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2013年9月 8日 (日)

法科大学院がこの先生きのこるには

 法科大学院関係者は何かと予備試験を敵視しますが、法曹養成制度検討会議元委員の和田吉弘先生は著書の中で「予備試験がむしろ法科大学院制度を支える機能を果たす」とおっしゃっています(「法曹養成制度の問題点と解決策」花伝社刊)。
 このことを裏付けるような実態が以前の記事で取り上げた東京弁護士会の資料「第2回司法試験予備試験に関する意見交換会(反訳)」から垣間見えます。

 資料によると、東大と思われるローの既修1年目の院生二百数十人のうち、2012年度予備試験を受けたのは約3分の1に上り、そのうち16人が合格。
 一橋ローでも、かなりの院生が予備試験を受験して合格。
 これに対し、その他の複数のロー(資料から具体名は推測できない)では、2012年度予備試験を受験したロー生はほとんどいないようです。

 こうした事実から、この資料に登場する関係者は、上位ローほど予備試験枠拡大の悪影響を受けやすい、と認識しているようです。
 しかし同じ事実からはむしろ、予備試験を受ける院生が多いからこそ東大、一橋が上位ローたりうると考えることもできると思います。
 先に挙げた、東大と思われるロー既修1年目の例でいうと、1学年の人数が約240人だとすると、その3分の1の約80人が予備試験受験を経験したことになります。このうち合格した16人を除く六十数人は仮に在学中に予備試験に受からなくても、ローでは教わらない受験対策を実践した経験があることから修了後の司法試験もパスする可能性がかなり高くなります。こうして予備試験経験者が多いローほど、相対的に司法試験合格率が高くなり、いわゆる上位ローたりうるのではないか。
 逆に予備試験を無視ないし敵視し、院生の予備試験受験に消極的なローほど修了生が司法試験で苦戦し、合格率が相対的にますます低くなって、下位ローのまま、いち早く淘汰されていく、とも考えられると思います。

 著書で和田先生は主に既修者コース「入学者」の人材供給源として学部時代からの予備試験受験生の重要性を指摘されていますが、このことは既修者コース「入学後」における「司法試験合格者の供給源」としての重要性に置き換えることもできるのではないかと思います。
 
 ただし、上記のことは司法試験合格率だけを基準とした法科大学院界内部の序列形成の話にすぎません。しかも短期的ないし中期的な話です。

 長期的にみれば上位も下位もなく、以前の記事で取り上げた、一橋ローの先生が懸念とともに描く「ロー崩壊のシナリオ」通りの展開に突き進むのは避けられないと思います。

 それでも、ローがこの先、生き残るためには、司法試験合格率に拘泥せず、教育内容の専門性と質で正面から勝負するしかないと考えます。
 例えば知的財産権等の特定分野で活躍する専門的な法曹養成を目指す特別な教育プログラムと指導体制を組み、そのローの修了生は特定分野の法曹として優秀かつ即戦力になる人材に間違いない、という太鼓判を押されるようになれば、そういうローは専門的法曹の養成機関として生き残りが可能と思います。司法試験受験前の学生のみならず、既に実務に出た法曹が専門性とスキル向上のために入学するケースが出てくるかもしれません。

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コメント

最近気付いたのですが,東大ローが予備試験において突出している実績を残しているのは,定期試験の時期も関係しているようです。

普通のローでは,予備試験の論文式試験と定期試験が重なって,結局予備試験どころではないようです。他方で,東大ローは,定期試験が遅いので,予備試験の論文式試験との両立が可能になります。

なお,予備試験の論文式試験は,平成26年は,海の日ではなく,その一週間前の土日になったので,ますますローの定期試験と両立することが困難になります。

そうなんですか。ロー学習と予備受験が両立しにくい状況になっているんですね。
あえて予備試験に便宜を図って受験を推奨するローは、中期的には長く生き残れると思うのですが。

私の通うローでは予備試験の論文の日(本来は祝日)に、補講を入れてきました。
欠席者は目を付けられたと思います。
当然ながら下位ローです(笑)。

 東大法学部は,もともと学生の大半が司法試験や国家公務員試験を受けるので邪魔しちゃいけないということで,卒業論文を課していなかったところですから,東大ローもその伝統を引き継いでいるのでしょう。
 あと,「例えば知的財産権等の特定分野で活躍する専門的な法曹養成を目指す特別な教育プログラムと指導体制を組み、そのローの修了生は特定分野の法曹として優秀かつ即戦力になる人材に間違いない、という太鼓判を押されるようになれば・・・」という部分は,法科大学院に関しよく言われる主張の一つですが,とても現実的ではないと思います。
 日本では,知的財産事件を扱う事務所自体が少ないので,知財専門のローを卒業しても知財専門の事務所に就職できる保障は全くありません。ローで知財専門の勉強をしても知財をやらない事務所に就職したら,ローで得た知識はただのゴミです。
 また,知的財産事件を取り扱っている事務所でも,通常はそれ以外の事件もやっています。知財事件専門で食べていけるほど日本の知財事件は多くないからです。
 さらに言えば,特許事件の即戦力になりたいというのであれば,知的財産法だけでなく科学技術系の専門知識も欠かせませんから,3年間本気でその方面の勉強をしようとしたら,法律基本科目など勉強している暇はありません。仮にそのような大学院を設けるとしても,法科大学院ではなく弁護士資格を取得した後の大学院にする方が現実的でしょう。
 私は司法試験合格前から租税法の分野に興味がありましたが,修習では「将来何をやるにせよ,とにかく基礎を身に付けるように」と繰り返し言われました。法科大学院を,あくまで司法試験の前に置く課程として維持するのであれば,とにかく基本(≒司法試験合格のための勉強)を重視すべきです。
 ビジネスロイヤーを目指した東大ローの教育が高く評価されていないのは,最先端分野のカリキュラムを取り入れているため基礎がおろそかになり,最先端分野の知識も中途半端にかじっているに過ぎないので,採用する側としてはどちらも結局最初から教えるしかないからです。

>黒猫先生
ご教示ありがとうございます。
法科大学院が専門性に特化したスタイルで生き残ることさえも非現実的となると、もう打つ手がありませんね。

自己愛バリアで学生の質問を封じる。これではソクラテスメソッドなんて最初から無理。
制度設計者は学者の学力が驚く程低いことを認識していなかった。学生も入学するまでは気づかない。入学後、身の回り数十メートルが世界のすべてになっている勘違い学生が幅を利かせ、トラブルを起こし始める。教育能力の欠如を覆い隠すためにグループ発表を多用する授業。この打ち合わせやレジュメ作成でまた足の引っ張り合い。司法試験に受かっていないのは当然として、隣接科目はもちろん、そもそもその科目の体系が解っていない(「本当に」ひどい)教授の試験に採点基準などあり得ない。クレームを正面から言った学生を留年させる。教育体制への無責任・無関心・恣意性のはびこる環境。学生の個人情報が漏れっぱなし。内部進学者を手なずけ、その学生から情報提供をさせ、教員に批判的な学生をピックアップ。制裁発動。通常点と裁量点(教授の心証)で成績が実は決まる。試験問題の独りよがり加減は半端ではない。過去には、民法の期末試験で、判例の年月日と掲載文献(民集のページ数)を複数挙げるだけで、この判例法理を答えさせる問題あり。マイナーの判例でだよ!!出題者はかの有名な良永大先生。この人の授業中の発言によると、自分が我妻説と川島説の正当な承継者で、民法の学会も実務も自分の100冊を超える著書を読めとのこと。司法試験が自分の授業に沿っていないのはけしからんことで、説教をした手紙を当局に送ったそうだ。ちなみに御自身は短答も受かっていない。これが今年合格率がついに一桁になって今後も改善の見通したが全くない伝統ある名門(と内部の一部では言われているそうで、否定すると又面倒なことになる)・専修法科大学院の日常です。

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