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2015年7月

2015年7月27日 (月)

“予備試験組の質に問題あると見るべきでない”と法曹養成制度改革顧問会議顧問

法曹養成制度改革顧問会議第6回会議 議事録より
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai6/gijiroku.pdf

○吉戒顧問 予備試験が、予備という名前にふさわしい状況にはなっていないなという問題意識は持っております。法曹養成は、プロセスによる養成であり、法科大学院はその中核を占めるということがうたってあるわけで、それを踏まえて制度設計がされたわけですけれども、現実には、予備試験組が徐々に増加しているという状況です。
ただ、予備試験が今まで3回実施されて、それを経由して司法試験に合格した方が2回いまして、司法修習を修了して弁護士登録している人が1回いるわけですね。
そういう状況で見ますと、例えば、66期で予備試験組の39人が修習を終了したと、そのうち、5人が裁判官に任官して、2人は検事で、あとは弁護士だということですね。
採用する側では予備試験組についても、別に差別をしないで、能力、資質をきちんと判断して採用しているわけなので、予備試験組は、資質、能力に何か問題があるというような見方をするのは避けるべきだと思います。

後段は至極まっとうな意見ですね。政府のご意見番である顧問が、予備試験合格者の質に問題があるという見方はしないよう釘を刺しているのに、言うこと聞かないでどうしてこういう取りまとめになったのか。

結局「顧問」って名ばかりのお飾りだったのかな。

顧問の方々の貴重なご意見も、政府・官僚が都合のよいところだけ聞き入れ、都合の悪いところは無視する形で、いいように利用されてしまったみたいですね。

2015年7月26日 (日)

政府による予備試験合格者の「法曹としての質」問題視は“捏造”か“デマ”の類

予備試験合格者の「法曹としての質」問題について新たな開示資料に基づいて検証します。

新資料は以下の4点です。

司法修習生考試結果集計表(第66期)

66koushi1

司法修習生考試結果集計表(第67期)

67koushi1

集合修習成績集計表(第66期)

66shugo1_2

集合修習成績集計表(第67期)

67shugo1_2

いずれも法曹養成制度改革顧問会議に提出されましたが「非公開資料」と扱われ、公開されていません。しかし、予備試験合格者の本試験合格「後」の「質」に関わる重要な客観的データです。

集合修習の集計表をみると、成績「優」をとった修習生の割合は66期、67期とも全科目で予備試験資格者が高く、「良上」も66期の民事弁護を除いて予備試験資格者の方が上回っています。

考試結果集計表は残念ながら人数と割合の部分が黒塗りで非開示とされました。
ただ、このうち「66期」については黒塗り部分のデータを見た国会議員のコメントがあります。
「待ったなし法曹養成・法曹人口の抜本改革~②司法修習過程で明らかに、予備試験合
格者の優秀さ~」(あらいぐまのつぶやき)

http://ameblo.jp/katsuyuki-kawai/entry-11776079783.html

それによると

考試では民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護の各科目で予備試験出身者の方が法科大学院出身者よりも成績「優」を得た者の割合が高く、

とのことです。

また、顧問会議議事録によれば事務方が

「一部の科目を除きまして、基本、優の割合が予備試験組の人たちの割合の方が高いという状況がお分かりいただけるかと思います。」

と説明しています。

これらの客観的データは、先日の政府決定「法曹養成制度改革の更なる推進について」が、予備試験合格者の「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」を問題視したのとは真逆の評価を指向するものです。

たしかに予備試験合格者はいまだ少数派でサンプル数が少ないことから、これらのデータから何かを断定するのは早計かもしれません。しかし、政府が根拠として挙げた、誰が何を根拠に言ったのかも分からない意見レベルの資料よりははるかに実態を反映しているものでしょう。

ところが、これらのデータが提出された際の議事録をみると、データの内容を検討した形跡がありません。

かつて、行政がダム建設や空港建設といった巨大公共事業を進めるに当たって、需要予測などのデータを都合のよいところだけつまみ喰いして、事業推進の根拠にしたのではないかと問題になりました。今回併せて決定された「法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ)」に対しても「統計結果の引用の仕方により、実際には、存在しない需要について、存在するかのごとき「見せ方」がされている」 (武本夕香子弁護士のブログ)との指摘があります。

しかし、政府決定の予備試験合格者の部分は、都合よくつまみ喰いする統計結果がそもそもないこところから「質」の問題や「弊害のおそれ」を持ち出した上、都合の悪い統計結果は「非公開資料」として検証困難にしている点で、もっと悪質のように思います。

なお唯一、予備組の「質」を問題にする拠り所になる得る客観的事実は、予備試験科目数と法科大学院履修科目数の違いです。しかし、この違いから「質」や「弊害のおそれ」を見いだすことが極めて不合理であることは前回のエントリーで指摘した通りです。
そう考えると、政府決定が予備試験合格者の「法曹の質」と「弊害が生じるおそれ」に言及したのは、捏造かデマに近いと私は思います。

まあ、たとえ政府がどんなに詭弁を弄しても、市場は実務的観点から予備試験合格者について合理的な評価を下すと思います。それゆえ捏造やデマに世間が踊らされる心配はまずありません。
また、有識者会議の過程を経た政策決定が、初めから結論ありきの不合理なものであるケースは、今に始まったことではありません。

それでも国の重要施策の決定がこんなにデタラメなのかとあらためて思うと、この国の行く末が心底恐ろしくなります。

※参考
予備試験合格者の「法曹としての質」を考える上で参考になる他の客観的データとして任官割合があります。
「新任判事補101人中、予備試験合格者は12人」(拙稿)
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-5338.html

「【速報】司法修習の起案成績は予備試験組がロー修了組を上回ることが明らかに」(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52127075.html
「デタラメ意見書を「評価」しちゃった日弁連会長声明の残念っぷりを嘆く」(福岡の家電弁護士のブログ)
http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-12054797146.html

2015年7月24日 (金)

根拠なく予備試験合格組の「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」を問題にした可能性が濃厚

先日決定されたの政府方針「法曹養成制度改革の更なる推進についてhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/07/15/1359973_02.pdf

ここで予備試験合格組の司法試験合格者の「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」が問題にされたことに関し内閣官房に情報公開請求を試みました。

公開を求めたのは以下の文書

第22回法曹養成制度改革顧問会議(平成27年6月11日開催)において内閣官房法曹養成制度改革推進室が提示した資料「法曹養成制度改革推進会議決定(案)」の「第4 司法試験 1 予備試験」の項で「法科大学院を経由することなく予備試験合格の資格で司法試験に合格した者について、試験科目の枠にとらわれない多様な学修を実施する法科大学院教育を経ていないことによる弊害が生じるおそれがある」とした根拠となる客観的データ、事実等が分かる文書及び同項で「法科大学院を経由することなく予備試験合格の資格で司法試験に合格した者の法曹としての質の維持に努める」として特に予備試験合格者の法曹としての質を問題にした根拠となる客観的データ、事実等が分かる文書

なお「法曹養成制度改革推進会議決定(案)」は、最終決定の「法曹養成制度改革の更なる推進について」の原案で、予備試験の項は「案」と「最終決定」で一字一句変わりません。

請求に対し開示されたのは以下の3文書

(1)予備試験制度に関する意見の整理等
(2)法科大学院教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について(提言)抜粋
(3)予備試験の実施方針について

(1)はhttp://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai9/siryou8_5.pdf
(2)はhttp://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/11/19/1353567_3_1.pdfの参考資料の61ページ
(3)はhttp://www.moj.go.jp/content/000006534.pdfで、いずれも公開済みの文書でした。

開示文書をみました。

(1)で請求内容に該当すると思われる部分は1ページの表左側の「予備試験制度の現状に対する批判」の記載だと思います。私は既に目を通したことがありましたが、再度、読み込んでみました。
 しかし、ここで予備試験の「問題点」として指摘されていることを要約すると

ア・予備試験受験生の属性が制度趣旨に沿っていない
イ・負担の軽い予備試験を「バイパス」利用する者がいて法科大学院の理念が実現できていない
ウ・予備試験の勉強のために法科大学院の学修が疎かにされている。ロー教育に悪影響が出ている
エ・法科大学院教育の軽視の傾向が広がりつつある

予備試験組がエリートであり法科大学院組が二番手との風潮に拍車がかかる
カ・予備試験の科目数等が限られ、法科大学院修了者と同程度の学力を判定する試験になっていない

ん? ほとんど司法試験合格「」の問題点の指摘ですね。
合格「」の「弊害が生じるおそれ」「法曹としての質」とは関係ないよね?
しかも、どの指摘も表右側の「再批判」で逐一反論されているし。
「再批判」は無視して「批判」のほうだけ斟酌したのかな。
だとしたら、ずいぶん恣意的ですね。
唯一、合格「」の指摘は意見オですが、これはむしろ世間が予備試験組の「法曹としての質」を高く評価する可能性を示したものですね。
さらに2ページ目には「予備試験合格資格で司法試験に合格した者について、不足があるとの指摘は見られない現状において・・・」という記述があるよ。これは予備試験組の「法曹としての質」「弊害のおそれ」を問題にする根拠となる事実はない、という意味だよね。

そもそも私は「根拠となる客観的データ、事実等」を求めたんです。なのに示されたのは、誰が何を根拠に言ったのかも分からない、主観的な意見ばかりで、政府方針という重要事項を決める根拠としては極めて薄弱です。結局、政府が客観的根拠なく予備試験組を不当にdisったってことのようです。

他の開示文書(2)(3)は、予備試験の試験科目が法科大学院の授業科目より限定的であるということを言いたいようです。

学修した科目数の違いは「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」とどう関わるのでしょう。学修した科目が少ないと「法曹としての質」に問題があり「弊害が生じるおそれ」が出てくるなら、たった5~6の試験科目しか勉強しなかった旧司法試験組なんて目も当てられないほど質が低い「ヤブ法曹」ばかりで大問題になっているはずですね。新たな法曹養成なんかより、旧司法試験組法曹の再教育の方が緊急の重要課題でしょう。
そもそも「法科大学院の教育の効果は5年で薄れてしまう」(注)らしいです。だったら法科大学院での履修自体が「法曹としての質」とは関係ないことになるでしょう。

結局、予備試験合格組の「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」を問題する合理的根拠がないまま、問題があることを前提とする政府方針が決まったんですね。どんな闇の力が働いているんでしょうか。

(注)
「法曹養成制度検討会議第6回,事務局提出資料,受験回数制限(平成24年12月25日開催)」(タダスケの日記)
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20121230/1356828107

2015年7月21日 (火)

法曹養成に関する岩手日報論説の感想

法曹養成の転換 目標半減の理由を示せ(7/21岩手日報論説)
http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2015/m07/r0721.htm

国に対するかなり辛辣な主張だと思います。共感する部分が多く、これぞ地方紙の真骨頂と感心しました。

特徴的なのは司法制度改革のそもそものスタートラインに厳しい疑いの目を向けていることです。たとえば

しかし、法曹の数は司法制度改革の土台部分。部分的な手直しの意味合いにとどめることなく、「国民に身近な司法」を掲げた一連の改革の全体像を見直す契機とする必要があるのではないか。

という部分は、これを機に改革の理念の根本を見直すべきという主張に読めます。

また、

司法制度改革推進計画では「現在の法曹人口が、わが国社会の法的需要に十分に対応できていない」とする認識も示されたものだ。結果的に認識を誤り、目標が過大だったと言われても仕方ない。

という部分も、そもそも改革のスタート時の法曹需要予測が間違っていた、と結論付けているように読めます。もう「開拓すれば需要はわんさかある」なんて虚言にはだまされないぞ、といった態度が伺えます。

ほかにも、定員を減らして合格率の帳尻を合わせようとするインチキぶりや、「高い合格率目標を喧伝(けんでん)して志願者の期待をあおった」国の責任を指摘したりと、厳しい批判を展開しています。

結局、この論説が最後に問いかける「なぜ『3千人程度』を『1500人以上』にするのか。」という疑問に国がきちんと答えるべく、2000年前後の予測が正しかったのかどうかを誤魔化しや偽りなく総括しなければ、法科大学院を中核とする法曹養成制度の推進をいくら叫んでも、関係者以外、誰も耳を貸さないだろうと思います。

2015年7月17日 (金)

現行法曹養成制度について地方メディアに考えてほしいこと

課題山積の現行法曹養成制度の改善に向けた当面の政府方針が先日、決定されました。
「法曹養成制度改革の更なる推進について」
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai23/siryou4.pdf

法科大学院の募集停止が進み、特に地方在住者が法曹を目指す環境はますます悪化しています。

しかし、上記の政府方針で地方の法曹養成に関して言及されているのは

・累積合格率7割以上を絶対的指標とはせず法科大学院の「地域配置」に留意すること
・課題のある法科大学院への改善命令、閉校命令等の措置に際し、地域の状況やICT(情報通信技術)の活用状況を考慮すること
・奨学金返還支援などの奨学金制度の充実
・地方在住者等に対するICT活用研究と普及促進

という点くらいです。

既に募集停止を決めた地方大学院の募集再開に向けた措置はありませんし、もちろん新設もあり得ません。地域の状況に応じて今ある大学院が閉校命令などを受けずに済む場合が有り得るというだけです。地方において法科大学院の配置や規模が現状より縮小する可能性は大いにあっても拡大することはまずありません。

地方在住者の受験環境を今より良くする可能性のある措置は、奨学制度とICTです。

しかし、奨学制度で特に地方に関して挙げられているのは「地元に就職する学生の奨学金返還支援のための基金の造成及び優先枠(地方創生枠)を設けて無利子奨学金の貸与を行うなど」という程度です。「給付型支援」の充実という記載もありますが、これは特に地方学生を対象にした記述には読めません。そうであれば、地方在住者が法科大学院に通うために転居と下宿を余儀なくされ、それに伴う費用の借金を強いられる現状はほとんど変わりません。

ICTの活用はこれから実証研究を始める段階で、本格的な普及の目途はもっと先の平成30年度からになります。また、ICTが活用されるとしても、政府方針の通り「法曹を志す者の誰もが法科大学院で学ぶことができる」ことを実現するには、自宅もしくは自宅から通える施設でインターネット受講できるシステムにする必要があります。しかし、そのような方法をライブで実施するのは困難でしょう。また、法科大学院推進者が忌み嫌った受験予備校のネット講義と何ら変わらず、もはや「質・量ともに豊かな法曹を養成するプロセス教育」とは言えません。

結局、このたびの新たな政府方針に従っても、地方の受験環境が良くなることはないと思われます。むしろ、住む場所を問わず誰でも挑戦できる予備試験について「合格者数を増やすな」と釘を刺している点は、地方の受験環境をより悪化させているといえます。

そもそも、一部の人しか通うことができない法科大学院の修了を強制する、という制度自体に無理があったのです。「司法制度改革の理念」は、少なくとも地理的には誰もがローに通える大都市圏のみでぎりぎり首の皮一枚つながっているだけ。地方では完全に崩壊し、理念通りの教育が復活する見込みもないと言ってよいと思います。

法曹養成制度において、これだけ地方がないがいしろにされた挙げ句、もし地方メディアがこの期に及んで「『改革の理念』『改革の原点』を貫け」という類の論調を掲げるとしたら、お人好しも甚だしいと私は思います。読者・視聴者たる地元の法曹志願者の「職業選択の自由」を考えていない、と思われても仕方がないでしょう

地方メディアは、先の政府方針の内容が制度の改善にとって不十分というにとどまらず、そもそもの改革の「理念」「原点」は正しかったのか、という点に立ち返って現行制度の問題点を追及してほしいと思います。

私は地方の法曹養成環境を都市圏と対等に近づけるには、以下の2つの方法しかないと思っています。

・現行制度を前提にするならば、予備試験の合格枠を拡大し受験会場を地方に増やすこと

・現行制度を前提にしないならば、司法試験の受験資格制度を廃止すること

以上が長らく地方在住司法試験受験生だった私の考えです。

※当ブログにおける過去の地方の法曹養成に関する記事
「地方の実情を踏まえた法曹養成とは」
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-6a21.html
「ローに通えない地方法曹志願者の夢をつなぐには」
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-ff2e.html

2015年7月11日 (土)

マスコミの変化を予感させる西日本新聞社説

法曹養成政府案 改革の原点は守れるのか(7/10西日本新聞社説)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/181134

いまだ「理念」にとらわれている点は脇に置くとして、政府方針に対し中央大手紙とは異なる視点や、手厳しさが見受けられます。

たとえば政府方針が司法試験合格者「1500人程度」とした点について。

6月17日付の朝日新聞の社説

 法律家の保護でなく、市民が使える法律サービスが十分かどうかの観点から、今後の法曹人口を柔軟に考えていくべきだ

として「1500人程度」を超える増員を暗に求めています。

一方、西日本新聞社説では

 政府案は、法科大学院主体の養成制度とともに法曹人口の拡大路線も維持した。年1500人の合格者は現状に近いペースで弁護士の増加が続くことを意味する。
 司法制度改革で
弁護士は倍増したものの、仕事は増えず、若手弁護士の就職難や実務能力が磨けないといった問題を生んでいる。法曹志望者が減る大きな要因だ。

として増員路線が、めぐりめぐって法曹志願者の減少の原因になっているとの問題意識を伺わせています。たとえ「1500人」でも法曹人口が増え続けていくことを認識した上で、増員が志願者減少の原因になっているとする視点は、一般紙の論説ではこれまで見たことがありません。従来のマスコミの論調は、増員ペースを問題にすることはあっても、増員自体は正しい、という位置づけに揺るぎはなかったように思います。

また、西日本新聞社説は、地方の法科大学院から先に淘汰されていくことへの危機意識と政府方針への不信感が強烈にあらわれているのも特徴的です。

現行法曹養成制度に対するマスコミの見方が、地方メディアから変わっていくことを予感させます。

2015年7月10日 (金)

明日から司法試験予備試験論文試験

予備試験を「抜け道」だの「近道」だのと安易に言う法科大学院関係者や、その言を鵜呑みにして引用するマスコミ記者は、合格率数パーセントの難関試験にチャレンジすることがどれだけ過酷か想像できない人たちでしょう。

以下は山登りにたとえた私の脳内イメージです(絵心なき点はご容赦)。

Image1_9


「法科大学院ルート」は整備されたなだらかな斜面を進む登山道で山頂を目指すルート。山頂は登りながら目視でき、距離は長いけど地道に登っていけば確実に山頂にたどりつく。

一方「予備試験ルート」は絶壁を命綱なしのロッククライミングで山頂を目指すルート。登るのは垂直か、それ以上に反り返った崖。9合目あたりまで行かないと山頂は見えてこない。スイスイと登れるのは、ほんの一握りの人だけ。ほとんどの人は落石などに阻まれてなかなか進めず、滑落して麓から登り直すこともしばしば。

こんな難コースにあえてチャレンジしている皆さんを応援しています!

※念のため申し添えますが、本稿に各ルートの是非や優劣や心得の貧富 を区別する意図は一切ありません。

2015年7月 9日 (木)

いちからわからない!法科大学院志願者減少の原因

(いちからわかる!)法科大学院が減っているそうね(7/9朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11848769.html

紙面では後半にこういう問答があります。
これからも法科大学院が減る?という質問に対し

 A 可能性はある。法科大学院の志願者は約7万人から約1万人に減ってしまった。司法試験の合格率が低いのに、授業料を払って大学院に行こうとはしないからね。国は、合格率が上がらなければ、最終的に強制閉校も検討する。

志願者減の真の原因は合格率の低迷ではない、と何度言ったら・・・・
合格率7割以上を達成していても志願者は減っているのに。
赤字の部分

「多くの人は弁護士になるまでにたくさん借金をしなければならない上に弁護士の就職が難しくなり、就職しても借金を返していくには収入が厳しいといわれている。司法試験に合格しても弁護士になれないかもしれないし、なれても借金を返せる見込みが立たなければ、授業料を払って大学院に行こうとはしないからね。」

と書きあらためないと。

その後にもこういうアンサーがあります。

  司法試験を、大学院で学んだことが生かしやすい内容に変えるべきだという意見もある。

わざわざ取り上げるからには肯定的な「意見」と受け止めているのでしょう。しかし、たとえば医師国家試験の合格率が低迷して医学部に行く人が減った時に「医師国家試験を、医学部で学んだことが生かしやすい内容に変えるべきだ」と言って国民が納得するでしょうか。このアンサーは質の高い法的サービスを利用したい国民の利益より法科大学院の利益を優先しているようにしかみえません。
そもそも、医師国家試験の合格率が低迷したからといって医学部に行く人が減るとは考えにくいですが、この記事の理屈だとそうなり得ますね。

新聞記事を批判的に読む能力に乏しい子ども向けの解説記事なんだから、もっと現状をきちんと正しく伝えてくれなくちゃ。

※参考
朝日新聞「司法試験の合格率が低いのに、授業料を払って大学院に行こうとはしないからね。」(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52124652.html
(いちからわかる!)法科大学院入学者が減っているそうね(タダスケの日記)
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20150709/1436442008

2015年7月 8日 (水)

司法試験合格率が上がれば法科大学院志願者が増えるのかをざっくり検証

法科大学院制度を推進する人たちはいまだに「司法試験合格率(合格者数)を向上させれば志願者は増える」という固定観念にとりつかれているように思います。先日の文科省法科大学院特別委員会でも“司法試験合格率が上がらないために新卒者が就職上の不安から法科大学院に進学しない”とか“受験者を増やすには司法試験合格者を増やす以外に切り札はない”という趣旨の発言が聞かれました。

本当にそうなら現時点で既に合格率が高い法科大学院は志願者・受験者が増えているはず。

そこで調べて見ました。

先日決まった法科大学院改革の政府方針では、改革の目標として「累積合格率が概ね7割以上」を掲げています。
schulzeさんの記事にあるこの資料では現時点で累積合格率が7割以上なのは一橋、東京、京都、慶應の4校。これらは既に今後の改革を先取りする形で十分な司法試験合格率を達成しているとみてよいでしょう。

でも、この4校の志願者・受験者の推移をこの資料からみると、今年(H27)は

【一橋】
志願者
386(ピーク年600の約64%)
受験者
307(ピーク年483の約64%)
※定員はピークの85%
【東京】
志願者
621(ピーク年1,215の約51%)
受験者
561(ピーク年1,161の約48%)
※定員はピークの80%
【京都】
志願者
455(ピーク年796の約57%)
受験者
415(ピーク年717の約58%)
※定員はピークの80%
【慶應】
志願者
1,158(ピーク年1,743の約66%)
受験者
1,096(ピーク年1,623の約68%)
※定員はピークの約88%

となっていて「7割以上」を達成していても経年では増やすどころか結構減らしています。

もっとも直近を比べると4校中、一橋と京都は志願者・受験者とも昨年比増です。そこで募集停止が相次ぎ淘汰が進むと合格率が高いところは志願者・受験者を伸ばす一方、低いところは減らしていく傾向がみられるのではないかと考え、来年度も募集する大学院中、累積合格率下位2校の昨年比をみてみました。すると

【桐蔭横浜】=累積18.6%
志願者 (H26)
24→(H27)24
受験者 (H26)
23→(H27)24
【駒澤】=累積
22.2%
志願者 (H26)
59→(H27)61
受験者 (H26)
57→(H27)56

と、ほぼ横ばいでした。これをみると志願者・受験者の動向には累積合格率とは別の要因も結構大きく影響するように思います。

以上ざっくりですがデータ上、司法試験合格率(合格者数)が向上すれば志願者・受験者が増えるという傾向は特にみられませんでした。

やはり法曹志願者の回復は、法曹自体の魅力の回復にかかっていると思います。

2015年7月 7日 (火)

適性試験、見直しでよいけど釈然としない部分も

文科省:適性試験の見直し提案 中教審特別委で(7/6毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20150707k0000m040032000c.html

司法試験受験に条件や制限を設けて受験生に余計な負担を課すのは望ましくないと思うので見直しの方向でよいでしょう。

ただ、この日の委員会を傍聴した感想としては、しっくりこない部分もあります。

その理由の第一は“予備試験受験者に適性試験が課されないのはおかしい”という趣旨の意見が複数の委員から出たことです。
文科省の資料によれば適性試験の趣旨は「法科大学院における履修の前提として要求される判断力、思考力、分析力、表現力等の資質を試すもの」で、あくまでローでの履修が前提です。つまりローで2~3年学修して学力が伸びると期待できる資質の有無や程度を問うものです。ならばローに行かない(行けない)予備試験受験生が受けないのは当たり前でしょう。適性試験を受ける必要がないことをもって「抜け道」扱いされたようで釈然としませんでした。

第二は、この法科大学院特別委員会が過去に、適性試験受験者の下位15%を法科大学院の入学最低基準点に設定するよう求るなど、適性試験の存在意義と有用性をある程度認めてきたことです。適性試験成績と司法試験の合否に一定の関連性があるという検証結果も受け入れてきました。なのに存在意義と有用性を改めて検討すべきなんて言い出し始めたのは、ロー志願者の激減に直面して少しでも入口のハードルを下げたいという思惑からでしょう。過去の委員会の経緯からして、どうにもご都合主義、無節操に思えてしまうのです。

確かにこの記事にある通り、見直しに慎重な意見もありました。が、ワーキンググループができて結論としては見直しが提言されることになろうかと思います。

ただ法科大学院が見放される真の原因は適性試験ではないので、志願者を呼び込めるかという点では焼け石に水でしょう。そういう認識は委員の中にもあるみたいですが、「真の原因」の捉え方は相変わらず司法試験合格者数ないし合格率の低迷にとどまっています。そうである限り、この会議で何を議論しても無駄だろうなあ、とあらためて思いました。

※参考ブログ
「【速報】法学既修者の適性試験免除 法科大学院で文科省検討 2018年度ごろからを想定」(Schulze BLOG)

http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52124114.html
「LSの適性試験が、ますます意味のないものになりそうです。」 (弁護士法人 向原・川上総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ)
http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-12046809617.html

※蛇足
先日の法曹養成制度改革推進会議決定「法曹養成制度改革の更なる推進について」の予備試験の項について推進室委員に質問が相次ぐと予想していましたが、ありませんでした。のみならず法曹人口など他の項目も含めて推進会議決定に関する質問は一切ありませんでした。なんだかすごく不気味でした。水面下で予備試験を陥れる悪だくみが密かに進行してたりしないでしょうか(^^;)

2015年7月 3日 (金)

「法科大学院側の努力が不十分」と考えているローはたった1割

「8法科大学院、定員減を視野 朝日新聞社調査」(7/3付)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11838728.html
「法科大学院、浮かぶ不満 朝日新聞社アンケート」(7/3付)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11838795.html

既に私は法科大学院をまともな教育機関とは認めていませんが、このアンケート結果もほんとうにひどい。むしろ教育機関を自称しながらこんな厚顔無恥な回答がよくできるなあと感心すら覚えます。

この帯グラフによると、回答した57校中「予備試験を導入するべきではなかった」と答えたところが4割強の24校もあります。記事本文によれば予備試験の「廃止」を求めているところが19校もあります。これは事情により法科大学院に行けない人は見捨てても構わない、という意味ですよね。厳しい経済状況に苦しむ学生・受験生より自分の経営を大事に考えているのがよく分かります。また、相変わらず自らが選択されない原因を予備試験のせいにしていて進歩がありません。

また“政府の施策に問題がある”とする回答が8割の46校に上ります。確かに受験教育を事実上禁止しながら司法試験合格率を問題にするのは矛盾した施策とも思えます。ただ、子供じゃあるまいし少しは自らの努力不足もあると考えるのが、まともな大人の思考でしょう。

と思ったら「大学院側の努力が不十分だった」と自省しているところは、1割の6校しかありませんでしたw

「うまく行かないのは他人のせい、自分はちゃんと努力しているのに」って不満ばかり漏らしている人はリアルでもいそうですが、友達にはしたくないタイプですね。私に何のメリットをもたらさないどころか、厄災をもたらしそうですから。

これから法科大学院を目指そうとしている方は、法科大学院が自分のためになる「良き友」となり得るのかどうか、真剣に考えた方がよいと思います。

※参考
「たとえて言うと・・・」(拙稿)
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-8ab3.html

2015年7月 2日 (木)

法曹養成制度改革推進会議決定「法曹養成制度改革の更なる推進について」

当面の法曹養成制度の政府方針「法曹養成制度改革の更なる推進について(案)」が公表されています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hoso_kaikaku/dai3/siryou4.pdf

「(案)」となっていますが、6月30日の法曹養成制度改革推進会議で文言の修正が行われたとは考えられないので、この文案で決定されたと思われます。予備試験に関する部分の文言は初めに顧問会議に諮られた(案)と変わりません。

いったい何を根拠に予備試験合格者について法科大学院教育を受けていないことによる「弊害が生じるおそれがある」と断言したのか。
また、いったい何を根拠に特に予備試験合格者の「法曹としての質」を問題にしたのか、今もってよく分かりません。政府側の説明を聞きたいところです。ちょうど国会の会期が9月下旬まで延長されましたので、議員の方々の追及に期待したいと思います。

一方、予備試験を不倶戴天の敵とみなす法科大学院推進派の方々にとっては

「予備試験が法曹養成制度の理念を阻害することがないよう、必要な制度的措置を講ずることを検討する。」

という文言について、

・必ず措置を講じるという意味なのか?検討するだけで講じずに終わることもあり得るのか?
・いつまでに検討の結論を出すのか?

をはっきりさせたいところでしょう。
次回7月6日(月)に開かれる文科省中教審法科大学院特別委員会では、この点について委員が推進室側に問いただす場面があるかな。ないかな。

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