« マスコミの変化を予感させる西日本新聞社説 | トップページ | 法曹養成に関する岩手日報論説の感想 »

2015年7月17日 (金)

現行法曹養成制度について地方メディアに考えてほしいこと

課題山積の現行法曹養成制度の改善に向けた当面の政府方針が先日、決定されました。
「法曹養成制度改革の更なる推進について」
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai23/siryou4.pdf

法科大学院の募集停止が進み、特に地方在住者が法曹を目指す環境はますます悪化しています。

しかし、上記の政府方針で地方の法曹養成に関して言及されているのは

・累積合格率7割以上を絶対的指標とはせず法科大学院の「地域配置」に留意すること
・課題のある法科大学院への改善命令、閉校命令等の措置に際し、地域の状況やICT(情報通信技術)の活用状況を考慮すること
・奨学金返還支援などの奨学金制度の充実
・地方在住者等に対するICT活用研究と普及促進

という点くらいです。

既に募集停止を決めた地方大学院の募集再開に向けた措置はありませんし、もちろん新設もあり得ません。地域の状況に応じて今ある大学院が閉校命令などを受けずに済む場合が有り得るというだけです。地方において法科大学院の配置や規模が現状より縮小する可能性は大いにあっても拡大することはまずありません。

地方在住者の受験環境を今より良くする可能性のある措置は、奨学制度とICTです。

しかし、奨学制度で特に地方に関して挙げられているのは「地元に就職する学生の奨学金返還支援のための基金の造成及び優先枠(地方創生枠)を設けて無利子奨学金の貸与を行うなど」という程度です。「給付型支援」の充実という記載もありますが、これは特に地方学生を対象にした記述には読めません。そうであれば、地方在住者が法科大学院に通うために転居と下宿を余儀なくされ、それに伴う費用の借金を強いられる現状はほとんど変わりません。

ICTの活用はこれから実証研究を始める段階で、本格的な普及の目途はもっと先の平成30年度からになります。また、ICTが活用されるとしても、政府方針の通り「法曹を志す者の誰もが法科大学院で学ぶことができる」ことを実現するには、自宅もしくは自宅から通える施設でインターネット受講できるシステムにする必要があります。しかし、そのような方法をライブで実施するのは困難でしょう。また、法科大学院推進者が忌み嫌った受験予備校のネット講義と何ら変わらず、もはや「質・量ともに豊かな法曹を養成するプロセス教育」とは言えません。

結局、このたびの新たな政府方針に従っても、地方の受験環境が良くなることはないと思われます。むしろ、住む場所を問わず誰でも挑戦できる予備試験について「合格者数を増やすな」と釘を刺している点は、地方の受験環境をより悪化させているといえます。

そもそも、一部の人しか通うことができない法科大学院の修了を強制する、という制度自体に無理があったのです。「司法制度改革の理念」は、少なくとも地理的には誰もがローに通える大都市圏のみでぎりぎり首の皮一枚つながっているだけ。地方では完全に崩壊し、理念通りの教育が復活する見込みもないと言ってよいと思います。

法曹養成制度において、これだけ地方がないがいしろにされた挙げ句、もし地方メディアがこの期に及んで「『改革の理念』『改革の原点』を貫け」という類の論調を掲げるとしたら、お人好しも甚だしいと私は思います。読者・視聴者たる地元の法曹志願者の「職業選択の自由」を考えていない、と思われても仕方がないでしょう

地方メディアは、先の政府方針の内容が制度の改善にとって不十分というにとどまらず、そもそもの改革の「理念」「原点」は正しかったのか、という点に立ち返って現行制度の問題点を追及してほしいと思います。

私は地方の法曹養成環境を都市圏と対等に近づけるには、以下の2つの方法しかないと思っています。

・現行制度を前提にするならば、予備試験の合格枠を拡大し受験会場を地方に増やすこと

・現行制度を前提にしないならば、司法試験の受験資格制度を廃止すること

以上が長らく地方在住司法試験受験生だった私の考えです。

※当ブログにおける過去の地方の法曹養成に関する記事
「地方の実情を踏まえた法曹養成とは」
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-6a21.html
「ローに通えない地方法曹志願者の夢をつなぐには」
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-ff2e.html

« マスコミの変化を予感させる西日本新聞社説 | トップページ | 法曹養成に関する岩手日報論説の感想 »

マスコミ」カテゴリの記事

司法制度」カテゴリの記事

司法試験」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/576385/61901637

この記事へのトラックバック一覧です: 現行法曹養成制度について地方メディアに考えてほしいこと:

« マスコミの変化を予感させる西日本新聞社説 | トップページ | 法曹養成に関する岩手日報論説の感想 »

フォト
2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ