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2014年10月 2日 (木)

【予備試験】ローに通えない人の「枠」をロー生が奪っているのか

現状の予備試験につき、法科大学院に通えない人達の枠を、本来予備を受ける必要のない法科大学院生が奪っているのではないか、という指摘があり、こうした指摘を基に予備試験の受験を制限すべしという意見があります(前々々回エントリーのコメント欄参照)。

このような意見について私の考えを述べておきたいと思います。
簡潔に説明できる能力がなく、長文になりますことをお許しください。

1・そもそも予備試験合格「枠」を観念できるのか
 予備試験は「(法科大学院修了者)と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する」試験です(司法試験法第5条第1項)。合格した者には司法試験受験資格が与えられます(同法第4条第1項第2号)。
 つまり、予備試験は法曹登用試験そのものではなく、その受験資格を付与するための試験にすぎません。ですから司法試験本試験とは異なり、適正な法曹人口とか司法研修所のキャパシティとか司法修習予算額といった政策的物理的予算的要素を考慮する必要がありません。これらの要素は、司法試験本試験の合格者決定の際に考慮すれば済むからです。したがって合格者数決定における制約、すなわち「枠」の設定は考えられません。ロー修了生と同等の学識等があると判断された者はすべて合格させるのが法令に従った運用というべきであり、予備試験に合格「枠」はないというのが法の建前です。
※口述試験会場のキャパという制約は考えられますが、過去に浦安で実施した旧司口述試験の実績からみて、今より合格者数を大幅に増やしても実施可能と思います。

2・「枠」という観念が出てくる原因
 それでも実際には「枠」があると思えてしまうのは、予備試験の合格者数が「狭き門」に抑制されているからです。
 前記の通り、予備試験はロー修了生と同等の学識等があるかどうかを判定し、「ある」と判断された者はすべて合格させなければならないのが法の建前です。
 そして判定基準は絶対評価(考査委員が設定する、あるべき学識等のレベルに達しているかを判定すること)ではなく、現実に存在するロー修了生との相対評価であると考えられます。その根拠には、予備試験合格者決定に際し、ロー修了生と予備合格者との本試験合格率の均衡を求めた閣議決定が挙げられます。平成23年度から25年度まで合格者数は年々、大幅に増えていますが、これは司法試験委員会(考査委員会)が本試験合格率の均衡を基準の一つとして予備合格者数を決定していることのあらわれです。
 ところが、現実は依然として合格率の隔たりが大きく、法令および閣議決定を主要な基準にした合格者数の決定がなされていません。もし、合格率の均衡を主要な基準に予備試験合格者数を決定すれば、平成25年度の合格者数は500~600人が妥当だったというのが私見です。しかし、実際には351人にとどまりました。
 このように予備試験合格者数が不当に過少に抑制されている(私見)ことが、予備試験合格者数に「枠」が設けられていると思えてしまうゆえんです。
 最新の資料によれば、平成25年度予備試験合格者の26年度司法試験合格率は80.7%(受験者166人、合格者134人)。この極めて高い合格率から推測するに、もし、25年度の合格者数が351人よりさらに200人程度多く、その200人程度の方たちが26年度本試験を受験していたとしたら、80%とまではいわないまでも、少なくともロー修了生の平均合格率である21%程度を超える方々が合格した可能性を否定できません。その方たちは本試験受験機会を不当に奪われたと言えるのではないか。のみならず、司法試験本試験合格「枠」を不当に奪われたと言えるのではないか、と思います。ただ、ここで受験機会、合格「枠」を奪ったのは、本来予備を受ける必要のない法科大学院生ではありません。奪ったのは合格率の均衡という基準に照らした予備合格者数を決定しない司法試験委員会(考査委員会)です。

3・予備合格者数を増やしても結局、増加分をロー生や学部生が占めてしまうのではないか
 そうなる可能性は否定できません。しかし、たとえそうなったとしても予備合格者数が合格率の均衡を主要な指標として決められる限り、ローに通える人と通えない人との間で不公平が生じるとは言えないと思います。
 ローに通えない人たちの受験機会が奪われているのではないか、という問題が生じる原因は、現在の予備試験合格者数の決定基準が、ロー修了レベルより高いレベルに設定されている点にあります。もし司法試験合格率の均衡という、客観的で分かりやすいモノサシにより予備合格者数が決められるならば、ロー生も予備専業受験生も、受験資格を得るためにはロー修了レベルという、同等の学識等を身につければ済むことになります。ルートは異なっても同じ到達点をクリアした者に等しく受験資格を与える、ということですから、ローに行ける人と行けない人との間で大きな不公平が生じることはないはずです。

4・まとめ
 以上の通り、法科大学院に通えない人達の枠を、本来予備を受ける必要のない法科大学院生が奪っているのではないか、と指摘される理由は、予備試験の受験を制限していないからではありません。合格者数が不当に抑制されているからだと私は思います。
 諸事情からローに通えない人たちに受験機会を公平に付与しようとするならば、予備受験制限ではなく予備合格者数の拡大化(適正化)を図るべきだと私は思います。

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コメント

ご指摘の人物は,ブログ主さんの認識とは異なり,上位ロー修了生の方が純粋予備試験組(大学生でも法科大学院生でもない予備試験合格者)より司法試験合格率が高い,よって上位ロー修了生の方が予備試験組より優秀だなどという珍妙な理屈を立てている人ですから,真面目に反論するのであれば,まずその理屈が間違っているということを指摘しないと,反論として成立しないと思いますよ。

ご指摘の人物です。(笑)

今回の記事はデータに裏付けられて秀逸です。感心しました。

ところで黒猫さんはまだ誤解をされているようです。
記事に載せられた最新データによると,予備試験合格翌年の司法試験合格率は80%です。それに対し,東京大学法科大学院の既修新卒合格率は84%超です。いい加減,東京大学法科大学院の受験対策の成果,手厚いサポートの成果を認めてはいかがでしょうか(既修新卒に限る)。

黒猫さんは「東京大学は法学部でも法科大学院でも,司法試験の受験対策はやっていないと公言しているのに」とおっしゃっていますが,それでは反論として成立しません。「公言すること」が「真実」だと断定すること自体,論理が飛躍しており,間違っているからです。

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