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2012年12月22日 (土)

続・法曹の多様性確保に関する行政当局の認識

以前の記事「法曹の多様性確保に関する行政当局の認識」で、法曹養成制度検討会議に事務局から提出された資料「法曹養成制度の理念と現状」中の「法曹の多様性の確保に関わる指摘の例」について、意味がよく分からない記述があると指摘しました。
その後の会議提出資料を見ても、やっぱりよく分からなかったので、法務省の担当セクションに直接問い合わせました。

まず

「法科大学院設立当初と異なり,今後,社会人として法科大学院を志願する者は,学部修了時点では法科大学院への入学を選択せず,いったん社会人になった後に法科大学院を志願する者に限られることに留意する必要がある。」

ですが、説明では、法科大学院制度が始まってから年月が経ったので、今後、社会人としてローを志望する人の多くは、学部卒業時にロー選択の機会があった、という意味だそうです。前回記事のコメント欄でschulze先生が指摘し、私も初めに解釈した通りでした。
ただ、現時点でも学部修了後、8年超の社会人がローを志願することは十分に考えられるので
「限られる」という表現は正しくありません。私が意味を理解できなかったのは、この「限られる」という表現に引っ掛かったからです。
そのことを指摘すると担当者は、当該表現が不正確だったことを暗に認めていました。社会人経験が8年を超える人が法曹を志望することは当然に想定されているだろうし、
その数も少なくないと思われることから(私もその1人でした)、この資料記載の指摘は不正確で、しかもあまり意味のない記述だといえます。

もう一つ、

「大学法学部が存続している以上,大学進学前から法曹となることを志して大学法学部に入学し,そのまま法科大学院に進む者も正当に評価されなければならない。」

という記述ですが、
担当者の説明では、多様性を強調するあまりに法学部から直にローに進んだ人が軽視されないよう、
あらためて念押しするものだそうです。
多様性を尊重する反動で、学部からローにストレートで進学する人を不当に評価する風潮が現に存在するのであれば、そのような念押しが必要かもしれません。しかし、そんな風潮は聞いたことがありませんし、社会人経験者の法曹就任を応援している私も、ストレート進学者を不当に評価しようなんて微塵も考えていません。むしろ、その優秀さと若さに、尊敬と憧れと将来への大きな期待を抱くほどです。
そうすると、これも意味がない指摘ということになります。

結局、当該資料「法曹の多様性の確保に関わる指摘の例」として挙げられた項目のうち、多様性を確保できていないことを擁護する趣旨とみられる上記2項目は、不正確もしくは無意味な記載と言っていいと思います。

法曹養成は国家百年の大計といえるかどうか分かりませんが、国家権力の一角である司法の根幹にかかわる重要事項であることに疑いありません。その在り方の検討のたたき台となる資料には、現状を正しく評価した、意味のあるデータや見解を提示してほしいと思います。資料の正確性、有意性の欠陥は、ひいては会議の結論の妥当性を揺るがすことになるでしょう。

参考
法曹養成検討会議提出資料の内容を考察した記事
「適性試験をめぐる議論に「相関係数」は有用か?」(黒猫のつぶやき)
http://blog.goo.ne.jp/9605-sak/e/625d6d557921978ad179955d6ee66d0d

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コメント

 みなさん「そんな風潮などない」と思っていらっしゃると思いますが、あるんですよ。
 法科大学院原理主義派の中には、法科大学院を復活させる手段として、法学部をなくしてしまえばよいといった意見すらあるようです。
 一部の方々にとっては、法曹としての法律的な能力資質より、とにかく多様性が大事なのです。そして、そのような方々が法曹養成制度をとりしきっていることを看過すべきではないと思います。
 その意味で、法務省担当者にはバランス感覚が備わっている、と評価すべきである思います。

なしゅ@東京様
コメントありがとうございます。
すると、当該指摘は、多様性の過度な強調にくぎを刺すものではあるけれど、その意味は、多様性が実現できていないことの言い訳ではなく、法科大学院の意義・存続を、あくまで多様性に見出そうとしている勢力(言い換えると、法科大学院の「お客さん」を専ら未修者に求めている人たち)への戒め、と理解すべきことになるんでしょうか。
なるほど、そういう視点もあるのかなあ、と思いました。でも、当該指摘は結局「ロー経由」の法学部出身者を擁護していると思われるので、ロー原理主義への戒めとしての効果はあまりないような気もします。私の理解が間違っていたらすいません。

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