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2015年2月

2015年2月26日 (木)

朝日の法曹養成報道は変わっていないのか

法科大学院、淘汰の波 学費高く、予備試験が人気(朝日新聞2月22日付朝刊紙面)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11614853.html

慰安婦報道などに絡む一連の“誤報”問題を受けて、法曹養成に関する朝日の報道姿勢が改善されてほしい、と期待していますが、この記事を読む限り今のところ大きな変化はみられません。私がそのように感じる点を挙げます。

○そもそも「『予備試験』の利用者が増えている」とする記事の大前提が崩れちゃってます。今月中には平成27年度の出願者数が発表されると分かっていたはずなのに、なぜそれを待てずに予備試験組の増加を前提に“改革の理念を予備試験が害している”と言いたげな記事を掲載したのか。
○記事中に法曹を目指す学部生が3人登場しますが、経済的に苦しいためローに行けない(ので予備試験受験制限は困る)という学生を取り上げていません。データによれば予備試験を受験する大学生の12%はそのような学生であり、決して無視できない割合で存在するはずなのに、です。
○2人の識者の談話が掲載されていますが、いずれも法科大学院関係者で予備試験の現状に批判的です。談話を2人分掲載するのであれば、異なる見解の識者を選ぶのが公平で多角的な報道に資するはず。たとえば、1人は和田吉弘先生や河野真樹さんの談話を掲載してもよかったのでは。
○予備試験に対する文科省側の「?」な言い分をそのまま掲載しているのも疑問。記事によれば文科省内部には予備試験組の増加について「医学部を修了していない医者がメスを握ることになるのと同じ」という批判があるそうです。しかし、医学部で主要な教員が医師国家試験に合格していないとか、メスを握ったことがない(診療の実施経験がない)、ということがあるでしょうか。司法試験に合格しておらず、実務経験もない学者教員が主に指導する法科大学院を医学部にたとえるなら「医師の資格がなく、メスも握ったこともない人たちが、実際にメスを握る医者を育てようとしてるのと同じ」といえるでしょう。
 また、文科省側の言う通りなら、ローを修了していない旧司法試験組は過誤を起こしかねないヤバイ法曹ということになりますね。

朝日新聞は第三者委員会の検証報告を受けて社長名で

 報告書では「編集(部門の紙面づくり)に経営が介入することは、最小限に、しかも限定的であるべきだ」と指摘されました。編集へのゆきすぎた関与は、会社の事情を優先する内向きの体質が招いた結果で、読者に公正で正確な記事を届けるという大原則が二の次になっていました。
 私は、こうした「体質」を一掃し、私たちの意識を変える改革を進めます。みなさまの声に謙虚に耳を傾け、多様な意見を紙面に反映していきます。

と宣言しています。
http://www.asahi.com/shimbun/3rd/2014122301.html

 大手新聞が法科大学院制度そのものの批判に及び腰な理由として、広告事業との関連を指摘する声も聞きます。私はそんなことはないと思っていますが、そのような誤解を生まないよう、宣言通りに多様な意見を紙面に反映していただきたいと思います。

以上、数十年来の有料購読者として希望します。

2015年2月24日 (火)

法曹界の終わりの始まり

司法・予備試験出願者、初の減少 背景に「法曹離れ」か(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201502/CN2015022301001650.html

 通過すれば法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格が得られる予備試験の今年の出願者数が2014年より79人少ない1万2543人(速報値)となり、11年の制度開始以降初めて前年を下回ったことが23日、法務省のまとめで分かった。
 法科大学院の志願者も04年度は約7万2千人だったが、14年度は1万1450人にまで激減しており、弁護士の就職難などを理由とした法曹志望者の減少が背景にあるとみられる。

平成27年司法試験予備試験の出願状況について(速報値)
http://www.moj.go.jp/content/001132801.pdf

出願者数の推移(カッコ内は受験者数)

平成23年  8,971人(6,477人)
平成24年  9,118人(7,183人)
平成25年 11,255人(9,224人)
平成26年 12,622人(10,347人)
平成27年 12,543人(?)
※H27は速報値

 なんとなく危惧していた通り、ほぼ横ばいながらも減少に転じました。
 職種別の内訳の公表はまだ先になると思いますが、私は主に有職者層が減ったのではないかと推測します。以前にも書きましたが、昨年のわずか356人という合格者数は、受験生でない私でも心が折れそうになる数です。法科大学院ルートに比べて学力面でのハードルがあまりにも高い予備試験の「狭き門」ぶりに、ローに行けない有職受験生や経済的に恵まれない受験生の中で、予備試験をあきらめ、ひいては法曹志望をあきらめる人がもっと多く出てくるのではないかと懸念していました。
 法科大学院の人気が低迷する中、なんとか法曹志願者をつなぎとめていた予備試験の人気にも陰りが見え始めたことは、法曹界がこれから人材の枯渇化、画一化に向かうことを意味するのではないかと危惧します。つまりこれが、法曹界の終わりの始まり―。

 さて、法科大学院推進派の念願通り予備試験志願者が減りましたので、推進派の主張ではこれから適性試験受験者、法科大学院志願者が増えるはずですね。もう予備試験が法科大学院離れの原因だなんて言い訳は通用しません。自らが選択されない理由に正面から向き合わざるを得ないでしょう。

※参考
予備試験出願者数減少(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52110259.html
法科大学院は、いよいよ自身の価値で勝負せざるを得なくなる(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52110267.html
予備試験は法科大学院への入学者を奪っているのか(タダスケの日記)
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20140920/1411191117
「予備試験」出願者減という段階(元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記)
http://kounomaki.blog84.fc2.com/blog-entry-879.html

2015年2月14日 (土)

2015年度の主要国立大法学部の出願状況

旧帝大・一橋、神戸両大の今年の法学部志願状況(前期)を調べてみました。
元のデータは河合塾です。
http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/shutsugan/
ただし、九大は確定したか否かが判然としません。
http://www.kyushu-u.ac.jp/entrance/examination/H27jyokyo.pdf

志願者数は2015←2014←2013←2012の順で表記。東大は文科一類。阪大は法学科。
赤字が昨年比減青字が昨年比増

      募集人員 志願者数      
東京    401  1309←1226←1169←1592
一橋    155  549←464←518←537
北海道  140   246←340←267←318
東北    140   326←331←371←356
名古屋  105   238←248←281←300
大阪    145   264←261←335←358
京都     320   746←857←780←807
神戸   120   312←311←334←414
九州     159   378←293←390←400

東大と一橋は、増える可能性が高いと去年、予想した通り反動増となりました。ただ東大文Ⅰは志願者が増えた割に足切り点が534点と、さほど高くないのが気がかり。九大も反動増の側面があると思われます。

東北、名大、阪大、神戸はほぼ横ばい。

北大、京大は大きく減らしましたが、反動減の要素もありそうです。

これらを総じてみると、主要国立大の法学部人気は下げ止まりの傾向がみられると思います。ただ、2012年度のレベルを回復したのは一橋だけですから、全体として「復活」したとまでは言い難いのではないでしょうか。

来年、何校が、過去のどのレベルまで回復できるか注目したいと思います。

※参考
「2015年度の主要私大の法学部志願状況」(拙稿)
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/2015-5713.html

2015年2月 8日 (日)

「就職で有利」=「抜け道」なのか

「司法試験予備試験:法科大学院生の8割『就職に有利』」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20150207k0000e040178000c.html

 司法試験の予備試験を受けた法科大学院生の8割が「就職で有利」と考えている―。そんな実態が、政府の法曹養成制度改革推進室が予備試験受験者を対象に初めて実施したアンケートで浮かび上がった。経済的に法科大学院に進学できないような人のために設けられた制度だが、本来の趣旨から離れ、「抜け道」として利用されている実態が裏付けられた。【和田武士】
(以下略)

「就職で有利」という理由で受験したことと、「抜け道」として利用することって、どうつながるんでしょうか。しかも“抜け道”の方が合格率数%という難関なんですよ。
そんなこと言ったら、「就職に有利」という理由で、東大その他の難関大学に進むことも“抜け道”になってしまいそうです。

この記事は「平成26年司法試験予備試験口述試験受験者に対するアンケート調査結果」という資料をもとに書かれたと思われます。

でも、同じ資料をもとに、次のように書くことだってできそうです。
※本記事をベースにしています。

「司法試験予備試験:大学生12%『経済的事情で法科大学院に行けない』」

 司法試験の予備試験を受けた大学生の12%は「経済的余裕がなく法科大学院に行けない」と考えている―。そんな実態が、政府の法曹養成制度改革推進室が予備試験受験者を対象に初めて実施したアンケートで浮かび上がった。予備試験については、経済的事情などから法科大学院に進学できない人にも法曹への道を開くという本来の制度趣旨から離れ「抜け道」として利用されているとも指摘され、大学生などの受験を制限すべきとの議論がある。しかし、実際に受験を制限した場合、大学生の10人に1人は経済的事情により法曹への道が制限され、職業選択の自由の不当な差別を受ける恐れのあることが鮮明になった。【0302】
 調査は昨秋の口述式の受験者392人を対象に実施。大学生25人、法科大学院生79人、それ以外(会社員や公務員ら)36人の計140人が回答した。
 予備試験の受験理由(複数回答)を尋ねたところ、大学生の12%が「経済的余裕がなく法科大学院に進学できない」と回答した。
 大学生・法科大学院生以外の人の受験理由では「法科大学院に進学する時間的余裕がない」が44%、「経済的余裕がない」も41%に達し、法科大学院制度により司法試験の受験機会の制約を受ける人が少なくない実態が裏付けられた。ただ、予備試験合格率は数%しかなく、経済的事情などを抱える人にも司法試験の受験機会を公平に保障するには不十分であるとの指摘もある。自由記述では複数の人が「合格率を上げてほしい」と回答した。
 一方、法科大学院生の78%が受験理由で「予備試験に合格していた方が(法律事務所などへの)就職に有利」と回答した。法科大学院は本来、高度の専門知識や幅広い教養、豊かな人間性等を備えた法曹を養成するという理念のもとに設けられたが、法曹の現場からは理念通りの教育と人材育成の実践を疑われている実態を伺わせた。
 その他の自由記述では、法科大学院生が予備試験を受験できる現状を疑問視する声もあった。しかし、受験資格に制限を設けることに反対する声の方が多く、「合格率の低い予備試験に受験者が集まるのは経済的負担が少なく,かつ法科大学院の授業に魅力がないからであり、法科大学院の方に問題がある」「収入や年齢で予備試験の受験資格を制限するのは,どう考えても憲法(職業選択の自由)に違反する」などの意見が寄せられた。

以上は、私が自分に都合のよいようにデータをつまんで評価しながら作り変えたものです。でもこれが一般紙に掲載されたら一見、客観的で中立的な記事に読めてしまうんではないでしょうか。
一つのデータもいろんな見方ができます。新聞に限らず、客観的事実を都合のいいように取捨選択して評価した上で偏った記事を書くことは可能です。

2015年2月 5日 (木)

2015年度の主要私大の法学部志願状況

以下は早・慶・中央の法学部・法律学科の志願状況です。
※出願者数は「2015年←2014年←2013年←2012年」の順で表記。
赤字は昨年比減、青字は昨年比増

早稲田(法学部)=確定
http://www.waseda.jp/nyusi/undergraduate/undergraduate_news/2015/02/2679/
一般        募集350 4564←4847←4967←5232
センター利用 募集100 2393←2109←2248←1949

慶應(法学部法律学科)=確定
http://www.admissions.keio.ac.jp/exam/shigansha.html
                   募集230  2020←2009←2215←2308

中央(法学部法律学科)=確定
http://www2.chuo-u.ac.jp/nyushi/nippou.html
統一(4教科) 募集20    243←237←256←352
統一(3教科) 募集35     818←820←826←969   
一般(4教科) 募集60    965←1208←1536←1551
一般(3教科) 募集270  2658←3006←3657←3747
センター併用  募集45   1254←1468←1897←1962
センター単独  募集90  2315←2444←2932←2759
※ただし2015年は各コースの募集人員に若干の変動あり

今年は大手予備校の分析として「法・政治系の人気復活」(朝日新聞1月15日付朝刊)との報道もありましたが、主要私大の志願者数をみる限りでは、法学部はとても人気「復活」とまでは言えず、せいぜい「下げ止まりの兆しが伺える」という程度ではないかと思います。
早稲田は一般で300人近くも減らしていますし、中央も統一4教科型を除いて軒並み昨年を下回りました。特にメインの一般でかなり危機的に大きく減らしています。
慶應は去年よりやや増えたものの、その前年と前々年のレベルまでは回復していません。
(なお早稲田のセンター利用は増えていますが、ここは法学部志望以外の出願者も多いので、法学部人気を推し量る指標にはなりにくいです)。

一方、主要国公立大二次試験志願者はまだ確定していませんが、回復したところもあるようです。

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