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2013年2月23日 (土)

司法制度改革を取材するマスコミ記者の方へ

司法制度改革の柱である新たな法曹養成制度が抜本的に見直されないまま推移していることは、太平洋戦争末期の軍部の迷走に似ていると思います。失敗と破綻は明白なのに「理念」とか「国体護持」を金科玉条に現況や戦況の見込み違いを頑として認めず、事態の好転を妄信して終局の決断をためらっている間に、多大な弊害・損害をもたらし続けている点がそっくりではないかと。

それ以外にも太平洋戦争下と似ている状況があります。
マスコミ報道が管制的情報中心で、弊害や損害を国民に対し正確に伝えていないのではないか、という点です。

新法曹養成制度が現にもたらした弊害やその懸念としては

・LS強制制度が経済的時間的条件を課して法曹への途を狭め、志願段階で法曹の質や多様性を貧弱にしている。
・法科大学院が質の高い教育を提供していないにもかかわらず三振制度があり、しかも法務博士の社会的評価がほぼゼロであるため、多額の学費と時間を投資しながらLSのメリットをなんら享受できない人が続出している。
・法科大学院の高額な学費と、兼業禁止を伴う貸与制により司法修習生が理不尽な経済的困窮を強いられている。
・弁護士の就職難と資格取得までの多額の費用負担が相まって法曹を目指すことがハイリスク・ローリターンであることが広く認識され、法曹を目指す人の激減に歯止めがかからない。
・弁護士の就職難によりOJTの機会が激減し、弁護士の質の低下が懸念されている。
・弁護士の激増、LS・貸与制による多額の借金により、弁護士の経営環境が悪化し、採算を度外視した弱者救済や公益的業務に当たる余力・意欲が失われつつある。
・法曹の激増に伴う淘汰の過程で国民が過誤等による損害を受けるリスクが高まっている。

などを挙げることができます。

これらのことは、マスコミが取材源を官僚、公の会議・委員会、日弁連幹部など管制的なものばかりに頼らず、LS生、第一線で活動する弁護士、司法修習生など当事者とも言える関係者の生(なま)の声に耳を傾ければ実感できると思うのです。

司法制度改革を担当する記者は社によって違うと思います。ふだん裁判所や検察を担当する司法記者がカバーしている場合もあるでしょうし、行政機関としての法務省や文科省を担当する記者がカバーしているかもしれません。あるいは、論説委員とか編集委員という肩書の方が専門的に担当している場合もあるでしょう。いずれにせよ、生(なま)の現状と当事者の声を取り上げつつ、この国の司法の行く末までしっかり見据えてほしいと思います。

マスメディアは戦時中、大本営発表を鵜呑みにし、国民に事実を伝えることを怠り、結果として若者を戦地に駆り立てた戦争責任を戦後に自覚し、猛省しました。
法曹養成は人の生死に直接は関係しませんが、その在り方は国家の重要事項であると同時に、法曹を目指す人々の人生を大きく左右するものです。
ぜひ現場の記者の方々は過去の教訓を思い起こし、戦後に自覚した報道の使命に立ち返って司法制度改革の取材に当たってほしいと願います。
将来、司法制度改革の失敗が歴史的事実となったとき、「あのころの司法担当記者って一体何をやっていたの」と問われないためにも。

※参考ブログ
「『朝日』がくさす本当の理由」(元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記)
http://kounomaki.blog84.fc2.com/blog-entry-639.html

※参考記事=社会人を法科大学院に駆り立てるマスコミの特集記事
「司法試験不合格のリスクは伴うが、確実なキャリアチェンジを可能にする法科大学院」(朝日新聞)
http://www.asahi.com/ad/clients/daigakuin/guide/vol2.html

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コメント

> マスメディアは戦時中、大本営発表を鵜呑みにし、国民に事実を伝えることを怠り、結果として若者を戦地に駆り立てた戦争責任を戦後に自覚し、猛省しました。

ここの部分は,むしろ当時のマスメディアを弁護し過ぎでしょう。
戦中に大本営発表を鵜呑みにしたのはそのとおりですが,それよりも大戦へ突入するまでの間,朝日を中心に戦争ムードを国民に煽ったのが第一の罪状でしょう。そうすることが最も国民に受けがよく,新聞が売れたからです。そのあたりのことは半藤一利氏の「昭和史」にも出ていたはずです。同様の罪状は今の「増員・淘汰論」にも言えそうですね。
また,マスメディアが戦後に自己の責任を自覚し猛省したという事実もないように思います。今度は進駐軍の言いなりになって一緒に「真相はこうだ」「軍部に騙されてたのだ」と言い出しただけでは。そんな中で,作家の むのたけじ氏(当時朝日記者)のように本当に自責の念に苛まれて耐えられなくなって自分から身を引いていった人があったことは確かですが。

休業中B様 ご教示ありがとうございます。

マスコミが報道「機関」として反省を示した例は、もしかしてないのかもしれませんが、個々の記者は今も戦時中の教訓と反省を胸に日々、取材していると信じたいです。

機会があって朝日新聞の昭和20年8月14日の新聞を読みました。

多大な戰果が上がったそうですw

こうやって、煽ってるわけです。

でも、当時は表現の自由もなかったでしょうから、まだしょうがない。
今は、表現の自由と再販制度で思い切り守られているのですよね。

>弁護士HARRIER先生

「報道」に属する情報がこれほどネットにほぼ無料で出回ってしまうと、再販制度も盤石ではないですね。もっともネット情報はマスコミが自分で流しているんですが・・・。

表現(報道)の自由は、行政側に「有識者」とか「専門家」とか「民間代表」なんていう煙幕(審議会や諮問機関などのこと)を張られちゃうと、なぜか骨抜きになっちゃうんです。

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