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2015年7月26日 (日)

政府による予備試験合格者の「法曹としての質」問題視は“捏造”か“デマ”の類

予備試験合格者の「法曹としての質」問題について新たな開示資料に基づいて検証します。

新資料は以下の4点です。

司法修習生考試結果集計表(第66期)

66koushi1

司法修習生考試結果集計表(第67期)

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集合修習成績集計表(第66期)

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集合修習成績集計表(第67期)

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いずれも法曹養成制度改革顧問会議に提出されましたが「非公開資料」と扱われ、公開されていません。しかし、予備試験合格者の本試験合格「後」の「質」に関わる重要な客観的データです。

集合修習の集計表をみると、成績「優」をとった修習生の割合は66期、67期とも全科目で予備試験資格者が高く、「良上」も66期の民事弁護を除いて予備試験資格者の方が上回っています。

考試結果集計表は残念ながら人数と割合の部分が黒塗りで非開示とされました。
ただ、このうち「66期」については黒塗り部分のデータを見た国会議員のコメントがあります。
「待ったなし法曹養成・法曹人口の抜本改革~②司法修習過程で明らかに、予備試験合
格者の優秀さ~」(あらいぐまのつぶやき)

http://ameblo.jp/katsuyuki-kawai/entry-11776079783.html

それによると

考試では民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護の各科目で予備試験出身者の方が法科大学院出身者よりも成績「優」を得た者の割合が高く、

とのことです。

また、顧問会議議事録によれば事務方が

「一部の科目を除きまして、基本、優の割合が予備試験組の人たちの割合の方が高いという状況がお分かりいただけるかと思います。」

と説明しています。

これらの客観的データは、先日の政府決定「法曹養成制度改革の更なる推進について」が、予備試験合格者の「法曹としての質」「弊害が生じるおそれ」を問題視したのとは真逆の評価を指向するものです。

たしかに予備試験合格者はいまだ少数派でサンプル数が少ないことから、これらのデータから何かを断定するのは早計かもしれません。しかし、政府が根拠として挙げた、誰が何を根拠に言ったのかも分からない意見レベルの資料よりははるかに実態を反映しているものでしょう。

ところが、これらのデータが提出された際の議事録をみると、データの内容を検討した形跡がありません。

かつて、行政がダム建設や空港建設といった巨大公共事業を進めるに当たって、需要予測などのデータを都合のよいところだけつまみ喰いして、事業推進の根拠にしたのではないかと問題になりました。今回併せて決定された「法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ)」に対しても「統計結果の引用の仕方により、実際には、存在しない需要について、存在するかのごとき「見せ方」がされている」 (武本夕香子弁護士のブログ)との指摘があります。

しかし、政府決定の予備試験合格者の部分は、都合よくつまみ喰いする統計結果がそもそもないこところから「質」の問題や「弊害のおそれ」を持ち出した上、都合の悪い統計結果は「非公開資料」として検証困難にしている点で、もっと悪質のように思います。

なお唯一、予備組の「質」を問題にする拠り所になる得る客観的事実は、予備試験科目数と法科大学院履修科目数の違いです。しかし、この違いから「質」や「弊害のおそれ」を見いだすことが極めて不合理であることは前回のエントリーで指摘した通りです。
そう考えると、政府決定が予備試験合格者の「法曹の質」と「弊害が生じるおそれ」に言及したのは、捏造かデマに近いと私は思います。

まあ、たとえ政府がどんなに詭弁を弄しても、市場は実務的観点から予備試験合格者について合理的な評価を下すと思います。それゆえ捏造やデマに世間が踊らされる心配はまずありません。
また、有識者会議の過程を経た政策決定が、初めから結論ありきの不合理なものであるケースは、今に始まったことではありません。

それでも国の重要施策の決定がこんなにデタラメなのかとあらためて思うと、この国の行く末が心底恐ろしくなります。

※参考
予備試験合格者の「法曹としての質」を考える上で参考になる他の客観的データとして任官割合があります。
「新任判事補101人中、予備試験合格者は12人」(拙稿)
http://ittyouryoukai.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-5338.html

「【速報】司法修習の起案成績は予備試験組がロー修了組を上回ることが明らかに」(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52127075.html
「デタラメ意見書を「評価」しちゃった日弁連会長声明の残念っぷりを嘆く」(福岡の家電弁護士のブログ)
http://ameblo.jp/mukoyan-harrier-law/entry-12054797146.html

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