« 法科大学院への財政支援まとめ | トップページ | 平成25年司法試験の出願状況(1月18日現在)※追記あり »

2013年1月15日 (火)

貸与申請率が下がったことの意味

以前の記事で示したとおり最高裁提供のデータによれば、66期司法修習生の貸与申請率は80.8%です。
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/h2411-f437.html
依然として相当高い割合であり、多くの「法曹の卵」が経済的に厳しい状況に置かれ、5人のうち4人もが少なくとも数百万円の借金を抱えた状態で実務に出る、という不健全な事態に変わりはありません。

一方、推移を見ると、新65期の貸与申請率が87.0%だったのに比べて少し下がっています。給費制維持・復活運動の中で修習生の窮乏が相次いで伝えられる中で、申請率が下がったのはちょっと意外でした。

その理由を考えてみました。

たしかにデータの集計時点が違うので(66期は11月、新65期は9月)、下がった、と断定するのは早計かもしれません。前に述べた通り修習開始時は申請しなかったものの途中で申請する方も現にいるからです。
そうだとしても中途申請者が今後7%も増えるとは考えにくい。

また、経済的には苦しくても貸与や借金を潔しとしない人もいるでしょう。そうした考えや借金を抱えることの不安から、生活費を貯蓄した上で修習に臨んだ方もいると思います。修習生の生活苦の実態が広まったことで、そうした人が65期より増えた可能性はあります。

あるいは、自然人2人またはオリコによる連帯保証という条件を嫌気して、親類などに借金を頼った方もいるかもしれません。

さらに推測ですが、貸与を受けなくても生活費に困らない修習生が相対的に増えた可能性が考えられます。
法科大学院制度がスタートしてからかなりの年数が経ちました。この間、現行法曹養成制度の諸問題が世間に広まりました。具体的には、法科大学院で数百万から1000万円の奨学金返済義務を抱え、近年は貸与でさらに300万円の借金を負わされた揚げ句、法曹への就職が極めて厳しい、という現実です。そこで経済的に恵まれていない人が続々と法曹をあきらめた結果、司法試験合格者の中で、富裕層の子弟など経済的に困らない人が多くを占めるようになったのではないか―。
この推測を裏付けるデータは特にありません。ただ、経済的要因が法曹志願者激減の大きな理由になっていることは法務省も認めていますから(「法曹養成制度の理念と現状」21ページ)、経済的にあまり困らない司法試験合格者が相対的に増えていることは十分に考えられます。
つまり「金持ちしか法曹になれない」という懸念が現実化しつつあるのではないか、ということです。
そうだとすると、今後、貸与申請率は毎年、下がっていくのかもしれません。
併せて現行制度で養成される法曹は多様性の理念に反して、属性が偏っていくことになるでしょう。

« 法科大学院への財政支援まとめ | トップページ | 平成25年司法試験の出願状況(1月18日現在)※追記あり »

司法制度」カテゴリの記事

コメント

挙げていらっしゃる要因が一年でこれだけ変動することの説明たりえるのかなという感じが若干します。

むしろ給費制復活運動の変化、すなわち、以前は弁護士会の活動によってもしかしてあとで全額免除になるのかもと期待=幻想を抱かせていたのが、もはやそういう希望が費えた、ということによる修習生の行動の変化ということがあるのかなと思います。

今後の増減要因の話になりますが、「今の制度では無利子だから借りておいて自分で運用したほうが経済合理的」とも聞きます。今後、デフレ脱却見通しが高まる中では余計そうなるんでしょうね。

小林様 コメントありがとうございます。
おっしゃる通り1年で6%余も下がった理由がはっきりせず、このような推測に至りました。
今日の給費制維持活動の閉塞状況からすれば、将来の借金棒引きの希望が絶たれたと考えるのも無理ないと思いますが、無利子で5年間(でしたっけ?)返済猶予という好条件以外の方法でどうやって生活費を工面するんだろうか、とも思います。
運用のメリットは今後の金利の動向次第ですけど、親か親戚(?)2人に頭を下げるか、保証料を払うという負担を考えると、どの程度お得なのか分からなくなってしまいます。

返済猶予も法科大学院の借金を考慮して猶予を受けやすくなる、という制度だったですね。例の保証料も修習中だけですし、弁護士会の主張で保証人の要件も緩和し、育英会の奨学金制度よりもいろいろとゆるいものになっていると聞きます。

個人的には、(修習資金については住宅手当や共済といった課題はあるにせよ)貸与制よりも負担が明らかに大きく無駄な法科大学院(の学費)を消滅させることが最優先・重要だと思います。

小林様
経済的負担の問題は法科大学院の要因が大きいとの見方に同感です。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/576385/56548816

この記事へのトラックバック一覧です: 貸与申請率が下がったことの意味:

« 法科大学院への財政支援まとめ | トップページ | 平成25年司法試験の出願状況(1月18日現在)※追記あり »

フォト
2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ