合格者を去年より大幅に増やさなければ、閣議決定された規制改革推進のための3カ年計画(「予備試験合格者数について、事後的には、資格試験としての予備試験のあるべき運用にも配意しながら、予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験合格者の割合とを均衡させるとともに、予備試験合格者数が絞られることで実質的に予備試験受験者が法科大学院を修了する者と比べて、本試験受験の機会において不利に扱われることのないようにする」)に反することになると思います。

一方、予備試験合格者参考情報をみると、
年齢別では20~24歳が合格者58人中30人を占めています。
この中に最年少21歳の合格者がいると思われます。
また、職業別では大学生が26人。
これらは、経済的事情等で法科大学院に進学できない者のための例外措置とする予備試験の趣旨に外れる結果、とみえなくもありません。もちろん個々には経済的事情があるかもしれませんが、「バイバス利用」と解釈されて予備試験合格者数を抑制する事情の一つに使われる可能性があります。

なお、有職者は計10人。大変な苦労をされたと思います。心から敬意を表したいです。

以上、取り急ぎ、雑ぱくに結果をみて今年の予備試験論文合格者数を占うと

予備試験組の高い合格率→プラスに働く要素
若年層、大学生の多さ→マイナスに働く要素

と考えることができそうです。

去年の123人より増えるのは間違いないと思いますが、どれくらい増えるか、現時点で予測は難しいです。

2012年9月10日 (月)

国の「兵糧攻め」に大学側が対抗する方法

法科大学院、最大25校に補助金減額の可能性(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120907-OYT1T00788.htm

「文部科学省は7日、定員割れや司法試験の合格実績が低迷する法科大学院に撤退・統合を促す新たな方針を発表した。」(記事から引用)

瀕死寸前のロースクールに対し、国が「兵糧攻め」で、とどめを刺そうという狙いに見えます。

これに対し撤退する大学院側は、国へどんな意趣返しができるが考えてみました。

例えば、法学部で予備試験受験のための専門教育をするなんてどうでしょう。さすがに予備校と同じような受験指導やカリキュラムは組めないでしょうけど、かつて旧司時代にあった法職課程のような方法なら、なんとかいけるのでは。

と、考えてみましたが、予備試験の「バイパス」としての利用そのものですから、法科大学院を中核とする法曹養成制度の趣旨に真っ向から反し、文部科学省の逆鱗に触れるのは確実でしょう。当然、補助金にも影響するでしょう。

結局、非現実的な話であり、どの大学もそんな「自殺行為」はしないでしょう。

でも、そうだとすると「大学の自治」って一体なんだろう、と考えてしまいます。

東大の勝利がみたい!

時々、東京六大学野球の観戦に神宮球場へ行きます。

20120909_164107

目的は

東大が勝つ瞬間を生で見たい!

ほとんど、それだけです。

9日は早稲田のスーパールーキー、吉永投手から3点奪いました。

「瞬間」は近い気がします。

ところで土日の2日間で4大学の応援を見ましたが、

応援団は、団長の迫力、団員の動きのキレ具合からみて

東大が一番良かったですね。

2012年9月 7日 (金)

バックグラウンドの多様性の検証(入口編)

以前のエントリー「バックグラウンドの多様性は実現したのか」で、新制度により多様性が図られたかどうかの検証は必須、と指摘しました。検証した資料が既にあるのかもしれませんが、探索できなかったので、独自に検証を試みました。

まず、「入口」での多様性、すなわち法曹を目指そうとする人の多様性を見てみます。
旧司法試験については短答式(択一式)試験の職業別受験者数の資料がありました(H16~19年H18~22年)。

一方、新司法試験で法曹を目指そうとする人については、法科大学院入学者のデータがありました。ただ、これは社会人か否かという大ざっぱな区別しかありません(参考資料の4ページ)。そこで旧試験の資料にある職業の項目から、社会人と呼べる項目の数字を足し上げて、「社会人」の受験者数とみなすことにしました。

その結果、社会人の数と、受験者または入学者全体に占める割合(カッコ内)は以下のようになりました。
     
ロー入学者  旧試受験者
H16  2,792(48.4%)  10,667(24.6%)
H17  2,091(37.7%)   10.084(25.6%)
H18  1,925(33.3%)      8,880(29,4%)
H19  1,834(32.1%)     7,650(32,8%)
H20  1,609(29.8%)     6,532(34.9%)
H21  1,298(26.8%)     5,667(37.2%)
H22   993(24.1%)     4,998(37.8%)
H23   763(21.1%)
H24   689(21.9%)

両者のデータは、法曹を目指そうとする人という点で共通するとしても、段階が異なるので、数、割合を同一年度で比較することはせず、それぞれの流れを見ていきます。

ロー初年度のH16年は、高合格率への期待などもあってか、入学者の半数近くを社会人が占めています。翌17年は急落していますが、新司法試験の結果も出ていない段階で激減した理由はよく分かりません。その後は数、割合ともどんどん減り続けています。
合格率が当初の想定より低迷し続けたことや就職難で、仕事をやめてまでローに進むのはハイリスク、という認識が強まった可能性があります。

一方、旧司法試験は、同様に数が減り続ける一方、割合は増え続けていきます。数が減っていくのは、旧から新への移行に伴い、ローへの進路変更や撤退する人が出たためと思われ、全体的な傾向です。
その中で割合が増えているということは、社会人は、それ以外の人と比べてローへの進路変更や撤退者が少なかった、つまり、社会人は旧司にこだわった人が多かった、ということでしょうか。

H22年に旧司が修了し、どうしても法曹になりたい人はローに流れると思われましたが、H23年はロー入学者の社会人の数は増えませんでした。旧司の社会人の多くは撤退したか予備試験に流れたと考えられます。

以上、私の考えるところによれば、少なくとも「入口」ではロー制度より旧司の方が、社会人経験者など多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れるという理念に適っていたと思います。

もっとも、試験というフィルターを通した受かりやすさの違いによっては、新制度の方が多様性に優れているという結果になり得ます。そこで「出口」、すなわち合格者ないし司法修習生のバックグラウンドの検証が必要になります。

2012年9月 5日 (水)

合格者1000人で難易度は上がるのか

各種ブログで紹介されている弁護士有志による提言「法曹人口と法曹養成の危機打開のための提言」の(前編)(後編)を読みました。

提言の趣旨は
1 司法試験合格者数を適正規模(年間1000人以下)にする。
2 司法試験の受験資格の制限(法科大学院修了、5年以内3回受験)を撤廃する。
3 司法修習の前期修習及び給費制を復活させる。
です。

2,3については全面的に賛成ですが、
1については、受験生にはちょっとキツイかなあ、というのが初めの印象でした。
「合格者3000人」という政府目標が形骸化しているにせよ、正式に撤回されたわけではない状況下で法曹を目指そうと決めた人からすれば、仮に政府が突然、目標値を従来の3分の1以下に変更したら、ちょっとだまされた気持ちになるかもしれません。

ただ、私のとても長い・・orz・・受験経験からすると、合格者数が大きく減ったとしても、合格の難易度が極端に上がることはないと思います。

旧司法試験では、新司法試験との並行運用が始まった平成18年度以降、受験者の減少ペースを超えて合格者が減らされ、合格率もどんどん下がっていきました。でも合格の難易度は、合格倍率の推移ほどの変化はなかった、という印象があります。これはほぼ私の主観と推測によるもので、客観的な根拠と呼べるものはないのですが、各年の再現答案の読み比べや、自分の論文試験の順位からみて、そう感じました。

新司法試験でも、合格者数の変化にかかわらず、一定レベルの答案を書けたかどうかで合否が決まり、その「一定レベル」は、あまり変わらないと、思っています。

思えば司法試験は、旧司時代から制度がコロコロと変わりました。そのたびに受験生は翻弄されてきましたが、制度の変化にとらわれず、淡々と学力を身に付けていくのが合格への早道だと確信しています。

2012年9月 3日 (月)

給費制の問題は司法的救済の途を探るべき~給費制のこと(3)

では、これから給費制の復活に向けて、どういう手段をとっていけば道が開けていくでしょうか。

「法曹養成制度検討会議」のメンバーが、「法曹の養成に関するフォーラム」メンバーのほぼ横滑りになったことで、政治に期待するのは、ほぼ絶望的になったといえるでしょう(2010年秋に土壇場で1年間、延長が決まったときのように、何がしかの政治的な駆け引きで突然、復活する可能性はなきにしもあらずです)。

日弁連があてにならないのは既に述べた通り。

市民運動の盛り上がりにも期待できないでしょう。市民の利害に直接関わらない問題だし、貸与制が原因で誰もが被害者になり得る重大な弊害が発生することも考えにくいので、例えば脱原発運動のような市民運動のうねりが湧き上がるとも思えません。

このままズルズルと貸与制が進んでいくほど、復活は難しくなると思います。なぜなら、貸与制だった元修習生への遡及的給付に必要な費用が増え続けていくため、財源問題がネックになる恐れがどんどん高まっていくからです。

そこで地道に法改正を求める手段はもう限界に来ていると思います。

そう考えると、あとは司法的救済に解決の途を求めるしかないのでは、と思います。
すなわち、原告適格のある方が権利侵害を主張して貸与制の違憲違法を裁判で争う、という方法です。
私は実務家ではないので素人考えになりますが、無給+兼業禁止(修習専念義務)について職業選択の自由、勤労の権利、幸福追求権等の侵害を主張しうるのではないかと思うのです。

この方法だと最後は、日弁連に対し2度にわたって質問状を送り、貸与制を容認した最高裁と対峙しなければなりませんし、合憲適法判決が確定しまうリスクもあります。でももう、ほかに途がないような気がするのです。

2012年9月 2日 (日)

給費制のこと(2)

旧司法試験論文試験が終わって間もなく、給費制廃止反対の主張方法について早速、日弁連に意見することにしました。

意見投稿はメールでは受け付ておらず、ウェブのブラウザー上のフォームに従って入力する形式でした。以下のような趣旨の意見を申し述べました。

「給費制存続に異論はなく、日弁連の活動を高く評価します。ただ、そもそも修習以前の法科大学院の費用が大きな負担になっているのが実情のようです。ならば、給費制存続は法科大学院制度の廃止とセットで訴えなければ市民の理解は得られないのではないでしょうか」

当時は財政負担の問題は念頭にありませんでした。財政負担の問題というのは、法科大学院への補助金に回す資金を給費に回せば、財政負担を増やさずに費用を賄えるだろう、という理屈です。この財源の観点から見ても、法科大学院の廃止とセットでなければ市民の理解は得られにくいと思います。

入力フォームに従って実名と連絡先も伝えました。意見に対し何がしかの返答があるのかなあ、と思っていました。しかし、あれからかなり期間が経過しましたが、なしのつぶてです。日弁連の主張にも変化はありませんでした。

今から思えば、日弁連の対応は当然でした。ロー制度を組織として推進しているのに、ロー廃止なんか主張するはずがなかったのです。

ただ、ローの改廃に踏み込まない給費制存続の主張が説得力を持たないことは、さすがに当初から分かっていたでしょうから、今後、日弁連は財政負担の問題に関連してローの統廃合推進の主張を給費制問題に絡めてくる可能性があります。もっとも、それだけでは修習生の経済的負担の点は解決できませんが。

2012年9月 1日 (土)

給費制のこと(1)

司法修習生の給費制については廃止反対に全く異論ありません。
運動に携わっている方々には心から敬意を表したいです。

でも、日弁連などによる廃止反対運動に対しては素直に乗っかれない、モニョっとした気分があります。

時は何年か前にさかのぼります。
旧司論文試験まで2週間に迫った夏の日。
私は、ある大学の図書館で自習していました。

休憩がてらキャンパスをぶらついていたら、給費制廃止反対集会の案内板をたまたま目にしました。
主催は当地の弁護士会だったと思います。ビギナーズネットの方や、当時の日弁連会長も来ていました。

会場をのぞいてみました。
現役法科大学院生や、大学院修了生が次々と登壇して経済的な窮状、将来への不安などを訴えているところでした。既に1000万円の借金をしている学生もいる、という話も出ました。
「法科大学院生も苦労しているんだなあ」と認識を新たにしながら話を聞いていました。

会場でいただいた資料の中に新聞記事のコピーがあり、読んでみると、給費制廃止反対の理由として「裕福な人しか法律家になれないはおかしい」とする日弁連側の主張が書かれていました。

ん?何を今さら?

というのが当時の私の正直な感想でした。

「裕福な人しか法律家になれない―」
これは私が法科大学院導入に当たって抱いた感想と同じです。
高い学費の大学院通いを2,3年も強制させる制度。
そこそこの経済力と資金調達力がなければ簡単には目指せません。お金がなければ法曹になれない、という性質は既に法科大学院制度導入時から付きまとっていたはずです。
その時はなぜ、同じ理由で反対しなかったのか―。

集会はいったん休憩に入った後、日弁連会長らによるシンポの設営に入りました。釈然としない気持ちのまま私は席を立って勉強に戻りました。

しばらくすると、モヤっとした感情がなぜか怒りの気持ちに変わってきました。
「絶対に旧司で受かってやる!」という強い信念が沸々と湧き上がり、論文本番までの2週間、死に物狂いで勉強しました。

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