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2013年6月10日 (月)

“法科大学院教育の成果”の正体

法曹養成制度検討会議の議論は、一部のローを除き全体としては
“法科大学院制度は相応の効果を上げている”
という前提で進んできたように見えます。
この点は(最終)取りまとめ案の6ページ

新しい法曹養成制度における中核的な教育機関である法科大学院では,ソクラティックメソッド等による双方向性の議論を重視した授業が実践され,学生に物事の本質や判断の分岐点を考えながら学習を積ませるようになるなど,優れた教育がされている例も報告されている。また,司法試験の結果においても,法科大学院修了直後の受験者の合格率が最も高く,修了後年数が経過するにつれて合格率が低下する傾向が定着し,法科大学院の教育と司法試験との連携が相当程度図られているといえ,これらの点により,法科大学院教育は,相応の成果を上げているといえる

という記述にあらわれています。

しかし、このうち「―双方向性の議論を重視した授業が実践され,学生に物事の本質や判断の分岐点を考えながら学習を積ませるようになる―」という部分は第3回会議で明大ローの田中委員が言っているだけです。この点は黒猫先生から「第三者にはその当否を判断しにくい私事的な『実感』を強弁」といわれる通り、検証困難な主観的な感想にすぎません。

また、「法科大学院の教育と司法試験との連携が相当程度図られている」と指摘している部分は、ロー生の予備校利用実態を把握した後でなければ、このように断言できないでしょう。

そのほかに「法科大学院教育の成果」の根拠となりそうな資料としては、第4回会議で文部科学省が提出した資料の5ページにある「プロセス養成の導入により可能となった法曹養成の教育的な効果」と題する文書くらいしか見当たりません。
でも、よくよくこの表題を読んでみると
、「教育的な効果」の発生が「可能となった」と言っているだけで「効果」が実際に出た、とは言っていない。つまり、教育的効果が出せる環境が整った、と言っているにすぎません。

それでも実際に効果を上げていることを示す客観的な根拠はあるのではないかと善解して、このページの資料の下にある文言に着目してみました。そこには列挙した5つの「効果」について

※法曹養成制度検討会議や法曹の養成に関するフォーラムにおける視察、ヒアリングでの意見等をもとに作成

とあります。
つまり、ここにいう「
意見等」が法科大学院教育の「効果」の根拠だというわけです。

そこで以下の文書を文部科学省に情報公開請求しました。

1・(略)
2・「法曹養成制度検討会議 文部科学省 説明資料 法科大学院制度のこれまでの成果、課題、改善方策、及び今後の方向性」5ページ「プロセス養成の導入により可能となった法曹養成の教育的な効果」として掲げている1~5各々について、「効果」と認めた根拠となる文書
※補足 2・については当該ページ最下行に「意見等」を根拠としたことが示されているが、その「意見等」が記載された文書の開示を請求する

その後、文科省とのやりとりの末、最終的に請求文書名を「法曹養成制度検討会議 第4回会議の配布資料 2-1 5頁の1.~5.の各項目について、その記載の根拠となる文部科学省が作成した文書」にあらためて請求し直した結果、出てきた文書が、過去の2つのエントリーで既に紹介した、4つのローの学生・教員からのヒアリング資料です。
「法科大学院視察の実態」
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-fe09.html
「続・法科大学院視察の実態」
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-17e7.html

開示された資料はこれで全部です。

お膳立てされた場で、ロー幹部・教員同席の圧力の下で、大学院側に選抜された学生と教員が語ったロー教育。それと前述した一学者委員の「実感」。
これが今後の法曹養成制度、ひいては将来の司法の行く末を決める(最終)取りまとめ案が前提としている「法科大学院教育の成果」の正体です。
自由な意見表明により法科大学院教育がフルボッコにされた総務省の意見募集結果は完全に無視。配布資料にさえ出てきません。

今さらではありますが、この会議は全体が茶番だったとあらためて思います。

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コメント

ただ、残念ですけど法科大学院生の予備試験合格率を見る限り、法科大学院教育の成果を否定することはできません。そこだけは謙虚に認めるべきだと思います。

もちろん、井上○仁が東大ローまで出向いて予備試験のための受験指導をしていて、その成果だということもあるのですが。

法科大学院の教育の成果があるとすれば、それは
1 おかしいことにおかしいと言えない

2 おかしいことをおかしいと思えない

3 おかしいことに異議を述べると変人、危険人物とレッテルをはる

法曹界三大公害の被害者に思いに至らない

個人的な母校への感情と客感的に制度としてどうかというレベルの問題を区別できないで、母校に協力してロースクールの賛美を語り、加害者側に荷担する
ことだと思います。
甲南ローの院生や他のローの院生達と話を聞いていると、そう感じることがあります。

また、自分たちに関わる給費制廃止違憲訴訟の原告の集まり具合からも感じます。

確かに、甲南のスキンヘッド院長はおかしいですね。

まるで北朝鮮ですね。

これだけロースクール制度が酷いので、ロースクール生による学生運動があっても良いと思いますよ。
大学によっては今も大学当局と学生運動で戦っている方々がいますし、これがロースクールで行っても不思議でないと思います。
その先手として、甲南ローの院生達が院長に反旗を翻して、学生運動に立ち上がれば、悪名高い甲南ローも評価が変わるでしょう。
もし院生達が学生運動に立ち上がるならば、私も支援したいと思います。

法科大学院生の予備試験合格率から法科大学院教育の成果を肯定的にみることには懐疑的です。
理由の一つは最終学歴が「法科大学院在学中」のほうが「法科大学院修了」より合格率が高いことです。法科大学院教育を完了していない人の方が完了した人より合格しやすいということは、法科大学院教育以外の要素が予備試験合格に強く結び付いていると考えるのが自然です。

別の理由は、一つ目の理由と関連しますが、法科大学院生の予備校利用の実態が明らかになっていないことです。もし法科大学院生の利用率が、それ以外の受験生より高ければ、予備試験合格は法科大学院教育ではなく、予備校教育の成果と考える方が筋が通ります。

一説には司法試験合格より難しいとも言われる予備試験です。司法試験で結果を出せない法科大学院が、予備試験では結果を出していると考えるのは無理があるのではないでしょうか。

>>理由の一つは最終学歴が「法科大学院在学中」のほうが「法科大学院修了」より合格率が高いことです。

これですが,予備試験を受験しなければならない法科大学院生は,三振した人か受け控えの人です。一発で合格する人を抜いた結果なので,どうしても合格率は低くなります。また,ここは推測でしかないのですが,不合格になると不合格者ばかりで集まりがちなので,情報の質が著しく劣化します。周囲の悪情報・悪環境のために合格が遠ざかることもあります。

>>法科大学院生の予備校利用の実態が明らかになっていないことです。もし法科大学院生の利用率が、それ以外の受験生より高ければ、予備試験合格は法科大学院教育ではなく、予備校教育の成果と考える方が筋が通ります。

おそらく,法科大学院生の方が予備校の利用率は低いと思います。学内での受験指導も充実していたり,答練をコピーで入手してゼミなどをやっているからです。(検討会議で井上○仁が,「私の周りには合格者がたくさんいる」と述べているとおり,受験指導の可能性も否定できません。)

>>一説には司法試験合格より難しいとも言われる予備試験です。司法試験で結果を出せない法科大学院が、予備試験では結果を出していると考えるのは無理があるのではないでしょうか。

ここはおっしゃるとおりだと思います。同意します。
おそらくは,井上○仁が教えに行くようなロースクールから合格者が多数出ているものと思われます。

2つ前のコメントいろいろ間違ってますね。

>>予備試験を受験しなければならない法科大学院生は,三振した人か受け控えの人です。
今、多くのロー在学生が予備試験を受けている。もちろん、予備合格というエリートコースへの切符を求めて、ないしはできるだけ借金を減らすために

>>おそらく,法科大学院生の方が予備校の利用率は低いと思います。
確かに、ロー在学中は資金力・時間が不足しているので、予備校利用率は低いでしょう。
しかし、予備合格を狙うような今の優秀層は、学部中での予備合格を目指して、予備校で徹底的な指導を受ける。それで在学中に受からなかったら、仕方なくローに行き、ロー在学中も予備校指導の財産を活用しつつ予備を受ける。
つまり、ロー在学中の予備合格の成果というのは、学部時代の予備校指導の賜物である可能性が高い。

確かに、3つ上は間違いですね。予備試験を受けなければならないロー生ではなく、ロー修了生です。

ただ、1つ上も勘違いしています。統計で登場するロー生は出願時ロー生なので修了間近です。司法試験受験タイミングは変わらないのでロー借金は減りません。1つ上が言いたいことは学部生として集計されているので議論の対象外です。

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