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2012年12月 2日 (日)

未修者の半数は3年で修了できない

第4回法曹養成制度検討会議の事務局提出資料の4、5ページに法科大学院未修者の進級、修了年数に関するデータが載っています。

まず4ページのグラフをみると、未修者の1年から2年への進級率は平成23年で76・3%。つまり4人に1人は2年に進級できないということです。
次に5ページのグラフをみると、未修者の標準修業年限修了率、つまり3年で修了した人の割合は年々下降し、平成23年度は56・8%です。要するに
未修者のほぼ半数、2人に1人は、3年で修了できないということです。

しかも、未修者全体の半数以上は法学部出身者が占めていると推測されます。第3回会議提出資料の資料16、28ページによると、平成24年度の受験者ベースで未修者の67%は法学部出身だからです(未修者全体5,071人、うち法学部3,402人、非法学部1,669人)。とすると、非法学部出身未修者の3年での修了率は、さらに厳しくなっていると推測できます。

これでは他学部出身者が法科大学院進学に二の足を踏むのも無理ありません。その点に関し当局は「他分野からの法科大学院入学者の中には,法律学の履修に適合できない者もいるし,とりあえず入学を認めておいて厳格な成績評価でふるい落とすということも酷であり,とりわけ他分野の者にとっては,法曹を志願することのリスクが高いととらえられやすい」(前記資料)として、学生の資質の方に問題があるかのような指摘をしています。しかし、これは責任転嫁に聞こえます。学生は適性試験や入試を経ている以上、一定の資質は持ち合わせているはずですから、わずか3年間で未修者に合格レベルの法的素養を修得させようとする制度設計と、教育の質に問題があると考えるべきでしょう。

ところで、進級率・標準修業年限修了率の悪さについて、この資料は「GPA制度をはじめとする厳格な成績評価の実施により」とか「厳格な成績評価・修了認定の実施により」とか、あたかも改善の成果のように捉えているのには強烈な違和感を覚えます。制度設計や教育の質の問題をはぐらかしているように思えます。
さらに、「平成22~23年度の入学定員削減や厳格な入試による入学者数の減少により,今後修了者数はさらに大幅に減少する見込み」という記述には、あきれてものが言えません。9割近い大学院が定員割れを起こし、全体定員充足率が100%を割って7割しかないんですから、
入学定員の削減とか厳格な入試なんて、入学者数の減少とほぼ無関係であることは小学生でも分かるでしょう。この、まやかしのような記述は文部科学省の各種資料によくみられますが、法曹志願者減少の要因について法務省は、もう少し現実的な分析をしています(前記第3回会議提出資料21ページ)。

現実に起きている問題と、その要因を直視せずに、法科大学院をめぐる課題の改善なんて、できっこないと思います。

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コメント

はじめまして。初めて投稿します。

私のロースクールも留年者は多く、GPAに応じたクラス分けがあり、下のクラスは、ほとんどが純粋未修が多く、留年者も多かったです。
院長は、授業の度に、「君たちは絶対に合格しないし、卒業すらできない。うちの成績が良くないと合格できない」と言い続けましたが、成績よくて三振した人の話はしませんでした。

自分たちの教育責任を棚に挙げて、院生達への責任転換が多かったです。

これまでのロースクール関係者からの話を聞いていますと、理念の時は、雄弁ですが都合が悪くなると黙ることが多いです。

ロースクールサイドに本気で改善する気はなく、給費制廃止違憲訴訟と合わせて、ロースクール受験資格要件強制違憲訴訟の提起も検討する必要があると、感じます。

甲南ロー出身の修習生様 コメントありがとうございます。
法科大学院の内実はなかなか伺い知ることができませんので、参考になります。やはり純粋未修の方は苦労されているのですね。なんとか事態が好転するよう願うばかりです。

大学院、ですから。
義務教育と違い、教えてください、の姿勢自体が誤り。

未修だからといって、必要な能力に満たない人間は、脱落していくことは止むを得ない。

国家試験受験の要件に法科大学院卒業を強制(事実上)しているのですから、それに見合った教育を施さない(施せない)のであれば、法科大学院卒業を要件にする合理的な理由がありません。

法科大学院は、未修者つまり法的知識ゼロの人を3年で合格レベルに持っていくという前提で制度設計したはずで、既習者はオマケとされています。結局、法科大学院ではなーんにも教えることができていないことがよくわかります。
存在価値ないですね。

弁護士HARRIER先生がおっしゃるように、法曹を目指す人は法科大学院での履修を国家によって事実上「義務」付けられているので、通常の大学院とは事情が違うと思います。

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