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2012年11月 4日 (日)

田中文科相の大学設置不認可と司法制度改革

田中真紀子文部科学大臣による3大学新設の不認可が物議を醸していますが、司法制度改革とリンクして考えさせられる問題がいくつかあります。

1・大学(院)の「数」と「質」の関係

少子化などに伴う大学進学志望者の「全入時代」にあって、今回の設置基準厳格化は、大学の「数」を抑制し、定員割れなどを解消して「質」の確保を目指す狙いがあるようです。
この点は、法科大学院の統廃合の議論と軸を一にします。たとえば毎日新聞2012年9月17日の社説は「
今春学生を募集した73校のうち35校の入学者が定員の半数に満たず、20校は10人未満だった。こうした環境で十分な教育の質が保てるのか疑問だ」と指摘して法科大学院の統廃合を加速するよう求めています。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120917k0000m070105000c.html
(もっとも同紙は11月3日付社説で今回の設置不認可について「数が多いから学力が落ちるという論法なら、数を絞れば学力も上がるということになるが、一面的だろう」と批判しているので、ちょっと、ちぐはぐです。
http://mainichi.jp/opinion/news/20121103k0000m070135000c.html

ただ、大学と法科大学院とでは、「数」と「質」の関係が微妙に違うと思います。
高卒後すぐに海外留学するなどの例外を除けば、勉学優秀な人は、ほとんど国内の大学に進みます。そうした中で大学の「数」が絞られれば、競争性がより高まり、全体的な大学進学者の「質」も高まると思われます。
これに対し、法科大学院は、最近の法曹の不人気から、優秀な人がこぞって進学を目指す風潮はなくなりました。いまでは優秀な人の相当数は他の進路を目指すと思われますから、法科大学院の「数」を減らしたところで学生の「質」が上がることはあまり期待できません(もっとも教員が淘汰されて、教員の質は上がるかもしれません。でも法曹の不人気で法科大学院の社会的ステータスが下がっていけば、優秀な教員もどんどん離れていく可能性はあります)。

2・市場原理に基づく淘汰の問題

この問題は1・の問題ともちょっと関連しますが別項目にしました。

大学新設は、規制緩和の流れを受けた中教審が2002年にそれまでの抑制方針の撤廃を宣言し、これをきっかけに文科省が従来の事前規制型から事後規制型へと転換したそうです(11月3日付朝日新聞朝刊)。
司法制度改革審議会の意見書をきっかけに法曹人口拡大路線が進んだのと同様の流れです。

一昨日、テレビニュースをみていたら、識者の方が「大学設置を許可して、あとは淘汰にまかせればよい」という趣旨のコメントをして、田中大臣の今回の措置に批判的な見方を示していました。
こうした市場原理による淘汰論は、弁護士の増員に関してもよく耳にします。

しかし、淘汰にまかせてよいものと、淘汰にはなじまないものがあると思います。

淘汰の過程では、良いサービスを受けられなかった「被害者」(通常、消費者や依頼者がなる)の発生が不可避です。
たとえば「被害者」が、値段に比べて不味いラーメンを食べさせられた客ならば、衛生上の問題さえなければ、被害はたいしたことなく、事後回復も容易です。そこでラーメン店の営業許可を淘汰にさらしても大きな問題はありません。

では、大学、弁護士によるサービスはどうでしょうか。
いずれも、一般の人にとっては一生に一度、受けるか受けないかのサービスで、その結果(大卒資格の取得、紛争の円満な解決など)は、その人の人生を大きく左右します。しかし、乱立濫造で市場原理にまかせれば、淘汰の過程で、大学経営の破綻による学生の卒業困難や、重大な弁護過誤など、事後規制では救済が難しい被害が発生するリスクが高まります。
そうであれば、大学の設置、弁護士人口は、市場原理に基づく淘汰には、なじまないのではないかと思います。もっとも、しっかりとした
事後救済措置(卒業が危ぶまれる学生の他大学への編入・単位認定制度とか、弁護過誤被害者への社会的な補償制度など)が確立すればまた事情は変わるとは思います。

3・審議会の在り方

今回の大学設置不認可の問題で田中大臣は、認可を答申した大学設置・学校法人審議会の委員の大半が大学関係者であることを問題視したようです。

一方、司法制度改革の関係でも、法曹養成制度検討会議や中教審・法科大学院特別委員会などに法科大学院の「利害関係者」といえるような委員が名を連ねており、同様の問題意識が当てはまると思います。

今回の田中大臣による強引な手法には問題がありそうですが、今後、法科大学院に対しても「真紀子流」で切り込むのかどうか注目されます。

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